カナシャとメルセが喧嘩をしてる。
ご飯を食べて元気になったからかな。
「はっ。力任せじゃ、私は倒せないよ」
メルセの斧槍が動くと、カナシャの突進がそれる。
カナシャが爪を振り下ろすけど、メルセが下がって当たらない。
蛇の体がうねうねってなって、距離が縮んだり遠くなったりしてる。
うん、よくわかんない。
「ブレスなら、関係ないだろ!」
「そう来ると思ってたよ」
ブレスは息を大きく吸って、吐く。
息を吸っている間に近づいて顎を打ちあげられたら、不発になる。
ちょうど、今カナシャがやられたみたいに。
「鬱陶しいんだよ。第一、俺にはダメージなんざ入ってねえぞ」
「だったら、あんたが倒れるまで何度も繰り返そうじゃないか」
カナシャとメルセがひーとあっぷしてく。
でも。
私は暇。
リュウマカイモも食べ終わったし。
「暇なら参加してきたらどう?」
すぐ終わるから、面倒。
「なんだ、リィーバ。参加する気か?」
「竜王の参加かい。楽しめるといいけどね」
「はっ。楽しめるといいな」
ちょっとだけ、参加しよう。
アマゾネスが使っていた大きな剣。
それを山羊先生が硬くした。
これを使えば、ちょっと強く振っても大丈夫。
「武器を使うのか。なんだ、手加減でもするつもりかよ」
「ドラゴンても倒せそうなサイズの剣だね。アマゾネスの剣か?」
ぱぱっとやって、すぐ終わろう。
大きく一歩、カナシャに近づいて、振り下ろす。
「げ、はええ!?」
脳天一撃ー。
あ、両手で防いだ。
「ちい、相変わらず馬鹿力だな」
カナシャより力持ち―。
剣の腹で、ばっちこーん。
カナシャが吹っ飛んだ。
「おいおい。マジかい?」
「竜王って伊達じゃないのね。あのメルセと戦ってたドラゴンが、ゴブリンみたいにすっ飛んで行ったわよ」
「あの二人で満足したらいいのだけど、ねぇ」
「え、まさか。こっちに飛び火するって?」
「可能性はあるわよ」
メルセもすっ飛べ―。
あ、外れた。
「風圧だけで木が吹き飛ぶなんて、めちゃくちゃだよ」
えい、やぁ、てい、やぁ。
大きな剣を振っても中々当たらない。
蛇の体を使ってうにょうにょ動いて当たらない。
だったら、こうする。
切っ先を少し地面に埋めて。
「ん、何をする気……まさか」
地面ごとふっとべー。
よし、メルセも吹っ飛んだ。
地面も木も一緒に飛んでったけど。
「自然破壊も甚だしいわね」
「うわー。あれだけのことをやってて、まだ封印中なのよね」
「ついでに言うなら、人の姿って時点で能力は低下してるわよ」
「聞きたくなかったわね。デルエラ様が来なくても、あの子一人がレスカティエに来ただけで勝負があったわよ、確実に」
力任せで全部終わるから困りもの。
速さ勝負なら、どうなんだろ?
ディリアに振り下ろしても、当たんない。
というか、飛んだ。
「やっぱりこうなるのね」
跳ねて、切って、当たんない。
「まさか、翼もなしに私と戦うつもり?」
大きくかがんで、それから、ジャンプ。
「勢いだけはあるけれど、タイミングがわかればどうと言うことはないわよ」
あんまり当たらない。
じゃあ、もっと速く跳ぶ。
「さっきより速いわね。……まさか、ね」
もっと速く。
もっと。
もっと。
もっと。
「まさか、剣の傾きで飛ぶ角度を調整しているの? 目測が合わなくなってきたわね」
剣が届かないなら。
届かせる。
地面を吹っ飛ばすように。
風を吹っ飛ばす。
ディリアも飛んだし。
あとは。
「げ、まさかこっちに来る? ちょっと、私は関係ないでしょ!」
狼さんと鬼ごっこ。
捕まったら最後〜。
「なんか怖いこと言ってるし〜!?」
ワーウルフでエルフなプリメーラは、森に入ると速い。
木の陰に隠れたり、木の上にいたと思ったら木の根元にいる。
時々牽制で矢が飛んでくる。
でも、矢が飛んできた先にはいない。
地面ごと木を吹っ飛ばしても、森が無くならない限り当たらない気がする。
力技では倒せないのかな。
じゃあ、どうしよう。
地面に手を添えて、大きく息を吸って。
魔力を注ぐ。
イメージするのは大量に咲く花々。
森を照らして、私の世界を押し広げる。
森がエルフとワーウルフの領域なら。
その利点をまず無くそう。
「うえぇええ!? な、なにこれ!? え、なに? これって、魔灯花?」
竜色の花が咲いて光る。
ここはもう、ドラゴンの領域。
エルフも狼も関係がない。
巣に入り込んだ獲物を狩るのは、ドラゴンの仕事。
狭く逃げ場のない洞窟の様に。
暗がりのない森に、獲物の姿は色濃く残る。
木を一本引き抜いて、逃げ道を塞いで。
あとはすっ飛ばすだけ。
拍手が聞こえる。
小さな子供を褒めるような、穏やかな拍手。
「凄いわね。二重の封印をつけたまま、あの4人を相手に一方的に勝負をつけるなんて」
メルセとプ
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