外のクエストを受けて、クエストをしながら特訓をする。
なぜかラージマウスも一緒に参加して、薬草を集めたり薪を集めたり。
物を集める類のクエストを受けて外に出て、特訓開始。
「走るぞ!」
「おー!」
「今日こそは逃げ切ってみせる!」
一人だけ目的が違うみたい。
「でも不思議だよね。薬草って採っても摂ってもなくならないんだもん」
ふしぎ不思議。
「あんたらねぇ。この野草は物凄く苦いのよ」
「食べた事あるんだ」
チャレンジ精神旺盛。
「そうだけど、そうじゃなくって」
このよく取れる薬草は、殺菌作用が高い。
だから傷口に塗ると化膿しなくなる。
放っておいても治る怪我が多いけど、放っておくと化膿する場合があるので。
苦い薬草の汁を塗りこんだ包帯で傷口を覆うのが応急手当の基本みたい。
「すごい。ものしりだねー」
「いや、冒険する上じゃ常識でしょ」
首をかしげる。
「どうかした?」
元冒険者?
「そうだよ。言ってなかったっけ?」
ラージマウスは元冒険者。
盗賊をしながら簡単な探索魔法を使っていたみたい。
今でも探索魔法を使えるから、溜まった魔力を魔法に費やしているんだとか。
それでもハーピーに不意打ちされるのは、お疲れ様としか言いようがない。
所詮は捕食者と被食者。
ラージマウスの協力もあって、あっという間に薬草は集まった。
薪も木を割るのが私、残りを手斧で分担して割る。
薪を割るなら斧を使うのが当たり前。
あまり力を込めなくても、落ちるに任せて下ろせば割れる。
「えいっ、やぁっ」
少年が斧を振り下ろすと、薪が割れる。
剣で割るよりも楽みたい。
私は手で千切る方が早いけど、道具に馴れるためだから仕方ない。
「私も参加してみようか? 闘技大会」
それは無茶。
例年、魔物の参加を拒み続けているあの町では無理。
「そう? 結構簡単だと思うけど」
「そうなの?」
首をかしげる。
「あの町の闘技大会ってさ、年に1回って言ってるけど。それくらいどこでもやってるし」
「そうなんだ」
「年に2回出来ないのは町の予算の問題もあるからなんだよね」
なるほど。
「気の回しすぎだよ。もっと簡単でいいんだって」
チーズ欲しさに街中を走り回っているんじゃなかったんだ。
「い、いいじゃない! チーズが好きになっただけなんだから!」
はい、チーズ。
「いただきまーす、ってこらぁ!」
「えい、やぁ、とぉ!」
「おそいおそいっ。剣に振り回されてるよ」
少年はショートソードを振ってラージマウスを追っている。
でも全くあたる気がしない。
少年が弱いのもあるけど。
ラージマウスはきっと魔法を使っている。
時々、ラージマウスの姿を見失う。
「あれは魔法だな。まったく、剣の道に有るまじき逃げ道だ」
勝つことに貪欲である事は悪い?
「悪くはないが。私の趣味ではない」
潔癖症。
「そういうな。では、ゆくぞ!」
ショートソードで受けながら、タイミングを計る。
折れないように慎重に、剣の重みだけを当てるように振る。
「弱い! まだ弱いぞ!」
蹴る。
「ぐはぁっ」
あ、やっちゃった。
仕方が無いのでリザードマンを木陰に寝かせて山に登る。
たまには一人でのんびりもいい。
崖に指をかけて駆け上がる。
崖を越えて、山を越える。
高い高い峰の上。
私は広がる景色を眺める。
母様と父様と暮らしていた日々を思い浮かべる。
母様の背に乗って飛び回った日々。
雲は上に見上げるものじゃなくて、下に見下ろす物だった。
頬を叩きつける強い風。
いま感じているよりももっと強い風が、私の記憶の中に蘇る。
鳥の声が聞こえた。
見ると、大きく翼を広げた鳥が私の上を飛んでいる。
何かを伝えるように円を描いて飛んでいる。
鳥が案内をするようにどこかへと飛ぶ。
私はそれを追う。
崖は悪路といえど私には問題がない。
地面を削り、草をかき分け、鳥を追う。
それでも追いつけない。
空を飛ぶ鳥にとって地上の悪路は何もない。
私は背中に手を伸ばす。
背中に翼はない。
仕方なく走って鳥を追った。
でも、鳥を見失った。
私は少年たちの所へ戻った。
そして少年を引き摺って町へ向かう。
少年を性的に襲いかかっていた二人の魔物(ばか)は、今日は野宿みたい。
二人並んで寝かせてあげた。
「ぼく、ちょっとずつ強くなっているのかな」
うなずく。
「そっかぁ。僕もちょっとは戦えるのかな」
首をかしげる。
「え、なんで? 僕もちょっとは強くなったんだよね」
首をかしげる。
いったい、何と戦うつもり?
「え、それは、えっと。悪いやつ!」
欠伸をして少年を抱きかかえると、ベッドに横たわる。
「あー、もう。僕はまくらじゃないよー」
少年は慣れてきたみたいで、もう抵抗しない。
私は少年を抱きしめながら思う。
あの空はも
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