甲高い獣の悲鳴で目を覚ます。薄暗い室内で目をこする。太陽はまだ登ったばかりなのだろう。伸びをして外に出る。
「あ、おはよ〜」
気だるげに笑いかける妙齢の女性がこちらに手を振る。今日も天気がいいから、機嫌が良さそうだ。そんな彼女の前には、後ろ足1本と前足1本がトラばさみに掛かった哀れなクマがいた。
「今日はクマ鍋だよ〜」
「それは良いね」
彼女はにへら〜と笑い、細い腕に似合わぬ膂力で斧を振り上げると、身動きが取れないクマの首目掛けて無慈悲に振り下ろした。
僕は丸太の椅子に腰かけ、鍋の火加減を見る。鍋の具は熊のモモ肉をはじめとする山の幸だ。山芋、野草に山菜と様々。それらを適宜鍋で加熱し、塩と香辛料で味を調え、香草で臭みを消す。
お玉で出しを小皿にとり味見をする。うん、良い塩加減だ。肉に串を刺して熱の通りを確認する。こちらも問題なさそうだ。鍋掴みを手にはめ、鍋を石机の上に置く。鍋に蓋をしてもう少し経てば、余熱で良い具合に煮上がるだろう。
「ケーくんはお料理上手だね〜」
彼女はにへらと笑い、ちゃぱちゃぱと足を動かす。
彼女の名前はネピー。僕にはもったいないくらい美人の、恋人だ。服を嫌がる事を除けば、本当によくできた恋人だと思う。ほんと、目に毒だ。わかっててやっているんだろうけど。
髪は2色で、頭のてっぺんは赤っぽいけれど髪の中ほどから鮮やかな緑色に変化している。肩まで届く柔らかな髪は艶やかに光っていて、とてもいい匂いがする。
胸は、凄く大きい。凄く、大きいんです。顔ほど大きな胸。なんであんなに大きいんだろう。蜜が詰まっているわけでもあるまいし。もちろん、胸も凄くいい匂いがする。
ここまでの説明では、服を着ない変わった女性としか思えないけれど、彼女の説明としてはあまりに不十分だ。
なぜなら、彼女は人間ではないのだから。
彼女の長い髪は、その先端がそのまま植物の一部に繋がっている。具体的には、壺の様な形状をした部分だ。縁だけが赤い葉っぱで出来た壺。食虫植物の捕食嚢、と言うのによく似ているらしい。
サイズをある程度変えられるみたいだけど、普段は中に入れば顔だけ壺の外に出る大きさだ。普段の彼女はその壺の縁に腰かけ、足をちゃぽちゃぽと動かしている。
壺の中に入っているのは、甘ったるい匂いの消化液だ。今は消化しないから微かに香る程度だけど、本気を出すと山のあちこちから動物(オス)を招き寄せるぐらい強い匂いになる。あの匂いは、ちょっとやばいので出来れば控えて欲しいんだけどね。
ネピーは植物の魔物だ。甘い匂いで獲物を誘い、消火液の溜まった壺に落として、そのまま溶かして栄養にする。そういう植物の魔物だ。気になったので、壺の消化液で肉を消化できるのかと聞いてみたけど。
「それって古臭いから、やんない〜」
とのこと。出来るかどうかは結局教えてくれなかった。ただ、男、あるいはオスを誘う効果は高いらしくて、今でも獲物を誘うときは山の方に消化液を飛ばしているみたい。
「お鍋が出来たよ」
「わ〜い」
ネピーが伸ばしてきた小さなツタ壺に鍋の中身をよそうと、彼女はにま〜と笑う。
「えへ〜。お肉たっぷりでおいし〜」
ネピーは元々肉食性の植物だったみたいで、お肉が好物だ。年齢は不明。
以前聞いた時は、笑顔で黙ったまま消化液の濃度を上げてきたのだ。あれは、すごかった。後で聞いたら、3日ほど壺の中でネピーとえっちし続けていたみたい。
それ以来、ネピーに年齢の事は聞かないことにしている。
「今日はどうする?」
「あのね〜。また、えっちしたいな〜」
「あー、今日は『そういう』日か」
ネピーから聞いた話だけど。彼女はマンイーターと呼ばれる種族で、マンイーターは基本的に夫が傍から離れることを嫌がるらしい。でもネピーは少しだけ違う。彼女の蔓が届く範囲にいるなら、離れていても良いみたい。
それでも、マンイーターだからなのか。魔物だからなのか。『そういう』日が来ると、ずっと離してくれない。
「ああ、じゃあやっぱり。クマを捕まえたのって」
「いっぱいいっぱい、えっちなことしちゃおう〜」
栄養補給と言う事か。いつのまにか、消化液の甘い匂いが強くなっている。体が熱くて、ネピーの体がいつもよりも魅力的に見えて。おちんちんが敏感になって。
僕はいつものように、服を着ていることを少し後悔しながら、出来るだけ早く服を脱いでいく。
にんまりと笑うネピーが、誘う様に両手を広げている。何もしなくても僕が彼女に近づく事を理解している笑顔だ。
僕は彼女が腰かけている壺に手をかけて、縁に足を置いて、彼女に抱き着く。体ごと抱き着いたけど、ネピーはやさしく抱き留めてくれる。
「ん。ちゅ、じゅる。じゅるる」
甘
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