「よし、決めた!」
朝起きた少年が勢いよく声を出す。
何に決めたかは知らないけど。
服を着てから降りたほうがいいと思う。
「え? ……なんで僕、服を着てないのー!?」
「それで。どうやら決まったみたいだが」
眼鏡ラージマウスはみんなが集まったのを確認する。
「どの経路を使うのだ?」
少年は地図に指を置く。
「急ぎたいからね。こっちから」
そう言って滑らせた指の軌道をみんなで見守る。
そしてみんな首をかしげる。
「森ルート?」
ラージマウスが疑問の声をもらす。
「森ってさ。一番時間が掛かるって言ってたよね」
金槌リザードマンも不思議そう。
「でもね。海は船が沈められる可能性が高いんでしょ」
眼鏡ラージマウスが頷く。
「そして教団側は足止めで時間が掛かるから。それなら森を行ったほうがいいよ」
「森も足止めを食らうことには変わりないが」
眼鏡ラージマウスが少年を見る。
「大丈夫だよ」
少年が私を見て笑う。
「なるほどねー」
金槌リザードマンもみんなも納得した顔。
「少女っちがいれば、そうそう足止めを食らうことは無いよね」
「魔界豚の群れでも止まらないのだ。盗賊やエルフぐらいなら何とでもなる」
「アマゾネスは、ちょっと大変そうだけどねー」
「それでも大型の魔界豚1頭相手に数名、あるいは十数名で狩るレベルだろう。問題はない」
リザードマン二人が話し中。
アマゾネスはとっても力持ちで、戦う事が好きみたい。
リザードマンやミノタウルスみたいに戦う事が好きな魔物からはとっても好印象。
戦って認められたらおいしいご飯を食べさせてくれるみたい。
「戦いが生きがいの者たちだ。手強いぞ」
そんなに強い?
「ああ。族長クラスともなれば剣圧で木々をなぎ倒すとさえ言われている」
ドラゴンよりも強い?
「そういう者もいるだろうが」
本気、出しても大丈夫?
みんな黙ってしまった。
誰も私と目をあわせようとしない。
首をかしげる。
なにはともあれ、行く道が決まった。
みんなでラミアのお姉さんにお礼を言って、森側の道を歩く。
ところで、なんでラミアがお宿をやってるのかな。
「無料で宿を貸していれば沢山の人がやってくる。その客の中から好みの男を見つける。言うなれば、あれがラミアの巣であり、獲物を誘う罠そのものだ」
落とし穴みたい。
森側の街道は道幅が狭くて、小石が沢山落ちている。
馬が走ったら足を痛めるので馬は走っていない。
「あれ?」
「ふむ」
でも馬が走る音が聞こえてくる。
二人のラージマウスも耳を動かして方向を探ってる。
「お前たち、何者だ」
現れたのは弓を持った魔物。
エルフと違って、体の半分が馬。
「ケンタウロスか」
「その通りだ。眼鏡をかけた奇妙なネズミよ」
「私たちはただの旅人だよ」
ラージマウスがケンタウロスを見上げる。
馬に乗っているくらいの高さなので、ラージマウスも私もケンタウロスを見上げる。
「魔物たちが揃いも揃って。その人間を囲ってどこへ行くつもりだ」
「ドラゴンが現れたという北の村まで行くんです」
「ドラゴン退治か。魔物と共にか?」
少年を見下ろすケンタウロス。
少年は首を横に振る。
「ううん。みんなは僕と一緒に旅をしているだけだよ。それに、僕はドラゴンを退治しに行くんじゃないんだ」
「ほぉ?」
ケンタウロスが目を丸くする。
「ならば何故ドラゴンの現れる村へ行くのだ?」
少年が理由を話すと、ケンタウロスは目を大きく開く。
「ドラゴンとの対話が望みなのか」
「信じられないでしょ」
「確かに。魔王の代変わりにより変化したものの、ドラゴンは以前として人間との敵対関係を維持している。そのドラゴン相手に、対話での解決を求めるとは」
驚いているけど馬鹿にしていない。
ケンタウロスはじっと少年を見ている。
「ドラゴンの恐ろしさを知らぬわけでも無かろう。その上で対話を望む。英雄としての資質を感じられるぞ」
「え、えいゆう? それは言い過ぎだよ」
少年はびっくりしている。
「近年、魔物を狩る愚か者たちが増えていると聞いて警戒していたが」
もったいぶってからケンタウロスが私たちを見る。
「君たちならば問題ない。よき旅を」
胸に手を当てて、馬の前足を高く上げてから、ゆっくりと足を下ろす。
眼鏡ラージマウスの話だと、ケンタウロス風の敬礼みたい。
「よーし、いくぞぉ!」
「おぉ!」
少年が気合を入れて、みんなも応じる。
そして街道をみんなで走る。
そして落ちた。
地面が崩れてみんな地面の下へ落ちた。
幸い、穴はそんなに深くなかった。
「あいたたた。えっと?」
でもみんなとはぐれたみたい。
落ちるとき、地面にいくつか穴が開いてた。
そのどれかに入って行ったみたい。
「あれ、ここは?」
周りには私と少年。
「どいてー! つぶれ
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