015.「ドラゴン襲撃と撃退」

ドラゴンと出会った村を出発してから、沢山日にちが経った。
ゴブリンの群れに出くわしては、僕が襲われそうになったり。
森でクマさんに出会ったら、連れ去られそうになったり。
魔力のコントロールに失敗したマリーや、ついうっかり眼鏡を外してしまったアラーティアに押し倒されちゃったり。
凄く興奮したピピに連れ去られた……のはマリーだったかな。

僕らはドラゴンの本拠地を目指して旅をしている。
沢山の魔物の人たちに囲まれて、襲われたり守られたりしながら旅をしている。
時間があったら、皆に特訓をつけてもらう。
みんな普通の冒険者なんて相手にならないくらい強いから、物凄くためになる。
問題は、僕が一向に強くならないことなんだけど。

「少年。あの子供勇者と比較するのは悪い癖だ」
「でも」
「勇者は別格だ。人が魔物の上位者であるなら、勇者は魔物の上位者であるらしい。つまり、人と勇者との間には壁が二つあると思えばいい」
ヴィヴィさんは僕に才能は無いと言う。
けど、努力した分だけ強くなっていると言ってくれる。
ヴィヴィさんに、まだ一度も1本を取った事が無いし、かすった事も無いんだけど。
「そ、それはそれ、これはこれだ」
地道に頑張ろう。

「ねぇ」
「な、なに?」
時々、マリーは背筋がぞくぞくって来る顔つきになる。
なんていうんだろう。
あぁ、これ食べられちゃいそうだなって気分。
「元人間の私ならさー。他の魔物に比べて、人間の常識を知っている分だけ接しやすいと、思うんだけどねぇ」
「た、たぶん、そうだと思うけど。ど、どうしたの?」
「何で遠ざかるのかなぁ」
「わ、わかんないけど! 今のマリー、なんか怖いよっ」
「だいじょーぶ。怖いことなんて、ないからさぁ」
「あ、よ、用事思い出した〜!」
マリーは時々怖くなるので、つい逃げちゃうんだ。

「おねーさんは剣の道を引退したけど、今でもちゃんと振れるよー」
「うん。すっごく強かった」
「ヴィヴィっちとどっちが強いかは聞かないことにしとくよ」
エルシィさんは変な話、一番人間らしい魔物だと思う。
えっちをしたがるわけじゃないし、人に襲い掛かるわけじゃない。
魔物の時の姿はどう見ても人間じゃないんだけど、尻尾の動きも含めて人間味が溢れている。
「え? あー、そりゃねぇ。ウチの工房、人間もいるからね」
「そうなんだ?」
「鉄弄りが好きな奴が集まっているからねー。それでも、たまに男の取り合い騒動はあるけどさ。仕事場じゃ、一度も無かったねー」
「気の会う人同士で、付き合うってこともあったんですか?」
「あったねぇ。私も何度か声があったんだけど、断ってたら他の女の子にぜーんぶとられちゃったよ」
「えええええ!?」
いつも陽気なエルシィさん。
エルシィさんでも落ち込んだりすること、あるのかな。

「マリーも魔法を扱うが、本来魔術とは学問だ。体系立てられた魔術は、オリジナルへと繋がる」
アラーティアは地面に綺麗な文字を描きながら、魔術のことを教えてくれる。
全然使えるようにならないけど、アラーティアは問題ないって言う。
「魔術としての才能がゼロであっても、魔術を活用する事は無限に可能だ。だが、活用の幅を広げるためには、魔術以外の知識も必要となるだろう」
元々は使い魔って言う、雑用をするだけの鼠だったけど。
お手伝いをするうちに難しい事も勉強するようになって、眼鏡をかけることで難しいことを考えられるようになったんだって。
「だが、魔術の知識は土台だ。土台が狭ければ数多くは乗らず、土台が脆ければ魔術そのものが崩れ去る。故に、魔術を学問として学ぶ事こそが、魔術を最大限に活用する最短の方法だ」
魔法使いの学校があるのなら、きっとアラーティアは一番偉い先生になれるんじゃないかな。
それくらい分かりやすくて、覚えやすい教え方をしてくれる。
「……ところで、少年」
「どうかした?」
「その距離は何の意味がある」
「……何となく、だよ」
アラーティアは時々怖くなる。
マリーみたいな怖さだけど、アラーティアは何となくだけど、もっと怖い。
「ほほぉ。では、私も『何となく』眼鏡を外そうじゃないか」
「わわわっ! ご、ごめんっ! ちゃんと近くに行くよ!」
アラーティアは、やっぱり怖い。


僕とよく話をするのはこの4人。
ピピはマリーと一緒にいることが多いし、オリエンティはあっちこっちふわふわ浮いていて、よくわからない。
はぐれた事が無いから、たぶん誰かと一緒に行動しているんじゃないかな。
そして、僕と一番長い間一緒にいるけど、あんまり話をしない仲間もいる。
パルは、よくわからないけど、僕が話しかけて返事をしてくれない。
何時も僕の胸ポケットや鞄の中に入っているけど、あまり外に出てこない。
他の皆に理由を聞いてみたんだけど、みんなも分からないって
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