魔女の使い魔。その種類は多く、その目的に応じた物が作られ使役されてきた。
簡単な手紙運びから、巨大な魔獣討伐の手伝いまで。形状も様々、扱いも様々。しかし、最も多いのは小動物を用いた小間使いだ。作り易く、使い易い。研究に集中するための雑用を任せるなら使い魔を使役するのが一番とされていた。
時代が変われば常識も変わる。
今の時代、使い魔にもまた人権が生まれた。人ではないのに人権とは何だろうと思われるだろうが、人権はあくまでも概念であり対象が人間であるとは限らない、として置く。
ファミリアに兄上を探させた結果、夫婦になって帰ってきたという事例も多くある。それは、問題がない。あの幸せな顔を見れば、祝福の二つや三つ、与えたくなるものだ。
私はケルア。かつては魔獣狂いと呼ばれていた、獣の魔女だ。今は白花サバトに所属しているが、折を見て他のサバトに移る予定だ。
多くのサバトを渡り歩いている理由は、ファミリアの事だ。世界は広く、サバトも今では多種多様の時代となった。私はより有能で、より可愛らしいファミリアを追求するサバトを求めている。
魔女にとって使い魔は雑用係が基本だ。しかし同時に、伴侶よりも長い付き合いのパートナーでもある。私はファミリアを使い魔ではなく、良きパートナーとして扱う事を主目的にしたサバトに腰を下ろしたい。その後で、兄上探しの第一歩を踏み出せるのだ。
さて、今回は題名にある通り、走るのが得意なファミリアについて述べようと思う。
走るのが得意と言っているが、実際には飛翔、潜水なども含む。要するに高軌道型使い魔だ。例えば狼系をベースにしたファミリアは文字通り四肢を使って走ることが得意だ。ただし、狼系ベースは走るのが好き過ぎて、1日家に籠っていると無駄吠えする事がある。触手を使うなどして性的興奮を発散させるか、満足させるまで走らせると無駄吠えが無くなる。食べるのも好きだが、むやみやたらに食べさせると研究費も食われるぞ?
次に多いのは鳥系ベースのファミリアだ。ハーピー属の様に腕が翼になっている事が多いが、基本的に狼ベースと同様の世話をすればいい。違いは騎乗位を好むため、性欲発散にはコツがいる。狼ベースと違い背に乗って空を飛べば移動に便利だが、逆に室内では翼を畳んで生活する都合上、ストレスも増えやすい。性欲発散時に翼を普段以上に激しく動かしている場合は、一度空中散歩をさせる事を強く推奨する。
変わり種と言っては何だが、水棲種のファミリアだ。マーメイド属タイプは水中で非常に有用だが、陸上ではほとんど活動できない。そのためファミリア作成コストに【尾足変換】や【浮遊】など変身や移動系を追加する事が求められる。海や川に拠点を持つサバトでは有用だろうが、それ以外の地域ではストレスにしかならない。どこを拠点とするかを考えた上でどのようなファミリアをパートナーとするのかが決まると言っても過言ではない。水槽で飼う小魚ではないのだ。きちんと毎日、存分に泳がせてやることだ。
『走る』事が得意なファミリアの中には、『走る』事が好きなファミリアもいるだろう。それが、『走り屋ファミリア』だ。
魔女の諸君からすれば、落ち着きのないファミリアに見えるだろう。しかし走り屋ファミリアの特徴を理解した上でその長所を伸ばせば、掛け替えのないパートナーとなる。
兄上と3名で旅をするなら、走り屋ファミリアは実に有用だ。風を受けて走り、あるいは空を飛ぶ。まだ見ぬ世界を求めて旅をする。町から町へ移り住む。広範囲を移動する事で、兄上との思い出はステンドグラスの様に彩り豊かになるだろう。
魔女なら箒で移動する? それも構わないだろう。だが、先に述べた様にファミリアとは兄上よりも付き合いの長いパートナーだ。『走り』で興奮したファミリアとの交わりで仕上がった兄上を、慣れ親しんだファミリアと共に攻め立て交わる。それこそが、走り屋ファミリアをパートナーにする醍醐味でもある。
汗まみれで紅潮したファミリアと、流れる景色で興奮した兄上との交わりで自分の準備を進めるも良し。兄上に甘えながらより愛欲を熟成させるも良し。何にせよ、『走り』だけでは満足し切れない興奮をファミリアが発散させた後にはなるだろうが。一人よりも二人と言うように、二人よりも三人での交わりは、より熱く豊かなものになるだろう。
もちろん、走り屋ファミリアは『走り』で日々満足させることが必要だ。世話にひと手間ふた手間かかることは否めない。それでもなお、走り屋ファミリアという需要があるのは、やはりファミリアを使い魔ではなくパートナーとして見る風潮があるのだと、私は考えている。
なお実体験から述べさせてもらうが。狼系走り屋ファミリアは千切れんばかりに尻尾を振るのが愛らしいのでお勧めだ。
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