尻尾で床を叩く。
べしべし叩く。
「駄目ですよ。何と言われようとも駄目です」
私の前にはデュラハン隊長が腕を組んで通せんぼしている。
「何のために出かけるのですか?」
私より強い奴に会いに行く。
「駄目です」
ケチ。
「何故多くの実力者をわざわざ遠方から呼んでいると思っているのですか」
でも、もっと強い人は全然来ない。
「向こう様のご都合という物があるのです」
だから私が行く。
「駄目と言ったら駄目です」
ケチ。
床を尻尾でべしべし叩く。
「城を揺らしても駄目です!」
仕方が無いので巣の中を歩き回る。
普段から人の姿になっているから、尻尾もないし翼も無い。
それに尻尾で床を叩くと色んな人に怒られるから、今日も巣の一番高い所に行こう。
上に出る通路を目指して歩いていると、誰かに肩を掴んで止められた。
「貴様、人間だな?」
振り向いた先にいたのは。
……だれ?
「私か? この巣に招かれた客分だ」
お客さん?
こんにちは。
「ああ。……ではなくて。なぜ人間がこの巣にいる」
首をかしげる。
この人は人間みたいだけどサキュバスっぽいから、魔物かな。
「質問に答えよ!」
んー。
合ってるけど違う。
「どういう意味だ。はぐらかすつもりか?」
そんなことより、何しに来たの?
ご飯食べに来た?
「貴様、私を愚弄するつもりか!?」
この人は良くわからないけど、変な剣を取り出した。
んー、見たことのある剣。
あ、それって確か刀?
もしかしてジパングの人?
「ほぉ、良くこれが刀であると知っているな」
えっへん。
「では覚悟しろ」
頑張る。
このジパング出身の魔物の人は動きが速い。
色んな先生に戦い方を教えてもらっているけど、この人の技は凄い。
何だか元冒険者の人たちみたい。
「多少は腕に覚えがあるようだな。だが、これはどうだ?」
この人には羽は生えているけど、ハーピーみたいに飛べないみたい。
飛べないけど、よく動かしてる。
この人が羽を動かすとちょっと動きが変わる。
ふしぎ不思議。
尻尾はもっと良く使ってる。
壁に刺したり床に刺したりしてる。
尻尾を刺しているときは、動きが物凄く不思議になる。
よくわからない。
「ここだ!」
尻尾の先端が背中に当たりそうだったので掴む。
そのまま掴んで壁に投げようと思ったら、正面から刀が振り下ろされる。
危ないので掴む。
「馬鹿な!?」
そして刀を離して、腕を掴んで、壁に投げる。
「甘い!」
壁に叩きつけられる前に物凄く変な動きで、私の背中目掛けて攻撃してきた。
で、強めに蹴飛ばした。
尻尾から手を離すと、ちょっと遠くに飛んでいった。
「この方はジパングからいらした方です」
デュラハン隊長が教えてくれたんだけど、この人は私のお客さんだった。
「まさか、ここまで見事な人化けを行うとは、感服いたしてござる」
ござるござるー。
「しかし、はるばるジパングから来た甲斐がありました。これほどの兵に出会おうとは」
でも、もっと色んな人と戦って強くなりたい。
「拙者も助力致すがゆえ、共に研錬致しましょうぞ」
どれくらい?
「全力で、ござる!」
「あ、それは」
全力でやっていいの?
ほんと?
「ええ……む、どうかなされたか」
全力で、思いっきりやっていい。
「貴方はとんでもないものに火をつけてしまいましたね」
「え、いったい何が……あれ、拙者をどこへ連れて行くのでござるか? というか、引き摺らずとも自らの足で」
いっぱい体を動かした。
途中で色んな人が来たので飽きなかった。
毎日こうだったら良いのに。
「毎日この調子では、この城は貴方によって壊滅されてしまいますよ」
何時も背筋が伸びているディラハン隊長だけど、今はぐったりしている。
どうかした?
紅茶、飲む?
「ええ。頂きます」
「む? どうかしたのかや?」
動ける人が少なくなったので、今日は魔法の時間。
久しぶりに来たバフォメットの山羊先生を抱き上げる。
山羊先生は私より年上で、私より小さい。
「またやらかしたようじゃの。ん?」
一杯遊んだ。
「そうかそうか。……ん?」
遊ぼう。
「駄目じゃ駄目じゃ! ワシは戦いなんて野蛮な事はしないのじゃー!」
遊ぶだけだから問題ない。
「問題大有りじゃー! おまえさんと遊ぶというのはのぉ、人間の軍勢を相手にするよりも疲れるのじゃー!」
そうなの?
「そうじゃぞ! 第一、この城の主だった連中なぞ、お前の遊びに巻き込まれてすっかり参っておるではないか」
でも大丈夫。
「何がじゃ?」
料理作る人は無事。
「他が全滅じゃ、誰がこの城を守るというのじゃー!」
私。
「……」
みんな私がやっつける。
「才能に溺れてはおらんか?」
よくわからないけど、もっと強くなれるなら溺れる。
「……ふむ。
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