なにこれ、べたべたするー

○種族:マーメイド(人魚)
○特徴:人間の上半身と魚の下半身を持つ魔物。
    魔力を持つ歌で人を呼び寄せ、海に沈める。
    この魔物の血は強い毒性があり多くの場合は命に関わる。
    誤って飲んでしまった場合は教会で洗礼を受けなければならない。








「マーメイドの血?」
 俺たちは海が近い村に向かう途中にある酒場で食事を取っている。
 酒場は基本的に酒を飲む場所だが、他にもギルドの依頼や情報交換の場所として使われるので、簡単な宿も兼任している。
 宿屋は村には少ないけど、酒場はどこに行ってもある。
 街道沿いにぽつんと建っていたのが酒場だった、なんてこともある。
「ああ。俺も聞いたことがある。理由は知らないがマーメイドの血を探している連中がいるってな。」
 酒場で飯を食うだけでこの辺一帯のことを知る事が出来る。
 そういう意味では冒険者や傭兵は金が無くても酒場に来ることがある。
 教会の連中は滅多に来ないのでかなり好き勝手に振舞える場所でもある。
「マーメイドか。コリンは何か知ってるか?」
「あたしは森しか知らないなー。」
「まーそりゃそうか。」
 見た目はいけないおじさん感涙の小さい女の子だが、コリンはれっきとした大人だ。いや、大人未満かな、まだ。
 愛くるしい表情でサラダを頬張るコリンは、実は人間じゃない。
 魔物だ。
 ゴブリンという大人になっても体も(頭の中身も?)子供っぽい種族だから、コリンは見た目よりも大人なのだ。
 今は土茶色の探検者帽子で隠しているが、頭には2本の角が生えている。
 椅子に立てかけている得物は丈夫そうな木と大人の頭ほどはある石で作られたストンハンマー。
 筋肉ムキムキのおっさんじゃないと持ち上げるのがやっとのコレを、コリンは軽々と振り回すのだ。
 はっきり言って反則でしょ。
「けど、何でマーメイドの血なんか探すんだ?」
 教会の話のよれば、飲むと死ぬとか死なないとかって言う猛毒だ。
 誰か毒殺でもするつもりなのか。
「あっはっは。お前、マーメイドの血の事を全然しらねぇな?」
 ど太い笑い声に振り向くと、いつの間にかすぐ傍にガタイのしっかりしたおっさんがいた。
 傭兵か冒険者か知らないけど、タイプで言えば戦士系だなこの人。
「猛毒なんだろ。確か。」
「いやはや、教会の言うことを真に受けるようじゃまだ半人前だな、小僧。」
「教会が本当の事を全然言ってないことくらい、知ってるぞ。」
 小僧扱いされてムッと来る。
「あっはっは。そう怒るなって。」
「いたい。頭痛い。」
 俺がコリンにするよりもさらに乱暴に頭を叩かれる。
 ただ悪い気がしないのは、この人に悪気が全く無いからだろう。
 いやコリン、あたしにもやってーって顔するな。
 角がばれたらどうするんだこの馬鹿!
「マーメイドの事はどれくらい知ってんだ。」
「別に。教会の言ったまんましか知らない。海辺には来た事が無かったし。」
「いよっし。それじゃあ俺様が特別にマーメイドのことを教えてやろうじゃないか。」
 ドスンと自分の胸を叩いてみせるおっさん。
 この辺りじゃちょっとした有名人みたいで、酒場にいる他の男たちはやれやれという顔をしている。

「俺様の名前はガイツ。熊も逃げ出す最強の樵だ。」
 樵? きこり? 森の木を切って生計を立ててるって言うアレか?
「木を切り倒すより熊を切り倒す方が似合ってるぞ。」
「だから熊も逃げ出す、何だよ。」
 ニカリと暑苦しい笑みを浮かべて分厚い斧を持ち上げてみせる。
 それ、樵のまさかりと言うよりウォーアクスって言うんじゃないですか?
「樵なのになんで海辺に来てるんだ?」
「熊が全然見かけなくなっちまったんでな。出稼ぎだ。」
「なぁ。あんた本当に樵か?」
「どっちかってゆーと熊殺しー。」
「あっはっは。ちげぇねぇ。」
 コリンと波長があるのだろうな。
 二人して大笑いしている。
「お前さんらはなんて言うんだ?」
「あたしはコリンー。ごb」
「俺はただの冒険者。こいつは相棒のコリンだ。」
 慌てて相棒の口を塞ぐ。
 こいつ、なんて迂闊なヤツなんだ。
「ん? おまえさんの名前は何だ。」
「小僧でいい。」
「あっはっは。悪い悪い、からかってすまん。で、名前は何だ?」
「小僧でいい。それよりマーメイドってどんな魔物なんだ?」
 ベーコンをフォークで突き刺したまま、先端をおっさんに向ける。
「んー。マーメイドが唄を歌うってのは本当だ。けどな、大事な部分が抜けてるんだよ。」
「何だ、その大事な部分ってのは。」
 声音を低くしたガイツに軽く身を乗り出す。
「美人なんだよ。とびっきりのな、っておいあぶねぇだろ!」
 置いていたナイフを投げつけたが、避けられた。
 ガイツ、意外とすばしっこいな。
「魔物は全部人間の
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