ドラゴンがいなくなった村から出発して、次の町にたどり着いた。
町って言っても、レンガ造りの屋根も美味しいパンの匂いも無い。
「どっちかってゆーと、集落だよね」
むしろ尖った先端が怖いんだけど。
「気にすることは無い」
「無論だ。反撃し、我が剣の錆にしてくれる」
気にするって。
だってこの人たち、怒ってるみたいだから。
「そりゃそーでしょ」
僕の隣にいる女の子が欠伸をしている。
何でこんな状況で欠伸が出来るんだろう。
「エルフたちを人間が追いまわしてから、まだ一週間と経っていないんだよ」
僕たちは今、森の中にあるエルフの里にたどり着いていた。
状況を整理したいから、少し遡って経緯を追ってみる。
確か、どこを経由して南に下りようか話をした時の事だったんだ。
「エルフの連中が森に住んでっからさ。そこに寄ろーよー」
提案したのは、剣を振るより剣を鍛えるのが好きなリザードマン、エルシィさんだ。
リザードマンの人はみんな気難しい顔をしているイメージがあるんだけど、エルシィさんは何時も笑ってる。
「私とねずっちがさ、北に来る途中で寄ってきたんだけどさ。慌しくって、ろくに食べれなかったんだよねー」
「そうそう。何でも、東の町に住んでいた人間がいきなり襲いかかって来たんだって」
エルシィさんの説明を補足したのは、元人間のラージマウスのマリー。
残りの僕らはその話を聞いて、頷いたり憤ったりと様々だった。
北にあるドラゴンが現れたっていう村に行く途中、僕らは一度はぐれちゃっていた。
その理由は、落とし穴みたいに地面が崩れて、地下に落ちてしまったんだ。
なんで落ちたかって言うと、仲間を助けるためにジャイアントアントが穴を掘っていたんだけど。
沢山掘りすぎて、つい地面に近いところを掘っちゃったみたいなんだ。
僕らが落ちた衝撃で横穴を幾つも壊しながら別々の穴に入っちゃって、誰がどこに行ったのか分からなくなった。
マリーとエルシィの二人はその時一緒に行動していたんだって。
「おいしそうじゃない。だってさ、エルフだよ、エルフ」
「エルフは肉を食べない代わりに野菜、そして何より果物を良く食べる。エルフが食べる果物料理、食べてみたいんだよね〜」
二人の夢見る表情に、他の魔物も釣られたんだ。
「果物料理。学ぶべき所がありそうだ」
「たまには果物三昧も悪くない。チーズがあればなおいいのだが」
「えっちが出来たらなんでもいー」
「弓で追い立てられなきゃ、別にいーよ」
前半二人はリザードマンのヴィヴィさんと眼鏡ラージマウスのアラーティア。
後半二人は、瓶から出てきたゴーストのオリエンティと、ハーピーのピピ。
二人は人間に化けられないから街中では一緒に過ごせないけど、僕らと一緒に旅をしてきた魔物の仲間。
こうやって見てみると、僕の仲間って多いね。
一人だけ反応が薄かったパルが、僕の肩の上から声を出す。
僕にだけ聞こえるぐらいの小さな声で。
「あの時逃げていたエルフって」
「うん。たぶん、そうだと思うよ」
パルは小さな体のピクシー。
今は肩に座っているけど、あの時は僕の胸ポケットに入って隠れていた。
あの時、僕らが北を目指している時に出会った、正確には僕たちの前を横切ったエルフの人たち。
あの人たちは大丈夫だったのかな。
それで、たどり着いたら、こうなったんだ。
「逃げろ逃げろー」
「果物料理が遠ざかるー」
「おのれ! 我が料理の道が、道がぁ!」
「諦めろ。料理の道は険しい。それよりも、今は生き延びないといけんぞ」
「えっちが出来ないよ〜」
「あんたは一番安心でしょ! あー、もう! 弓矢はいや〜!」
皆で森の中を走っている。
後ろからは弓を手にしたエルフの人たちが総攻撃をしてくる。
みんな強いから、まだ怪我をしていないけど。
段々とかすり傷が見えてきた。
「ないものねだりって奴だけど。こーゆー時は、ついつい頼りたくなっちゃうよねー」
「剣士としては有るまじきだが、な」
二人のリザードマンがそれぞれの方法で笑う。
僕は、首をかしげる。
「ほら。無駄口叩いてないで! そこ、3本飛んで来るよ!」
「そっちは2本〜」
パルとオリエンティは安全だから、後ろを見ながら飛んで来る矢を教える。
「さて。もう良いだろう」
「はいはいっと」
マリーとアラーティアのラージマウスコンビが足を止める。
「火よ!」
「風よ!」
「赤々と燃え上がて」
「木々を吹き散らせ!」
二人が同時に魔法を使う。
片方は炎の魔法で、もう片方は突風の魔法。
二つ混ざると。
「なぁ!? 火の風だと!?」
沢山の炎が火の粉を飛び散らせて、後ろから追ってきたエルフの人たちに降りかかる。
僕は横目で見て、思わず声を上げる。
「二人とも! やりすぎだよぉ!」
「問題ないよ」
「ただの脅しだよ、少年。少し
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