ここはドラゴンの巣。
大きな大きなドラゴンの巣。
色んな魔物が集まって。
色んな食べ物が集まる。
今日も軽く運動してからご飯を食べている。
魔界豚は量が多いから沢山食べる。
「お食事中失礼します」
首をかしげる。
デュラハン隊長がじっと見ている。
真面目で小さいデュラハンの隊長。
なぜかいつも一緒にいる。
何かあったのかな。
「この城に、今現在いくつかの問題が発生しています」
もぐもぐ。
「次の大襲撃までの戦力増強、他の種族との連携形成とそれに伴う不和、そして」
もぐもぐごっくん。
「最大の問題は」
ぱく、もぐもぐもぐ。
「貴方の食糧問題なのですよ」
ごっくん。
デュラハン隊長が言うには、私は沢山ご飯を食べ過ぎているみたい。
小屋クラスの魔界豚は8頭くらいなら簡単に平らげる。
つまみ食いでミノタウルスの部隊の食料が無くなったこともあった。
喉が乾いたのでお酒を飲んだら、樽が10個空になった。
「現在、マカイモの品種改良によりこの問題解決に取り組んでいる最中ですが」
もぐもぐごっくん。
「一向に自重するつもりの無いご様子ですので、苦言を申し上げたく」
隊長はごはん、食べないの?
「貴方が食べ過ぎて問題になっていると言っている傍から、何で食べるのをやめないのですか!」
お腹が空いたから。
「全く。従来の姿に戻ったドラゴンでも、もう少し大人しいぐらいですよ」
育ち盛りだから。
「……今のは聴かなかったことにして、よろしいですか?」
首をかしげる。
「まだ成長中なんて。この方は規格外にも程がある」
ぼそぼそデュラハン隊長が呟いている。
食糧問題。
私が食べたいだけ食べると、皆が困るみたい。
だから魔界で沢山狩りをしたら良いのかと思ったのだけど、それはそれで問題があったみたい。
せーたいけーがどうとか難しいことを言われた。
困ったので、狼先生に相談した。
「あんたはさー。お腹一杯食べた事って無いの?」
うなずく。
「え、まじで」
狼先生も沢山食べそう。
「いや、私は普通だと思うけどさ。大食いだとか元巨人だとか、あーゆーのには勝てそうにないよ」
でも沢山食べたい。
ご飯の話をしていたらお腹空いてきた。
「あんたの武勇伝は色々聞いているけど」
狼先生が呆れている。
「おやつは私の授業が終わってからにしなさいよ」
よし、頑張ろう。
まず最初に思ったのは、人間の町に行ってご飯食べつくし作戦。
すぐばれるし動きづらくなるから却下。
スライム種を成長させてスライムゼリーを食べる。
魔界豚よりぜんぜん量が少ないし、お腹一杯になる頃には大変なことになっちゃうらしいので却下。
「貴方は満腹感を感じた事はあるのですか?」
食べたーって気分にはなるけど。
元々ドラゴンはお腹一杯食べない種族。
程ほどに食べてずっと寝るの。
お腹すいた。
お腹すいた。
お腹空いたー。
おーなーかーすーいーたー。
「倉庫に備蓄が残っているか、確認させます。料理するので少々お待ちください」
生でもいいから食べる。
「いえ、それはさすがに」
ドラゴンは生ものまる齧りが食事マナー。
「いい加減になさい」
頭を叩かれた。
「ドラゴンの品位を下げないでくれませんこと?」
振り向いたらディリアがいた。
ディリアのお土産のお陰で、お腹が落ち着いた。
でも不思議。
今までお腹が空いて困る事なんて無かったのに。
最近、とてもお腹が空く。
ドラゴンは沢山食べても強くならないみたいだけど。
私は他のドラゴンよりも小さい。
もしかしたら沢山食べたらもっと強くなるのかもしれない。
それなら沢山食べないと。
今よりももっと強くなるために。
出来る事を全部やろう。
武器も魔法も、ややこしいことも成長も。
今の私にとって。
強さよりも大事な物は無いから。
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