大会前

「準備は出来たかい?」
ラージマウスが旗を持っている。
旗には顔が二つ。

「うん! 行ってくるよ」
少年が元気よく答える。
「奢らず焦らず。自分の力を出し切って来い」
リザードマンも顔が描いている旗を持っている。

でも、思うこと。
「ん、なに?」
二人とも、絵が下手。
「よ、余計なお世話だ!」

「がんばっといでー」
「健闘を祈る」
金槌リザードマンと眼鏡ラージマウスは裏方に徹するみたいで。
2階と台所の方からそれぞれ声が聞こえた。

大会が行われる闘技場の受付で紙を受け取る。
「僕は10番だって」
私の貰った紙を見せる。
「君は7番か。ちょっと遠いけど、予選でかち合わなくて良かった」
うなずく。

闘技大会の予選。
番号と地図を受け取って、地図に描いてある番号の場所で予選を行う。
強い人は予選なし。

「おや、お嬢ちゃんも参加するのかい」
うなずく。
「それじゃ、みんなが集まっている所に集まっとくれ」

一軒家を更地にしたような広場に数人集まっている。
「大会の前日に予選ってのは、気合が入らねぇな」
「ぼやくな。大会で実力を示せば、来年からは予選免除だ」

みんな男の人。
武器は槍や剣など色々あるけど、大会用に模擬戦用の物が渡されている。
私も木の剣。
気をつけないと一回で折れちゃう。

「予選1戦目、開始!」
予選が始まった。
私は見学。
「勝負あり!」

私の番が来た。
相手は槍を持った人。
「子供相手でも手加減はしませんよ」
うなずく。
「開始!」

「勝負あり!」
リザードマンに比べると遅かった。
「く。お見事です」

「勝負あり!」
また勝った。
「嘘だろ。こんな小さな子供にやられるほど、俺は弱かったのか?」

「勝負あり!」
予選はこれで終わり?
「いや。大会の予選枠は2つだ。各場所で最も勝ち点の多い物が集まり、予選トーナメントを行う」
あと何回勝てばいい?
「2回勝てば確定だな」

私は予選トーナメント入りをした。
大会が行われる闘技場の受付にまたやってきた。
「どんなズルをした」
受付の人が変な顔をしている。

「子供が予選トーナメント入りできるはずが無いだろう。幾ら積んだ?」
勝ち点6。
「そこを動くなよ。いま確認してくる」

戻ってきたら何だか落ち込んでいた。
「……本当に勝ったのか」
次はなにをする?
「昼まで休憩だ。他の場所はまだ終わっていないからな」

「おかえりー。どうだった?」
勝ち点6。
「要は勝って来たと言う事か」
うなずく。

「少年はまだかなー」
昼までには終わるって聞いた。
「試合が長引いているのだな」

2階に上がると眼鏡ラージマウスが寝ていた。
干している布団に覆いかぶさるようにして寝ている。
「すー。すー」
尻尾がちょっと揺れてる。

横から見ると、眼鏡はかけてなかった。
じーっと見る。
「ん。んー」
夢の中で走っているのかな。
時々体が動く。

眼鏡ラージマウスは眼鏡が無くても頭が良さそうに見える。
でもラージマウスだから、夢の中で誰か男の人を追いかけているのかもしれない。
もしかしたら。
魔法使いの所にいた頃の夢を見ているのかもしれない。

そろそろご飯を食べに降りようと思って。
一言だけ残して1階へ戻る。
その途中で後ろから押し倒された。

「人が夢を見ている時に横槍を入れるとは。悪い子だね、君は」
手足をばたつかせる。
「夢の中の彼は既に眼鏡を外しているのに、『眼鏡を探してくれてありがとう』はないだろう」
顔は見えないけど眼鏡ラージマウスは楽しそう。

「久しぶりに魔物らしく暴れるとしよう」
首の後ろを舐められた。
手足をばたつかせる。
でも眼鏡ラージマウスは舐めるのを止めない。

「甘い。ずっと舐めていたくなるほどだ」
耳まで舐められた。
くすぐったい。

「ん。ちゅ。ちゅる」
舐めたり吸ったり、眼鏡ラージマウスは忙しい。
でも私の上からどかない。

「はぁ。十分楽しんだ。後は、この溜まりきった魔力。その捌け口になってもらうぞ」
眼鏡ラージマウスが首を噛んだ。
噛まれた場所から魔力が注がれていく。

「ふぅ。眼鏡を外していると、つい我を忘れてしまう」
眼鏡ラージマウスは満足したみたい。
だったら早く降りてほしい。
「そうだな。では降りようか」
眼鏡をかけた眼鏡ラージマウスは、やっぱり楽しそうに笑っていた。

ご飯を食べても少年は戻ってこなかった。
4人と1ピクシーが心配する中、私は闘技場の受付に行く。

「少年? ああ、お前と一緒に居たがきなら来ていないぞ」
首をかしげる。
「そんな事より、予選のトーナメントはもう始まっている。早く行け」

少年はどこだろう。
探しても見つからない。
予選のトーナメントが始まっても少年は来ない。

「君も大会に出るんだね」
予選トー
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