ババ抜き

シャッ・・・シャッ・・シャッ・・・
右手にもったカードの束を左手の親指と中指を使い、上から引き抜くように混ぜる。二人を除き誰もいない放課後の図書室にカードをシャッフルする音だけが響く。
「ヒンズーシャッフルね。トランプではかなり馴染み深い混ぜ方じゃないかしら。何故かわかる?」
喋りながらも器用にカードを切る目の前の女性。サラサラと流れるような髪は白髪がメインだが所々黒く染まっていて、そこに小さな牛のような角が2つちょこんと生えている。狐とは違いクリクリと毛先が丸くなったモコモコ尻尾は可愛いらしい。しかし切れ長な目付きにオーバル眼鏡、知性溢れる顔立ちというギャップ。白澤という魔物娘らしい。
そんな人が急にトランプを申し込んできた時は(色っぽさ含め)ドキドキしてしまった。毎日毎日トランプで遊んでいるが、今でも目が合うと思わず紅くなってしまう。
「えと・・・他の混ぜ方より簡単だから?」
「まあ、それも一種の正解よね。」
クスッと笑い白澤さんはカードを一枚ずつ振り分けていく。
「一説にはイカサマをしにくいから、というのがあるのよ。上からカードを取っていくんだから。見た目的にも起こりにくそうでしょ?」
確かに不信な点は見当たらない。公平そうなシャッフルである。それでもイカサマできる人間はいるんだろうが。
「今日はババ抜きをするわけだけれど、スリルが足りないわね・・・」
「賭博は犯罪ですよ?」
この発言は今回が初めてではない。いつだってこの人は何か賭けようとする。
「財物でなければ犯罪ではないのよ?何度も言ってるじゃない♪」
彼女はルンルンと賭ける物を考え始める。前回は何を賭けたんだったか・・・お昼ご飯だったような気がする。
「私が勝てば、そうね・・・君の性癖を見せてもらおうかな?」
「勝負降ります。」
「嘘です、ごめんなさい。じゃあ・・・ちょっとでいいから髪を触ってほしいかな。」
いつもこの程度。魔物娘であれば賭けたり、約束といえば体である。しかし白澤さんはそうしない。まあ、単に自分に気が無いだけだろうが。
「わかりました。じゃあもし俺が勝ったら・・・何故いつも俺に構うのか、教えてもらえますか?」
「あらそんなこと・・・まあいいわ、賭けとしてはあまり平等ではないけれど、時間も惜しいし始めましょうか。そちらからどうぞ。」
「・・・?割と平等な気が・・・」
手持ちから同じカードを間引いていく。・・・最初のジョーカーはこちらが持っている。
正直ババ抜きは二人でやるとすぐ勝負が終わってしまう。シャッフルが甘いと間引くカードも多いし、一枚引けばジョーカーでもない限り必ず二枚減ることになる。それに、この人はいつも自分を見ている。そのせいで目線や動きでバレたりするから運要素がまるで無くなってしまう。
しかもジョーカーは今こちらにある。要は引かなければ良い訳だ。向こうは四枚、自分は五枚。まずは一番左を引いてみる。
「ウフフ・・・ジョーカーを持ってる側はつまんないわね?」
スペードを引き当てて残り四枚。相手は三枚。
「見つめているカードは一体どういう意味かしら・・・」
サッ
別に意識してたわけではなかった。ただ目線を置いていたのがたまたまジョーカーというだけで。
「あら、てっきり安全なものと思っていたのに。やるじゃない」
「どうも、偶然ですよ」
逆転して残り三枚。相手四枚となった。勿論ジョーカーを引いたからには白澤さんはシャッフルする。
続いてこちらのターン。白澤さんの視線はこちらに向いていてカードが読めない。適当に左から引いてみる。
「貴方、左が好きなの?じゃあ次は左にジョーカーを置いてみようかな。」
クスクスと焦る様子もなく笑う。セーフだ。
その後、カードを引かれ残り1:2ここでジョーカーを引かなければ勝ちである。
「こんなことならもっと賭けを増しておけばよかったわ。」
肘を付いてニヤニヤしながらカードを突き出してくる。こんな時に限って、目線がカードに向いている。しかも左に。
先程の言葉を信用すればジョーカーは左。しかしシャッフルする様子もなく左のカードを見ているだけ。なら安全なのかと言われればそういう訳でもないし・・・
勢いで右を引いてみると、どうやらまだ続くようだ・・・
「素直ね♪可愛らしい
#9829;」
目を細めニヤッと笑う。その妖艶な笑みに思わずゾクッとしてしまう。
「そうね・・・引く前に一応言っておくんだけどね」
自分が焦りを感じながらシャッフルしている時、ふと白澤さんは口を挟む。その表情は先程とは違って、憂いを帯びているような気がした。
「白澤は相手の情報を読むことが出来るし知識でねじ伏せることだってできる。でも勝負事にそんな無粋な物は持ち込みたくないの。」
はあ、と気の抜けた返事をしてしまう。この学校の生徒の半分近くは魔物娘であり、そ
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