青い空、白い雲。
川が畑に流れ込んで水浸しになっている。
何でかな?
「ふぅ、ふぅ……さぁ、どうして、でしょうね」
ディリアはちょっと疲れているみたい。
「日が昇らないうちに叩き起こされて、その上延々と全力で飛び続ければ、誰だってこうなるでしょうね」
私はならなかった。
えっへん。
「私は初めて来たけれど。不思議なところね。寝巻きを着て歩いている人ばかりいるのね」
ふしぎ不思議。
ジパングは人も魔物も不思議。
「ところで、どうしてまたジパングに来ましたの?」
ジパングには色んな食べ物がある。
この白い『おにぎり』は、水浸しの畑から取れたおこめを使って作るみたい。
「ほれ。たんとおたべ」
「朝食を抜いてしまったので、とても嬉しいですわ。空いたお腹には、この『おにぎり』がとても染み渡りますわぁ」
ジパングの人はおおらか。
お腹が空いているって言ったらご飯をくれた。
あんまり食べると皆が食べる分がなくなりそうだから、ちょっとだけ。
「あまり食べ過ぎないようにしなさいよ。全く」
「ご馳走様でしたわ」
ごちそーさま。
「お粗末様。ほんと、よく食べたねぇ。よっぽどお腹が空いていたみたいだね」
私とディリアは見た目は子供だから、見た目よりは一杯食べたかな?
ジパングは色んな魔物がいる。
例えば、さっきからずっと見ている変なハーピー。
「何故来ないのかしら」
恥ずかしがり屋さんかな。
「もしかすると、道案内をしてくれるのかしら」
手を振ってみよう。
あ、飛んできた。
「速いハーピーね」
「貴方達。西の方から来た妖怪ね」
ようかい?
「ああ。貴方達は、魔物って言うんだったかしら」
ようかいとまものが一緒?
「この地域特有の呼び方よ。ところで、何の用事?」
「私も知りたい所よ」
えっと。
強い人を探しに来た。
「探してどうするつもりだ?」
えっと、戦う。
「戦ってどうするつもりだ」
んー、また戦う。
変な格好のハーピーがディリアを見る。
ディリアは手と翼を広げる。
「この子は強くなりたいのよ。で、城の中で相手になる魔物がいなくなったから、ジパングに来た。そうでしょ?」
うなずく。
「強き者、か」
ジパングにもドラゴンがいるって聞いた。
「ああ。龍の方々の事か。あの方たちは争いごとを好まないため、無理だと思うぞ」
残念。
「他に強い妖怪? ふむ。強い魔力を持つと言う事であれば、6本以上の尾を持つ稲荷の方々だろう。9本ともなれば、神と呼べるほどの高い力を持つ」
強いのかな。
「稲荷の方々も争いごとは好まぬがゆえ、な」
むー。
「鬼などは気性が荒いため、比較的自ら進んで争いごとを巻き起こすのだが。ジパングの妖怪は根本的に西と比べて温和といわれている」
「けれど、温和な者でも、訓練ぐらいはするでしょう? それに魔物は、生まれた時から戦う術を備えているわよね」
歩き方を知っているようにえっちの方法を知っていて、飛び方を知っているように戦う方法を知っている。
それが魔物。
「近くに龍の神社がある。案内するが、くれぐれも無礼の無いように」
難しい。
「そうね。風習の違いもあるから、何が無礼に当たるかわからないの」
「争いごとを起こそうとしなければよい」
とうちゃーく。
「着いたわね」
「……西の龍の方々は、こうも速く飛ぶものなのか」
「私たちが特別なのよ」
「おや。入間山の切風様、どの様なご用件でしょうか」
白いラミアが出てきた。
「体が白いのに服も白いのね」
「ええ。巫女ですから」
みこ。
「ああ。確かジパングのシスターね」
「はい。よくご存知で」
ディリア、物知り。
「彼女は白蛇という種族で、龍に仕える巫女をしていらっしゃるのだ」
「露と申します」
「私はドラゴンのディリアよ」
よろしくー。
「……ええと」
ジパングハーピーとつゆが私を見ている。
首をかしげる。
「貴方も自己紹介をしなさい」
ドラゴン。
「名前は?」
秘密にしないといけないから、秘密。
ディリアが私の頭を小突いた。
「馬鹿。それは真名の事でしょう。普段使う名前を言えばいいのよ」
普段の名前。
んー。
「これで貴方の名前を口にする人がいない理由はわかったけれど。……ちょっと、まさか忘れた、なんて言うつもりじゃないでしょうね?」
何だったっけ?
ディリアがまた私の頭を小突いた。
「叩けば思い出すかしら」
多分出てこない。
「はぁ。この子は粉塵煙る山の岩、リィーバよ」
よろしく。
「ええ、こちらこそ」
私の名前、リィーバだったんだ。
「私は小笹と申します。遠方より、はるばるお越し頂き、嬉しく思います」
龍の人はラミアみたいに見える。
でも、全然違う。
ゆっくり座っているだけなのに、強そうに見える。
小笹が私をじっと見る。
「私と組み手、
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