空がとても近い。
手を伸ばせば雲に手が届きそう。
空を見ながら寝転がると太陽がまぶしい。
追ってきた人たちは町の警備をする人たちだったので、町から離れるとついてこなくなった。
でもリナリアたちに追いつくためにも急いだ。
それにのんびりしていると冒険者に追いかけられる。
でもたまにはのんびりしてもいい。
今日はとてもいい天気。
空には小さな雲が一つだけ。
誰かに追われるなんて考えないで、ぼーっとする。
「あのさー」
ラージマウスが震えながら近付いてきた。
「何でそんな所で寝てるの」
いい天気だから。
「そりゃあ。いい天気なんだろうけどさ」
「雪の上で寝転がって、寒くないの?」
首をかしげる。
ここは高い山の上。
ふかふかの雪が積もっていて、柔らかくて気持ちいい。
「えー」
ラージマウスが変な顔をした。
「あ、戻って来たんだ」
少年は毛皮に包まりながら顔だけを出してる。
「何していたの?」
いい天気だから昼寝。
「うわぁ」
少年も変な顔をする。
「お前は何でもありなのか」
「とてもじゃないけど。真似できないよ」
リザードマン二人はリザードマンに見えないほど毛皮でもこもこしてる。
眼鏡ラージマウスは少しお疲れ。
「防寒具を作る手伝いをして欲しかったのだがな」
鹿狩りはがんばった。
「そうだよねー。一人で全部狩っちゃったもん」
ハーピーが探して私が狩る。
でも足場の少ない山の上はハーピーの方が便利。
「いや、だったらあんたもとん」
瓶詰め瓶詰め。
「いたい、いたいってー! 入らないってー!」
ちなみにピクシーはリザードマンと一緒に包まってる。
「きしし。まさか羽が凍るなんて」
顔だけ出したピクシーはなんだかいつもどおり。
「凍ってはいないが、似たようなものだ」
羽ばたいていると空気中の小さな氷の粒が張り付いてぺったり氷が張り付くみたい。
魔物だからある程度は大丈夫だけど、色々と大変だって。
「さぁ、いくぞ。天気のいい間に行かねばな」
眼鏡ラージマウスが立ち上がる。
少年もラージマウスも立ち上がって、ハーピーもぱたぱた羽を動かす。
「ほら、いくよー」
「わかってはいるのだが」
ラージマウスが引っ張るけど、リザードマンは丸まったまま。
「やれやれ。まだ動けないのか」
「あはは。こう寒いとねー」
眼鏡ラージマウスが金槌リザードマンに背を向ける。
「すまんな」
「いいっていいって」
「山からたっぷりお礼をしないとねー」
「是非チーズで頼む」
リザードマン二人はラージマウスがおんぶで運ぶ。
「こっちは大丈夫そうだよー」
ハーピーが旋回して戻ってくる。
そしてまた飛んでいく。
雪崩が起き難そうな場所や歩きやすい場所をハーピーが空から確認して、私たちはついていく。
「ハーピーが居て良かったね」
「あれで発情期がなけりゃねー」
少年は喜ぶけど、ラージマウスは喜んでるのかどうかよくわからない。
「それにしても。耳が凍りそうだよ」
「魔力を耳に集中して保護すれば問題ない」
「まぁ、お陰で発情対策も出来ていいんだけどねー」
二人のラージマウスは魔力の扱いが得意。
魔物が持つ便利な魔力効果で耳を守ってる。
「でも、お腹が空くんだよねー」
「同感だ。精不足で倒れては意味が無い」
魔力は消費しないといけないけど、消費しすぎてもいけない。
だから食べ物を沢山食べないといけない。
「ごめーん。またちょっと来てー」
ハーピーに呼ばれて雪の上を走る。
「あのへん。あのへんを思いっきりやっちゃって!」
ハーピーが羽先で雪の積もった斜面を指す。
私は周囲の雪を集めて、丸める。
集めて、丸める。
丸める、丸める。
私の顔よりも大きく丸める。
ころころ転がして丸める。
一抱えしても手が届かなくなるまで丸める。
そして雪の斜面に投げる。
雪の球が白い斜面に当たると、川に石を投げたみたいに雪が弾ける。
弾けた白い飛沫が空に散ってきらきらと光る。
「はい。そろそろ飛ばないとね」
ハーピーが私の腕を足で掴んで上へ飛ぶ。
白い斜面は水みたいに溢れて流れてくる。
低い音を立ててどんどん流れてくる。
「雪崩もだんだん上手くなってきたよねー」
コツはわかってきた。
「この調子なら近道も上手くいきそう」
うなずく。
リザードマン二人が全力で嫌がるのを掴んで運んでまで山にやってきた理由。
ドラゴンが現れる町には、山を越えると早く着く。
私たちは魔物が多いし、ハーピーもいるから楽に山を越えることが出来る。
眼鏡ラージマウスが提案して、リザードマン二人は大反対した。
「ああ。いい天気だな」
「そうだねー」
雪の上を歩いているとだんだん二人のリザードマンが静かになる。
気づくと寝てる。
「寒さが辛いなら、そのまま冬眠したほうが楽だぞ」
でもリザードマン二
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