戦いの音が聞こえる。
誰が闘っているのか。
それは知ってる。
強い人間がいる。
「やぁああ!」
「たぁああ!」
二人は魔物に囲まれていた。
一人はドラゴンを相手に大立ち回り。
一人はアマゾネスやリザードマンたち相手に大立ち回り。
二人とも強い人間。
強い人間。
二人は、勇者。
「まったく! 竜王の城に飛び込むなんて想像もしませんでしたよ!」
「私もだよ! でも案外何とかなるもんだね!」
「無理です! 無茶です! まだ続々と援軍が来ているんですよ!」
リナリアと小さな勇者。
何しに来たんだろう。
「む!? 新手ですか?」
「ドラゴンとデュラハン、かな。あとは……わぁ、かっこいい鎧だねぇ」
「悪趣味ですよ! あのごてごてとしたのは」
竜王ファッションは不評みたい。
「竜王様が来た!」
「ここは我らだけで十分です!」
「この程度の相手、すぐにでも終わらせます!」
ドラゴンも他のみんなも頑張ってる。
でも、どいて?
「し、しかし」
どいて。
尻尾で地面を叩くと、みんなどいた。
「懸命ね。今のこの子、普段より10割増しで手荒いから」
「く、な、なんですかいまの」
「尻尾で地面を揺らしたみたいだね」
「それで、竜王様が何しに来たの? お話?」
リナリアが緊張してる。
やっぱり王様の前に出ると緊張するのかな。
私はしなかったけど。
「どうなの?」
ちびっ子勇者は震えてる。
やっぱりドラゴンは怖いのかな。
それとも、私が怖いのかな。
「何とか言ったらどうなのかな」
「何とか言いなさいよ」
なぜかディリアにも言われた。
げせぬ。
「貴女が言いださないなら、何も始まらないわよ」
むー。
「竜王様が出ないのでしたら、私が参ります」
隊長さん?
「事情は存じませんが、排除すべきなのでしょう。では、私が往きます」
隊長さんが剣を光らせて走り出した。
ちょっとだけちびっ子勇者に向かうと見せかけて、リナリアへ。
「くっ!」
「はぁ!」
隊長さんは強い。
でも、リナリアはもっと強い。
リナリア、強くなった。
でも、だいじょうぶみたい?
ずっと前に気にしてたけど、洗礼は無いみたい。
よかった。
ほんとによかった。
「このぉおお!」
「はぁあああ!」
リナリアは勇者。
素の力も強いけど、魔力を込めて戦ったらもっと強い。
隊長さんは強いけど、勇者ほどの強さじゃない。
なのに。
隊長さんはリナリアと互角。
「あら。結構やるみたいね、あの人」
たぶん魔力で体も強くしてる。
「それは凄いわね。でも、『もつ』の?」
たぶん無理。
もう息切れしてる。
「下手なドラゴンは一撃で終わりそうなのに。あの勇者、強いわね」
リナリアの装備は強い。
それにまだリナリアは切り札がある。
「すぅ、はぁ」
リナリアが距離を取って、集中してる。
あ、危ない。
「え? ちょっと、貴女」
「はぁああああ!」
隊長さんがリナリアに突撃する。
その二人の間に入る。
「て、りゃぁああああ!」
リナリアが振り下ろした剣から光が飛び出る。
翼で隊長さんを隠して、手で防ぐ。
「勇者って、みんなこんなのなのかしら」
出来る勇者は少ないみたいだけど。
「少ないってことは、他にできる勇者を知っているのね」
父様。
「……ああ、そうなの」
父様の切り札が、あれ。
勇者の力。
「何それ?」
リナリアの光が巻き起こした土煙が晴れていく。
生まれた時からの勇者は神様に才能を与えられる。
たまに、才能以外にも貰えるときがある。
天使たちが持つような、強い光の力。
父様は使えた。
「その力を使って貴女の母様に勝ったのかしら」
使ってなかったみたい。
でも、使ったのは見たことがある。
「あらそうなの」
「無傷? そんな馬鹿な……え?」
リナリアが驚いてる。
うん、切り札防がれたらみんなそうなる。
「君は……やっぱり」
やっぱり?
「君、だったんだね。あの時、洞窟の奥にいたドラゴンは」
首をかしげる。
「貴女。兜、無くなってるわよ」
あ、ほんとだ。
どおりで顔が涼しいと思った。
「おまえ、人間じゃなかったのか」
うなずく。
「色々と不思議だったけど、納得はしたよ。勇者にしては、君の戦い方、奇妙だったしね」
そうなんだ。
「それでどうするのかな。私たちのこと」
んー。
どうしよう?
「私に聞かれても困るわよ」
「竜王様の言葉に従います」
むー。
二人が私を見てる。
リナリアとちびっ子勇者も見てる。
とりあえず。
「とりあえず?」
ご飯食べよう。
みんなで。
振り向いた先には少年たちがいた。
みんな揃ってた。
何だか色々話し合った。
少年たちは私と別れた後も何度か会ってたみたい。
少年とちびっこ勇者が喧嘩をしたり。
リナリアとラージマウスたちが大食い競争したり。
なんか色々やってたみ
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