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米
米 この物語は「巻き巻きレディー」「巻き巻きレディー2」の続編です。
米 ……ご存知でした?
米 これは失礼。
米
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むかしむかしあるところに
とてもいだいなおうさまがおりました
おうさまはみんなをしあわせにしたので
みんからからそんけいされました
あるひおうさまはいいました
「ねむいからねる。いっしょにねたいひとおいでー」
みんなはおうさまがだいすきだったので
たくさんのひとがおうさまといっしょにねました
ながいながいねむりのあと
おうさまはめをさましました
「あれ、なにかへん」
おうさまはふしぎそうにまわりをみまわしました
けんらんごうかなおうきゅうはなくなっていました
おいしいくだものがなるきもありませんでした
おおきなおおきなみずうみもありませんでした
おうさまはかなしくなりました
「よし。それじゃああたらしいくにをつくろう」
おうさまはみんなをおこしていいました
「これからあたらしいくにをつくろう」
みんなはよろこびました
「って話なんだ。よくわかったかい?」
「あの、それはファラオ様の話ですか?」
「いやまぁ、そうなんだけどさ。」
彼が苦笑する。
勉強熱心な生徒に恵まれて居なかった彼にとって、成績優秀にも拘らずわざわざ補習授業を受けようとする生徒は願ったり適ったり。
彼はこの「国」に来て1年ほどになる。
この奇妙な環境に慣れるのには時間がかかったが、慣れてしまえば嬉しい事尽くしだ。
もっとも、所構わずに襲われて裸にされたり、それ以上のことをされたりというのはあまり慣れないが。
「というか慣れると困るんだけどね。」
「……先生?」
「ああ、ごめんごめん。それでどこまで話したんだったかな。」
「この国に新しく作られる童話の原本の話ですよ。」
「そうだったね。」
学者一筋だった自分が子供たちに勉強を教え、子供の為に童話を作っている。
最初は戸惑いを隠せなかった彼だが、今ではすっかりと「先生」が板についている。
元々柔和だった顔立ちは子供達との触れ合いでさらに柔らかくなり、今では目を閉じているのかと思うほど目を細めて子供たちを見守っている。
「先生、お疲れのようでしたら今日はここで切り上げますが?」
「え、ああ、ごめんごめん。ちょっと物思いに耽っちゃっててね。」
「物思いですか。故郷が恋しいのですか?」
「違うよ。もう1年になるんだなぁって思ってさ。」
ガラスの無い窓から空を見上げる彼。
柔和な笑みの内側に様々な思いを詰め込んだ、柔らかく複雑な表情。
その彼を、イリスはじっと見つめ続けた。
イリスは帰路に着きながら、1年前を思い起こす。
まだ学校という物が存在せず、イリスは母や大人たちと共に論議の場に居た。
周りは大人のアヌビスばかりで子供のアヌビスはいない。
砂の王様が目を覚ました直ぐ後に母は父と出会い、(自主規制)によってイリスが生まれた。
他のアヌビスたちも夫が居るようだが、まだ子供はイリスしかいない。
早く子が欲しいと思いながらも責務に支障があってはならない、というのがアヌビスたちの考え方。
故に王の目覚め後以降で最初の子供のイリスは、期待と不安、愛情と観察、様々な思惑乱れるアヌビスたちの視線にさらされ続けた。
アヌビスと言う種は犬で言うならば忠犬。
王の為、王国の為と繰り返す日々を過ごしている。
幼いイリスにもその気質は受け継がれていて、イリスは早く一人前のアヌビスになるべく精進を続けていた。
管理者たる物、知識の海にたゆたうべし。
埋もれず、浮かび漂うがごとく知識と共に在りてこその管理者である。
管理者たる物、文武両道であるべし。
恫喝ではなく秩序維持、外敵の排除を行う事もまた管理者の務め。
幼いイリスはアヌビスの訓戒に従い、すくすくと成長していった。
「私はアヌビスだ。マミーたちを統括して国を豊かにする、忠誠の獣だ!」
この日もイリスは天秤飾りの付いた杖を片手に、町の治安を歩いて確かめている。
イリスの杖は魔力の篭った純金製ではなく、安価に生成される真鍮製。
アヌビスとしての力が増せば増すほど、真鍮は金へと変化していくらしい。
それ故イリスはこの杖を肌身離さず常に持ち歩いていた。
「むっ、そこのマミー! 一度に相手していいのは3人までだ! そして人間は枯らしてはいけないぞ! 彼らとの共存こそが我々の
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