夢を見ていた。
辛い過去を再生するような嫌な夢だった気がする。
夢の内容は何だったか。
思い出そうとするが靄がかかったようにおぼろげで、思い出せない。
「まぁ、いいか」
いずれまた同じ夢を見るだろう。
根拠もなくそう考え、ベッドから降り身支度を始めた。
「おはよう、ヘイゼル」
リビングでは既に起きていたヘイゼルが食事の支度を済ませて紅茶を飲んでいた。
相変わらず紅茶を飲む姿は一枚の絵画のようだと惚れ直してしまう。
その内心を読み取ったわけでもないが、ヘイゼルは嬉しそうにほほ笑んだ。
「お早うございます。ご主人様」
ヘイゼルはまるで王を前にした騎士のように恭しく背筋を伸ばしてお辞儀をする。
最初は戸惑いが強かったが、慣れた今では彼女らしい挨拶だと受け入れていた。
彼女の姿に似合っているということもある。
彼女は剣と盾こそ身に着けていないが、頭部を硬質感のある兜で覆い、上半身や腕も同様に鎧や手甲で身を固めている。
騎士のようだ、と言える。
もっとも、彼女は騎士ではない。
彼女の身に着けている兜鎧は夜の様に黒く、その意匠は防具であるはずなのに攻撃的だ。
触り方を間違えると指を傷つけるんじゃないかと思うほど、そのパーツの一部は尖っている。
不思議なことに、彼女と共に過ごして以来、一度もそんな痛い思いをしたことはない。
以前は無論のこと、『今』の彼女にとっては俺を傷つけるということは髪の毛ひとつとっても有り得ないことなのだろう。
そんな奇妙な信頼感を抱けるほど、彼女は俺に心酔しているというか、なんというか。
「では、朝のご奉仕をさせて頂きます」
いつの間にか俺の足元にひざまずいたヘイゼルは、うっとりと目を細め取り出した俺のモノの先端にキスをしていた。
俺は元勇者で現在は隠居しながら庭仕事をするただの暇人だ。
『ここ』にいる全ての人間は俺と同じように、暇人であり常に忙しいと言えなくもない。
俺がこうしてのんびりとヘイゼルの奉仕を受けながら食事をとれるのは、ヘイゼルが比較的おとなしい魔物だからかもしれない。
ヘイゼルは堕天したヴァルキリー、ダークヴァルキリーと呼ばれている種族だ。
彼女は生来の生真面目さから、完全に堕天する前から懸命につくしてくれていた。
彼女と出会うまでは勇者の責務に急かされるように魔物討伐をしていたが、彼女と出会って以来は迷いながらも俺の傍に居てくれた。
魔物を討伐しないことが堕天のきっかけになったのかもしれない。
それを話しても彼女は、今の道を選んで良かったのだと言ってくれている。
「はぁ、ん、はぁ、ぅん♪」
普段は凛々しく見えるその顔は、今はいやらしく歪んでいる。
元天使だったとは思えないほどだ。
後ろから何度も突き入れると、それだけでイってしまう。
体を震わせたあと、ねだるように濡れる瞳を俺のほうへと向けてくる。
彼女は堕天使なのだと実感する。
彼女の愛欲に染まった瞳を見るだけで股間が熱くなり、もっと乱れさせたくなってしまう。
堕天した事で黒くなった翼の付け根に顔を寄せ、唾液でぬれた舌を往復させる。
「んん〜〜〜〜♪」
また少しだけイったようだ。
体を弓なりに反らすヘイゼル。
その大きな胸を後ろから伸ばした手で握りつぶす。
「あぁあああああっ♪」
イキ続けているヘイゼルは、もう何をしても快楽を感じてしまう。
俺は可愛らしい声で鳴き続けるヘイゼルの片足を肩に担ぐと、不安定な姿勢のまま片足と壁についた手だけで体を支えるヘイゼルを、なおも強く攻め続けた。
何時間か、何十時間か。
時の感覚が無意味な万魔殿では、つい膨大な時間を費やしてしまう。
元勇者のインキュバスだからこそとも言えるかもしれないが、おかげで万魔殿内に専用の小さな世界を作ってしまうほど互いの魔力が高まってしまった。
『ここ』の先輩方は既に作りたい人は作ってその中に引きこもっているようだが。
そうでない人たちは単に乱交が好きであったり、見られるのが好きだったりと奔放な人たちだ。
堕落した人々は、快楽だけの生活を送る。
しかし彼らにも天敵はいる。
それは、退屈だ。
ということで俺もその例に漏れず、退屈しのぎに庭仕事をしている。
庭木をさまざま男女の絡み合う体位の形状にカットした『48手、緑の彩を添えて』や、数多くの群小に囲まれているような錯覚を与える『みんな見ている、えっちなあなたたちを』は個人的な趣味で作ったが、意外と多くの人に好評だ。
特殊な道具をほしがる人には、触手を活用した『万能触手はちょっとすごいえっちをしてみたい』が。
ムードを高めたい、というかぶっちゃけ二人が居ればそれでいいという人たちにはマンネリ解消のため『季節のハーブ、様々な気分を添えて』がいい。
具体的にどう使うかは人それぞれだが、どうせ時間はいくらでもあるのだから本人たちで幾らでも
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