翌朝、村がちょっとだけ騒がしかった。
ベッドを降りて、1階に下りて、表に出る。
騒がしいのは表の方で、ドアを開けると音が大きくなる。
白い勇者とアマゾネスが喧嘩をしていた。
何人かのアマゾネスは倒れていて怪我をしている。
「はぁああ!」
アマゾネスが倒れた。
「こいつ、強いぞ!」
「怪我人は下げておけ!」
白い勇者は近付いた人たちに攻撃をする。
だから怪我している人たちを中々助けられないでいる。
「あー、起きた?」
ピクシーが肩に座ってきた。
「朝起きたらずっとあの調子。今の所は倒れた人より近付いてくる人を優先してるから誰も死んでないけどね」
それは危ない。
倒れている人を掴んで投げる。
「貴様、魔物を助けるのか!」
白い勇者の剣は剣で受けると折れる。
でもアマゾネスが使っている大剣は丈夫そう。
試しに受けてみると、折れなかった。
「強いぞあの少女」
投げながら剣を受ける。
全然折れない。
「く、片手で私の剣を受けきるか!」
折角だから反撃。
木で殴り飛ばしたみたいに白い勇者が飛んでいく。
「うわー、吹っ飛んだね」
でも白い勇者は地面に着地する。
「あの勇者さん、防御してたの?」
うなずく。
防御してなかったら大変な事になってる。
「傷薬は用意できたか?」
「回復魔法を使える魔物は呼んだか?」
アマゾネスやハーピーたちがあっちこっちに走ったり飛んだり。
「お前は何だ? リザードマンではない。アマゾネスでもないようだが」
白い勇者はまだ元気。
「まぁいい。魔物に味方するというのなら、切り捨てる!」
これなら特訓するにはちょうどいいのかな。
白い勇者の剣はとても丈夫で、全然折れない。
私が使っていた大剣は結局2本折れてしまった。
「それで、どうして一緒にご飯を食べているの?」
お腹が空いたからちょっと休憩。
「不満は山ほどあるが。苦渋の選択だ」
白い勇者はコーヒーと紅茶、どっちが好き?
「水でいい」
白い勇者は黙ったままご飯を食べている。
「私の顔に何かついているか?」
目と鼻と口がついてる。
普通の人間の顔。
ピクシーが私の近くに飛んできた。
「いや、聞きたい事はそう言う事じゃないと思うよ」
首をかしげる。
「なんでじっと顔を見ているのかって事じゃないかなー」
白い勇者を見ている理由?
白い勇者は勇者なのに、あんまり怖くないから。
「どう言う事だ?」
前に見たことがある怖い勇者は、何も言わなかった。
「魔物や魔物に加担する者との会話を拒む。勇者としては正しい選択だと思うが」
でも、その怖い勇者は。
一緒に来ていた騎士の人たちとも話をしていなかった。
助けてって言ってる魔物を切り捨てて。
逃げる人たちを切り捨てて。
最後には私しか残らなかった。
「うわぁ。勇者って言うより、呪われた剣だよね」
ピクシーが嫌そうな顔をしてる。
「異教徒も、任務を放棄するものも切り捨てる。問題のない行いだろう」
だから不思議。
どうして白い勇者は、こんな風に話をしている?
「食事の間に攻撃されては体力の回復が出来ない。言っただろう。苦渋の選択だと」
でも、やっぱり変。
「何が変だというのだ」
洗礼、受けていないの?
「洗礼って、教会で受ける、あれの事だよね?」
少年が不思議そうにしてる。
白い勇者も同じみたい。
「全ての勇者が教会に属しているわけではない。私はあの町の守護の要としての、この地域の防衛を担う者としての立場がある。教会との繋がりは持つが、洗礼は受けた事が無い」
その話を聞いて納得した。
「何に納得したと言うのだ」
旅をしている時に聞いたことがあった。
教会の「特別」な洗礼を受けると、人は変わってしまうって。
「特別な洗礼?」
少年の顔を見てから、一度だけ頷く。
『高位の洗礼』
内容は知らないけど、これを受けた人は魔物が物凄く嫌いになるって聞いた。
白い勇者は受けていないから、きっと大丈夫。
「一体何なのだ。その『高位の洗礼』と言うものは」
知らない。
教会と仲がいい勇者に聞いてみたらいい。
白い勇者はご飯を食べたら、村を出て行った。
理由は知らないけど、村の人に剣を向けなかった。
ちょっとは魔物と仲良くなれたのかな?
私たちは、村の人たちに感謝されたり、また寄ってくれとご飯をもらったりして、村を出た。
私の腰には少年から貰ったショートソード。
手には村で貰った大きな剣。
紐で括って肩から提げようとしたけど、私の背より大きいので手で持つ事にした。
「アマゾネスが使うでっかい剣を貰うって凄いんじゃないの?」
「え、そうなの?」
「いや知らないけど。物知り連中に聞いたらわかるんじゃない?」
今度会ったら聞いてみよう。
北の村まであと2日くらいの距離。
まっすぐ歩けば到着する。
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