僕は目を覚まして、話を聞いてびっくりしてしまった。
あの時、ドラゴンの洞窟での出来事は、よく覚えていない。
いつの間にか気絶していて、目が覚めた後にドラゴンと話をしたんだけど、全然取り合ってくれなくて。
そして話している間に、新しく誰かがやってきたんだ。
あの二人は、確か。
「あ、そうだ。あの二人はどうしているの?」
僕が周りを見ると、眼鏡をかけたラージマウスの人、アラーティアさんが僕の方を見る。
「下の階だよ。加減はされていたようだが、負傷は君たちより重かったからね」
「無事だから良いんじゃないの?」
「あれを無事って呼ぶのは、問題があると思うけどね」
続いて金槌を腰に差したリザードマンの人が気楽に笑って、ちょこんと机に腰掛けたラージマウスが床の方に目を向ける。
エルシィさんと、マリーだ。
「なにやらショックを受けていたようだな。理由はわからんでもないが」
帯剣しているリザードマンの人も、事情を把握しているみたい。
このお姉さんは、ヴィヴィさん。
実は4人とも魔物なんだけど、今は人間に化けているみたい。
魔物らしい特徴の耳や尻尾が隠れている。
そうじゃないと、普通は人の町に入るなんて出来ない。
だからハーピーのピピと、ゴーストのオリエンティはこの部屋にいない。
「あれ? パルはどこにいるの?」
ピクシーのパルは、見た目が妖精みたいだから、人の町に入り込んでもあまり問題にならない。
だけど、部屋のどこを見回してもパルの姿が見えない。
「あー、パルちゃんねー。うん。黄昏ているてゆーか、なんだろーね、あれ」
「怒ってるんじゃないかな」
「あー、やっぱりそうかなー」
二人は何か知っているみたいだけど、僕には教えてくれそうに無い。
ヴィヴィさんを見ると、目をそらされた。
「ところでさー。『あの』二人、どーしようか」
「あんまり長引くようなら、私が見てこようか?」
マリーが机の上から降りると、アラーティアが止める。
「止めておいた方がいい。聞いた話が本当であれば、既にスイッチが入っている可能性がある」
「え、マジで?」
のんびりしていたエルシィさんが物凄く驚いている。
マリーも部屋を出ようとした足を止めて、アラーティアを見ている。
でも、僕には何のことかさっぱり分からない。
「どういうこと?」
「詳しくは話せない。確証が無い事は口にしない性分だ」
アラーティアは腕を組んで堅く口を閉ざす。
こうなったアラーティアから話を聞き出せないのは、僕も良く知っている。
アラーティアから聞けないなら、他の人に聞けばいい。
そう思ってみんなを見ると。
「パスー」
「あたしもパス」
「わ、わたしは修行をしてくる!」
マリーとエルシィさんは胸の前で×を作る。
そして、ヴィヴィさんが慌てて部屋を出ていった。
窓から。
「ちょ、ちょっと、ヴィヴィさんっ」
「すぐ戻る!」
そう言うと、ヴィヴィさんは走り去って行った。
「一体何なんだよ、もう! 皆してさ」
僕は今、買い物をしている。
みんなは魔物だから、あまり街中を歩かない方が良いので、買い物はいつも僕の仕事だった。
「そりゃ。再会出来て良かったけどさ。でも、何か隠しているよね、絶対」
僕はパンが入った紙袋を強く握り締める。
みんなは僕らが洞窟で倒れているのを見つけて、宿までつれて帰ってくれたんだ。
タイミングが合わなくて、僕らが洞窟に行っている間に村に到着して。
慌てて洞窟に駆けつけたら、僕らが倒れていたんだって。
この村に来るまでの事情は全部、ピクシーのパルから聞いて知っているみたい。
みんなもみんなで、はぐれてから色々あったみたいだけど。
「何を隠しているんだろ」
何があったのかは、僕が買い物から帰ってから教えてくれるって聞いたから、それはいいんだよ。
でも。
「話し合い、してるんだろうなー。じっくりと」
思わず空を仰いでから、ため息をついてしまう。
だって、この買い物リスト、幾らなんでも多すぎる。
この村を出たあとにも必要な買い物があるから、その分も纏めて買うって話だけど。
村中あちこち歩き回らないとないんじゃない?
村長さんにドラゴンがいなくなったこともまだ教えていないから、ついでに教えて来て欲しいって言われたんだけど。
ドラゴンがいなくなったら、村の皆は困るんだったよね。
あぁ、どうしよう。
村長さんに会いに行ったら、笑顔で家の中に迎えてくれた。
でも洞窟の中でのことやその後の事を話すと、村長さんは途端に困り顔になってしまった。
「そ、そうなのか。どこに行ったのか、わからないのかい」
「はい。気づいたらいなかったんです」
「倒された、というわけじゃないんだよね」
「はい。僕たち皆、倒されちゃったので」
「死体は、なかったんだね」
「はい」
村長さんは落ち込んでいるみたい。
今まで村を守
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