大暴れと大食いと大酒飲み

祭りの場所に行くと、他の人はもう集まっていた。
ワーウルフ、リザードマン、アマゾネス、ミノタウルス。
何度も見かけたオーガ二人の姿もある。
「なんだなんだ? あんたらも祭りに参加するのかい?」
オーガの一人が笑ってる。

「あんたはともかく、他の連中じゃ弱すぎだろう」
「何だと?」
オーガの言葉にリザードマンが反応。
他の魔物の反応は。

「別に。お祭り気分を味わうだけだし」
「祭りはお酒を飲んで楽しむ場所でしょー、やっぱり」
ラージマウスと金槌リザードマンはチーズとお酒を用意して座る。

「だったら私も観戦だよ」
「私はそもそも荒事には向いていないのだよ」
ハーピーと眼鏡ラージマウスはそもそもやる気なし。

「いよーし、がんばるぞー」
「……ええ!?」
ピクシーはやる気みたい。

先に集まっていた魔物たちも思い思いに準備をしてる。
斧の点検をしたり、体の筋を伸ばしたり。
仲間内で模擬戦をしている人たちもいる。

「やる来かい?」
「今ならまだ撤回すれば私も引き下がるが?」
オーガとリザードマンはケンカしそう。

お祭りの前にケンカするなら。
喧嘩両成敗する。
「ん?」
「具体的には?」

思いっきり遠くに投げる。
「……今まで投げていたのは?」
ポイ捨て。
「……」
オーガとリザードマンのケンカは無くなったみたい。

「お。そろそろ始まるみたいだよ」
「そのようだな」
二人のラージマウスが耳を動かす。
「あー、来た来た」
目がいいハーピーも気づいたみたい。

土煙を上げてお祭りの主役がやってきた。
地鳴りと土煙で他の魔物たちも気合を入れ始める。
「さぁって」
「やるかいね」
オーガ二人も拳を打ち鳴らしてる。

「えっと。何が始まるの?」
少年はちょっと怯えてる。
「そう言えば少年には誰が話したのだ?」
リザードマンが私や座り込んだ魔物たちを見る。

皆首を横に振る。
「私も教えてないよー」
ピクシーが腕まくりをして針を装備してる。
一体それでどこを刺すつもりなんだろう。

「なに。見ればすぐ分かる」
リザードマン、説明放棄。
「いや。のんびり話をしている余裕は無いだろう」

土煙はもうすぐそこまで来ている。
そして地鳴りの主、沢山の大きな影がやってくる。
「な、なにあれ?」
豚さん。

「魔界豚と言う。あれを倒すのは骨が折れるが、肉は美味いと言う」
沢山狩って沢山食べる。
「やってやるよー!」
ピクシーは無茶をしないように。
「えー?」

先頭の魔物たちが魔界豚に飛び掛る。
小さい豚でも簡単に攻撃は通らない。
だって、大きいから。

小さな豚でも馬車くらい。
大きな豚だと2階建ての家くらい。
「大物が来たぞ!」

魔界豚は母様がよく狩って来てくれた。
大きな豚はドラゴンじゃないと狩れないって言っていた。
例えば、こんな豚なんかどうかな。

手をぎゅっと握って拳を作る。
魔物たちを吹っ飛ばして大きな豚がやってきた。
少し前に壊した家ぐらいの豚が馬車よりも早く走ってくる。

拳を堅く握る。
地面を踏む。
じっと相手を見る。

後は、思いっきり大きな鼻を殴りつけるだけ。

首をかしげる。
豚が私の上を飛んで行った。
後ろを振り向くと、豚が落ちて地面が揺れた。
失敗した?

まだまだ豚は沢山やってくる。
リザードマンもピクシーも魔物たちに混ざって狩り始めている。
私も久しぶりに暴れようと地面を蹴る。

小さい豚を張り飛ばす。
大きめの豚を掴んで他の豚に叩きつける。
人の群れを跳び越えて大きめの豚を蹴り飛ばす。

何時ものお祭りでは豚は20くらい来るって聞いたけど、今日はもっと多い気がする。
地鳴りはやまないし、土煙は途切れない。
うれしい。
まだまだ暴れられる。

獣と違う咆哮が空から聞こえてきた。
赤い帽子のワイバーンが空から急降下して大き目の豚を踏みつける。
目が合う。
そして私と赤い帽子のワイバーンは、近くにいた豚を蹴り飛ばした。

「今日のお祭りは一際すごかったねぇ」
「そうだねぇ」
オーガ二人はなんだかお疲れの様子。
「いや、だってねぇ」
オーガが顎で示した先を見る。

「あははは! いやー、久しぶりに暴れると気分がいいねー!」
顔を真っ赤にしてお酒を飲んでいる赤い帽子のワイバーン。
その後ろには大きなホネが沢山。
「ワイバーンってやっぱり食べるねぇ」
いっぱい狩ってたから。

「いや。あんたこそ滅茶苦茶じゃないか」
首をかしげる。
またオーガが顎で示したので、私の後ろを見る。

「あー、食べてるよー」
「私一人で狩れなかったにせよ。腕前は確実に上がっているな」
「いいじゃないか。初の魔界豚だったんでしょ? 腰が引けてないだけ上出来じゃない」
「お代わりだ」
4人は焼いたり煮たりした魔界豚を食べてる。

「私だって頑張った
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