赤錆びた外套

○種族:フェアリー
○特徴:虫の羽を持つ妖精の一種。
    人に似た姿を持つが、その体格は子供よりも小さい。
    集団行動をすることもあるが、危険性は低い。















 ある晴れた昼下がり。
 晴天の空の下、振り下ろされる大斧。
 剣よりもまさかりよりも凶悪で、相手の防御ごと叩き割る威力を持つ。
 剣で受けても駄目。兜を装着していても駄目。
 分厚い鉄の塊。大質量と丈夫さを重視した厚みで岩さえも裂く。
「当たったら死ぬよなぁ。毎回思うけど。」
 髪をかすらせ、地面にめり込んだ斧を見下ろす。
 これにかかれば人間なんて、薪割り同然に真っ二つだな。
「避けるのは上手いが、それだけじゃ勝てないぞ?」
「わーってるって。」
 だらりと下げた切っ先。下段構え、というにはちょいと雑な構え方。
 手にある武器はナイフではなく、標準的な形状のショートソード。
 これを片手で振り回せたら良いんだけど、持つだけで精一杯。
「ふっ!」
 両手で持ち直し、下ろしたままの切っ先を振り上げる。
 首を狙っての一撃は読まれていて、既に相手は一歩下がっていた。
 一歩分、いや半歩だけ下がっても相手の攻撃は当たらなくなる。
 基本的に振り回す攻撃はそうやって対処できる。
「この!」
 なら突き刺す攻撃はどうか。
 これも読まれている。半歩横に動かれ、何も無い空間を切っ先が通過する。
 振り払う。斧で受け止められる。
 突く、払う、振り下ろす。
 ことごとく防がれる。
 そもそも斧という武器は防御には向いていない。
 だから防がれるってのはつまり、それだけ俺の剣術がダメダメってことだ。
「さーて。そろそろ飯の時間だな。」
「おっけー。じゃ、いくぞ?」

 大きく息を吸って、大きく吐く。
 短く息を吸って、短く吐く。
 2呼吸の間に意識を切り替える。
 真昼間の世界に、ただ自分の中にだけ夜を呼び込む。
 相手が気を引き締めたのを感じながら、すぐさま興味を失う。
 互いの距離は剣の距離ではなく、槍の距離。
 剣の距離に入るには、斧の距離に入るという事。
 大きく足を開き、肩口に斧背を乗せるような小さな構え。
 生半可な攻撃は斧の重量を利用した牽制で弾かれる。
 短く持っていても人の骨を断つぐらいは可能。
 むしろ斧頭で突きこまれる方が危ない。骨が折れる。
 以上、状況把握。
 いつもするように音を立てないよう静かに歩く。
 目の前に居る相手に、既に見つかっているのに、見つからないようにして歩く。
 チャンスは一度。
 ソレを逃さないように心を沈めて、機を待つ。
「はぁ!」
 動いた。熊の様に大きな体が、馬鹿みたいに力を込めて踏み込み、最低限の動きで斧を突き出してきた。
 右に動くも左に動くも間に合わず、防いでも押し負ける。
 だから大きく後ろに跳びながら剣の腹で受け止める。
 殺しきれない衝撃が肩に響く。
「ぉおおお!!」
 大きく空いた距離を、また相手の方から詰めてくる。
 長く下段に構えた斧を振り上げる。
 大きく跳び下がる。
 振り上げた斧を、振り下ろす。
 横跳びに回避。
 掠めた髪が鈍い刃に引っかかって、引きつるような痛みが走る。
 痛みに顔をしかめた、その隙を狙って横薙ぎに斧が襲い掛かってくる。
 剣で受けながら跳んで衝撃を殺すも、やはり殺しきれない衝撃が体に響く。
 加減されている。
 元々戦闘が得意じゃない俺がまだ無事なのは、加減されているから。
 相手には俺を殺す気は愚か、怪我をさせるつもりさえ無い。
 舐められている訳じゃない。
 単に実力の差が開きすぎているだけ。

 だから、隙が生まれる。
 太陽の光が目に入るその瞬間、人間は誰しも目を細める。
「く、日差しか。」
 当たりだ、と心の内で返事をする。
 目が一瞬だけ眩んだ隙に、死角へと入り込む。
 そして接近。
「させるかぁ!」
 残念だが、今度は俺の方が読んでいる。
 牽制に突き出した切っ先は勢い良く弾かれるが、予想済みの行動なので手に響く衝撃は少ない。
 引いた剣を戻す動きのまま首を狙う。
 払う切っ先を、首を反らしながら回避する相手になお接近し、背後に回る。
 相手の背後を取っても足を止めず、振り向こうとする相手の背後へと回る。
 半周回ってまた半周、つまり俺にしてみれば1周回る。
「な、いない!?」
 俺はまだ相手の背中を見ている。
 背中と言うのは無防備の証。
 切っ先構えて突き刺すもよし、頭目掛けて振り下ろすもよし。
「舐めるなぁ!」
 ただし、向こうからやってくる場合は除く。


「勝てねぇなー。」
「はっはっは。人の背後を盗った位で安心するようじゃ、まだまだだなぁ。」
「背後取った相手に、背中でボディプレスなんて誰が想像つくんだよ。」
 釣った魚と森の
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