青い空。
白い雲。
眼前に広がっているのは、プライベートビーチと言わんばかりに無人の白い砂浜。
日差しに光る海は泳げば気持ちよくなりそうだ。
主に、三途の川へ流れていくという意味で。
「死ぬよな。絶対死ぬよな」
場所は北海道。
氷が流れてきてもおかしくない、雪の積もった砂浜。
俺は防寒装備を身につけて砂浜だか雪原だか分からない場所を歩いていた。
冬に北国の砂浜を歩いている俺は、きっと物好きか画家か自殺志願者のどれかに当てはまるんだろう。
ちなみに俺は、画家ではない。
自殺志願者でもないが、茫然としていたらここに来ていた。
単に俺は夢破れて、故郷に帰ることもしないまま旅をしていた。
生まれは沖縄。
東京に出て来て料理学校を経て、自分の料理を作りたくて頑張って、1年で終わった。
借金しなかったのが奇跡なくらいまったく、駄目駄目だった。
学校を卒業しても店を出して成功するなんて無理。
世の中いったい何百の店が生まれては消えていくのか。
まぁ、それを実感したわけだ。
ちなみに料理は沖縄料理と和食の混合。
健康にも良くて売れると思ったんだ。
「ゴミ?」
砂浜になんかゴミ袋みたいなのが落ちていた。
近づいてみると、どうやら海草らしいことがわかった。
そう言えば北海道は利尻昆布が有名だっけ。
昆布って結構でかいな。
「持って帰って、今日は味噌汁かな」
一部だけ切り取ろうか、でも刃物ないし全部丸ごとか。
俺はそう思って『昆布の塊』を担いで帰ることにした。
『昆布の塊』はとんでもなく重かった。
気分はゴミ袋に女の子を入れてお持ち帰りしている感じだった。
「どうしてこうなった」
俺は今、頭を抱えている。
まじで訳がわからん。
場所はホテルの俺の部屋。
俺は昆布を持って帰ったはずだったんだ。
床にうずくまったまま目だけを上げる。
「……?」
こてん、と首をかしげている顔が目に入る。
可愛らしい少女だ。
むしろ幼女だ。
犯罪臭がするくらいあどけない。
いや、あるいみかなり犯罪的だ。
頬に張り付いた昆布が怪しい空気を生み出している。
そう。
昆布は持って帰ることは出来た。
単にオプションで女の子がついていただけだ。
待て。
文脈がおかしい。
自覚はしている。
よーく考えると漂着した女の子が昆布まみれだったってことなんだろう。
全裸で。
小学生前後の幼女が昆布塗れ。
全裸で。
頭がどうにかなっちまいそうだ。
いやきっと手遅れだ。
真冬に幼女を全裸で昆布塗れなんて児童虐待じゃないか。
ほら、顔色だってこんなにかわいい。
うん。
もう俺、自首しようかな。
色んな意味で。
よし整理しよう。
それから自首しよう。
まず、俺は雪原で昆布を拾った。
俺はホテルに昆布を持って帰ってきた。
部屋に入ってホテル備え付けのキッチンに昆布をほうり込もうとした。
重かったので一旦は床に下ろして切り取ろうとしたら、幼女と目が合った。
アイコンタクトを試みたが失敗。
俺、ベッドへ逃走し、Orz。
現在に至る。
うん、誰か俺に現状を説明してくれ。
とりあえず体を起こして幼女を見る。
頭から昆布の塊を被っていると思ったが、髪はとろろ昆布の様な、或いはモズクの様な。。
何と言えばいいのかわからないが、凄く細い昆布だ。
髪をひとふさ摘まんでみると、髪の毛ではない。
髪の毛の様に極細でぬめりのある海草だ。
幼女は濃い深緑色の目をしている。
肌の色は病的なほど青白い、というか人の肌の色をしていない。
ナスの漬物と一緒に入れた大根、が似た色合いをしているかな。
肌は驚くほどプニプニにしている。
弾力が半端ない。
つるつるとした肌と、寒天質の弾力。
でも寒天ほど無機質なツルツルじゃないという不思議触感。
腕は、どうもないらしい。
肩から先はもう海草だ。
胸はちっぱい。
腰は細いしアソコはまぁツルツル。
足は脹脛くらいまではあるが、そこから先はなんか海草。
海草は肌と違ってガチの昆布。
良い出汁が出そうだ。
さて。
ここまで観察していて、あれなんだが。
押し倒された。
何故だ。
体の隅々まで触って確認しただけじゃないか!
何故アウトなんだ!?
「……♪」
なんか気づいたらヌルヌルした海草が俺の体を這いまわって、ヌルヌルと服を脱がせていく。
うわ、気持ちいい。
なんかもう海草塗れって、しかも何かヌルあったかい。
なまあったかいお風呂に入っているような。
ローション風呂ってこんなのかなって思うくらいヌルヌルにゅるにゅるする。
あれ、なんか俺襲われてる?
「……♪ ……♪」
キスされた。
地味に俺のファーストキスだ。
昆布飴というか、昆布味なのに甘い。
甘いのでもっと味わおうと舌を絡める。
自分でも何しているかだんだんわからなくなってきた。
もうこれはきっと夢だ。
にゅるにゅる、
[3]
次へ
[7]
TOP[0]
投票 [*]
感想