「おはよう」
うなずく。
「昨日は眠れた?」
それなりに。
私は少年の、少年は私の肩を見る。
「昨日はお楽しみだったのー?」
少年の肩に乗っているピクシーが足を動かす。
「うっとるするほど熟睡だったわよ。ああ、でも。放置プレイの妄想もたまにはイイわね♪」
私の肩にもたれ掛かっているゴーストが体をくねらせる。
少年が肩をすくめる。
「おや、元気がないねー少年」
「きっと妄想のし過ぎで、夜更かし。いえ、きっと小さな妖精との交わりを妄想して自分を……あぁ♪」
ピクシーを掴む。
眼鏡ラージマウス特製の布でゴーストをくくる。
「おや?」
「あら?」
二人を瓶詰めにして、振る。
「きゃ〜〜!」
「あらら〜!」
「さすがにやりすぎだよ」
少年の止める手の力も弱い。
なぜなら、ここ数日。
この二人は全く懲りていないから。
「まーた失敗してるの?」
「黙れ。集中が途切れる」
今日もリザードマンが料理をしている。
卵を焼こうとしているけど、なぜか焦げるみたい。
でも、何の卵を焼いているのかな。
ふしぎ不思議。
「ピクシーはリザードマンに任せるとして」
眼鏡ラージマウスは最近、ずっと宿に泊まっている。
「そろそろ本気で対策を練らないといけないよね」
ラージマウスがチーズを齧って、眼鏡ラージマウスに睨まれる。
「うん。最近、あまり特訓の時間が無いし」
少年が深刻そうにうなずく。
「早い所マスターしないとねー」
金槌リザードマンも最近、ずっと宿に泊まっている。
「なにせ、大会まであと10日」
「だが我々は」
「ベッドメイキングぐらいしか出来ないからねー」
3人揃って頭を抱えている。
「うんうん」
少年が頷いて。
「……えぇええええええ!?」
頭を抱えた。
実はゴーストが出てきた頃。
宿屋のおばさんは他の宿屋さんの手伝いをすることになった。
他の宿屋さんのおじさんが倒れちゃって。
おばさんは大会が終わるまでそっちに掛かりきりになった。
「まさか、まるまる一つ使えるようになるとは思わなかったよ」
金槌リザードマンがハンマーを回している。
でも、剣を鍛える場所は無いと思う。
「手入れぐらいは出来るよ。どこでもね」
「結局、町に住む事になった。ならば全力で手伝いをするだけだ」
焦げた卵料理を持ってきたリザードマンが胸を張る。
胸はあまり無い。
「少女よ。邪気の無い言葉は、時に魔物さえ殺すぞ」
リザードマンはがっくりとしている。
「正直な所、我々も小屋での生活よりよほど快適な場所を使えるようになったのだ。ありがたい話だ」
「その分、全力で手伝えばね」
眼鏡ラージマウスと金槌リザードマンも同居決定。
「問題は、隠すつもりの無い馬鹿二人のことだよね」
ピクシーはどこでも飛び回る。
ゴーストもどこでも飛び回る。
そして自重しない。
「ピクシーは妖精と言って誤魔化せば何とかなるけど」
「脳内妄想娘はどうにかしないといけない」
ラージマウス二人が悩んでいる。
ところで。
「ん?」
ゴーストはアンデッド。
「そうだが」
あの屋敷の人もアンデッド。
「なるほど」
「屋敷に放り込む。ありだねー」
持ってきた。
「客としてきても構わないと言ったのは確かだが。手土産がゴーストとは思わなかったな」
「なにここ。楽しいとこ? あ、主従の禁断の……♪」
「切っていいか?」
タンスに仕舞いこむ。
「タンス?」
タンスの引き出しを開ける。
「残念でしたー。ミミック」
捕まえた。
「でしたー!?」
「ミミックが住み着いていたのか」
「なにこの子。リボンで包装されてる。自縛好き? えっちねぇ♪」
「ちょっと、つぼ子と同居するだけでいっぱいいっぱいなのに、さらに入れる気?」
使わないタンスは叩き割る。
「うっうっ。ひどいよぉ」
「え、なになに? タンスの中にこれ以上いれちゃらめぇええ♪って?」
ゴーストをタンスに入れて引き出しを閉める。
ご協力感謝。
「いや。役に立てて光栄だ」
デュラハンは相変わらず黒い外套を羽織っている。
ぼろぼろ。
「屋敷はともかく、私の衣類は長い年月に耐えることが出来ないからだ。わざわざ買う気もないが」
次に来た時に持ってくる。
「そうか。世話をかける」
首を横に振る。
巣を守るのは大事。
「ふ。私も元人間であったのだが。不思議な物だ」
首をかしげる。
「お前、いや。貴殿の様な魔物がいようとは思わなかった」
首をかしげる。
「人に化けているのだろう」
……うなずく。
「済まないな。これでもデュラハンは上位に属する魔物だ。実の所、最初見た時から違和感があった。余りにも人間にしか見えず、混乱していたのだがな」
デュラハンは私を見ている。
私もデュラハンを見る。
「ドラゴン。生前にこの目で見る事は適わなかったが。よもや魔物になってか
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