目覚ましのアラームで目を覚ます。今日は土曜日だ。生活リズムを崩さないよう、8時には目を覚ますようにしてるので、いつもアラームをセットしている。カーテンと窓を開けると、肌寒い朝の風が入り込んでくる。春になったと言っても、まだまだ朝は寒いな。肌寒さを感じながら着替えていると、俺は包丁でまた板を叩く音に気づいた。一人暮らしをしている時には無かった、室内で聞こえる生活音。部屋着に着替えて台所に向かうと、同棲している彼女がエプロン姿で台所に立っていた。
「おはよ」
「起きた?」
「みてのとーり」
「歯ブラシ渡すから、風呂場の方で歯磨きよろしく〜」
「おう」
一人暮らしの1Kじゃ台所仕事をしていると流しが使えない。仕方なく風呂場にある洗面所で歯磨きをする。口をさっぱり綺麗にして口をゆすぐと、顔を拭くタオルの代わりに彼女がキスをしてきた。顔全体を押し付けるような軽い圧迫感と、口の中を味わう舌の動き。ぬるりと、ぞろりと、味わわれた。
「朝シャンする?」
「いや、朝ごはん作っているんだからそっちに集中してくれ」
「あ〜い」
ふわりと絹の様に滑らかな髪を揺らすと、彼女はエプロン一枚だけの姿で台所に戻る。いや、はだかエプロンというべきなのか。彼女は服を着ていないのだから、裸エプロンには違いない。違いないけど、これは何か違うんじゃないかと思う。これはこれでエッチで良いんだけど、なにかこう、慣れない間は「違う、そうじゃない」としか思わなかった。
何故なら彼女は、裸だし、エプロン一枚には違いないが。ある意味素肌をさらしてはいるが。
彼女、一反木綿だからさ。
エプロン一枚が彼女の素肌なんだよな。
何を言っているか分からないと思うが、俺も彼女と同棲し始めた頃は頭が混乱しっぱなしだった。顔は女の命!とばかりに複雑な布の造りで布製マネキンみたいな頭部があるけど、中身は空洞。触れれば布の滑らかさと温かくて柔らかな頬の感触がある。でも、一反木綿だから当然中身はない。
彼女は独特な感性をしている。先ほどの一件もそうだ。彼女は女性に対して嫉妬するが、同時に布製品にも嫉妬する、らしいのだ。キスのついでに顔を拭いたのか、顔を拭くついでにキスをしたのか。風呂上りにもなるともう大変だ。全身の水分を彼女は体で拭き取っていく。足の裏の水分さえもすらりとして弾力のある足の裏とか手とかで拭き取っていくのだ。そうして互いの体を重ねてすり寄せれば、当然お互い発情する。お陰で昨日も大変だった。
「ご飯できたよ〜」
「おう。相変わらず美味そうだ」
「美味そうじゃない。美味いの。伊達に付喪神やってないから」
「いや、布は料理しないだろ」
「それはそうなんだけどさ」
彼女は一反木綿。布の妖怪だ。魔物娘という呼び方もあるらしいが、器物百年の付喪神だ。基本的には真っ白な一枚布の姿をしているが、今みたいに台所仕事が終わった後は大分違う。どこをどうしたらそうなるのか不明だが、クリーム色のタートルネックにベージュのロングスタートの姿になっている。彼女が言うには、一枚布でもがんばれば出来るらしい。謎だ。あと特殊な染料を使えばあっと言う間にきれいに染め上がるらしい。謎技術だ。古い時代だと単色しかなかった一反木綿たちも、この特殊染料のお陰で今はおしゃれが出来ているらしい。
「今日はどうする? モールに行ってタピる?」
「タピらない。今日は家でごろごろする」
テレビを置くスペースが無いので、基本スマホ生活だ。彼女は特に何をするでもなく、俺の隣に座っている。
「いつも思うけど、何にもしないのってしんどくないか?」
「じゃあ、ナニかするね〜」
「あ」
これ、いつものパターンだ。気づいた時には、彼女は俺のモノを取り出していた。滑らかな布の質感と柔らかな指の質感。シルクの手袋で手コキをされたらこうなるんじゃないかって思う、背徳感がある。どうやら今日の彼女の気分は、布手袋手コキの様だ。指一本一本の動きが裏筋に伝わる。
「れろー」
「うぁ、くすぐった」
布の舌から溢れる唾液が俺の首筋に跡を残す。一反木綿は古くから居る妖怪なのだが、彼女は新しい感性を持っているらしく、彼女のしぐさに古臭さは感じない。服を着ているのに裸の様な温かさが彼女から伝わってくる。手でされて居たら俺もじっとはしていられない。彼女を見ると、窮屈そうに布地を押し上げる豊かなおっぱいと、エロさを主張する乳首の出っ張りが見えた。裸に直接服を着たらこうなるだろう。背徳的なエロさだ。俺は片方の腕で彼女を抱き寄せ、もう片方の手で彼女の胸を揉む。本当に布妖怪なのかと思うほど、確かな質感が手に伝わる。
「ん、ぁは♪」
俺が胸を揉むと、彼女の声の甘さが増した。完全に火が付いたな。彼女は手コキをより熱心にしながら口づけ
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