騎士の魂2

 デュラハンという魔物は、高い魔力と戦闘力を持つ魔界の精鋭。
 たった一人で一国の騎士団を切り伏せる連中が集まる騎士団なんてものは、勇者か英雄クラスでも無い限り全滅必至だ。
 弱点といえば、首が外れる事くらいだ。
 首が外れると快楽とか本心に素直になってしまう彼女達。
 ある魔界のあるデュラハン。
 彼女は今とてもとても困った事になっている。
「あの。この首輪、何とかなら無いのか。」
「あははー、無理無理ー。バフォ様の呪い付だから一ヶ月は外れないよ。」
「な、い、い、いいい一ヶ月ぅ!?」
 アンダンテは悲鳴を上げた。
「外せ、今すぐ外せ、外せ外せ外せ!」
「ちょ、ま、は、ちょ!」
「外してってお願いだから外して外して!」
「落ち着け、アンダンテ!」
 慌てて止めに入るデュラハンの騎士団長。
 紺色のショートヘアが視界に入り、少しだけアンダンテが落ち着きを取り戻す。
「団長。どうしてここへ。」
「お前が新しい首外れ防止に取り組んでいると聞いて、急いで駆けつけた。それより、あまり揺さぶると危ないぞ。」
「え? ……あ。」
 動揺して魔女の肩を掴んで揺さぶっていた事に気づいた。
 デュラハンの筋力で拘束にシェイクされた魔女は、目を回して泡吹いていた。

 今日の訓練は休んでいい。
 団長にそう言われ、自室で待機するアンダンテ。
 理由はわかっている。
 先ほどから気になって仕方の無い首輪の事だ。
 黒い皮製のベルトに金属製の錠前がついた首輪。
 どういう原理なのかはわからないが、これで首が外れるのを防いでいるらしい。
 ついでに前回の失敗を糧に、若干の隙間を確保しているという。
 但し、これは魔女が「お兄ちゃん」につけるために作った奴隷の首輪を改造した物で、強い好意を持っている相手にはなんたらかんたら。
「くぅ。もう少しよく話を聞くんだった。」
 気が動転して魔女をシェイクしてしまった為、あまり話が聞けなかった。
「というか呪いとか言っていたな、あいつ。」
 まさかこのまま幼女体型になるんじゃ無いだろうか。
 背筋に走る戦慄。
「ありえる。このまま魔物の幼女化を促進してゆくゆくはバフォメットの支配下に魔界を置くつもりか!?」
「んなわけ無いだろうが。考えすぎだろ。」
「甘い、甘いぞハンデル。あいつらには気を許してはいけないんだ!」
「そういうもんか。」
「ああそういう、……?」

 自分の独り言に誰かが反応した気がして、彼女は恐る恐る部屋の一角を見やる。
「何やってんだ、お前。」
 そこには彼女が大好きで大好きで仕方の無い若い兵士が居た。
 今は鎧兜を身につけていなくて、さっぱりとした短い髪もすらりと細身で引き締まった体のラインも良く見える。
 彼が彼女のベッドの上に腰掛けて不思議そうな顔をしている、という所まで確認して彼女は思考停止する。
「おい、だいじょぶかて何だなんだ!?」
 超高速の小刻み歩きで接近してきた彼女に思わず後ずさりして、そのままベッドに押し倒される。
 赤いものを見たミノタウルスかお前。
 ハンデルの心境はそんな風だった。
「なななななんでハンデルがここにいるんだ!?」
「なんでって。団長さんからお前の事診ててくれって言われてさ。」
 少し子供っぽい顔だちに照れくささが混じる。
 仏頂面の彼が時折見せるこういった表情に彼女は弱い。
「一体何が、むぅぅう!?」
 問いかける言葉が途中で飲み込まれる。
 首に手を回して熱烈なキス。
 彼の足に跨り腰を擦りつけながら、彼の胸板にボリュームのある胸を押し付けながら、彼の唾液を残らず飲み干す勢いで舌を割り込ませ口の中を蹂躙する。
 彼女がここまで乱れるのは、ハンデルにとっては3度目だ。
 1度目は様子のおかしい彼女に告白をされた時。
 2度目は体を重ねるようになってから。
 少し激しく動きすぎて、つい彼女の頭が取れてしまったのだ。
 だが3度目の今回は頭が外れていないのにこの乱れよう。
 彼の太ももは彼女から溢れる蜜で既に濡れていて、胸には固くしこった乳首がコリコリと当たっている。
「ぷはぁ、ん、ちょ、待った、待てって!」
 何とか手で押しやって彼女のキスを中断する。
 やっと会話が出来る、と思った彼は彼女の顔を見てぎょっとする。
「どうして。私とキスするの、嫌なのか?」
 拒絶されたと誤解したアンダンテが大粒の涙を目に溢れさせている。
 慌てて両手を振って否定する。
「違う違う。まずは話をしようってんだ。」
「その前に、ハンデルと一つになりたい。」
 言ってまた唇を重ねてくる。
 今は何を言っても話が進まないか。
 腹を括った彼は、愛する彼女の不安を取り除こうと衣服を脱がせていった。


「……すまない。」
「気にするなって。俺もさ、よかったんだし。」
「すまない!」
 
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