深い洞窟は朝日が昇るという概念がない。故に起床は常にヘルハウンド達の正確な体内時計が頼りである。一応ランプなどの文明の利器が無いわけでもないが、人間程切迫した生活をしているわけでもないので時計は必要ないのだろう。
レンは少しもまぶたの重みを感じずに目を覚ますと、同じハンモックの上に、小さな子供が自分に寄り添って寝ているのが目に入る。
そう。昨日は自分がつがいを手にする番で、仲間を反面教師にし、今までの知識で自分こそは優しく接そうとしたのだ。
しかしどうだろう。昨日を振り返ってみると、突然強引にフェラで包茎を剥ぐ、恥ずかしいことを言わせる、足コキをしながら乳首責めする。
(なんで昨日の俺はそんな事を...!)
今思えば、変に理性と本能の折衷などという馬鹿げた事をしたのがいけなかったのだ。あれから全てが狂った。
(あんな事をされた上に俺の事をママと呼べだと...ックソ!我ながらヘルハウンドらしい身勝手さだぜ!)
彼に嫌われて居ないだろうか。いや、100歩譲ってそれはない。仮に強引に犯しても勝手に快楽に溺れてくれる。
問題なのは自分と仲間達との差が、ひょっとしたら無いのではないか、という事だ。所詮は本能に逆らえない、一匹のヘルハウンドに過ぎないのでは無いか。それは認めたく無いのだ。
今日こそは優しく接しよう。と考えている内に、当事者が目を覚ます。
「んん...えっとぉ...そっかあ...。僕は洞窟で連れ去られてぇ...。」
若干記憶の混乱があるらしい。目を覚ましても、暫くボーっとしていた。
そして昨日の出来事を完全に思い出すと、顔を耳まで真っ赤にして、
「...おはようレン...いや、ママ...///」
と、上目遣いで挨拶した。
その姿に彼女は母性本能をときめかせたが、冷静になって、
「いや...それはあの時の設定みたいなもんだから...。普通にレンでいいよ。おはよう、ニコ。」
と、照れながら挨拶した。
少なくともまだ『溺れていない』事を確認し、心の中で一息つこうとした。彼が次の言葉を言うまでは。
「...いやだ。レンは僕のママなんだ。これからずっと。」
「え」
驚いた。ニコの目を見る。確かに溺れていない。正気の目だ。この状態でそう言うと言うことは、これが純粋な意思である事をレンは理解した。
思えば人身売買で炭鉱に働かされている子供は母親の顔すら覚えていないと聞く。労働のために買われ、それだけの為に生きていたようなものである。
その為、彼にとって彼女のように甘えられる存在は、渇望していた存在なのだ。
「僕、レンをママって呼ぶの、なんとなく、うまく言葉にできないけど、安心するんだ。だからさ、レンもママでいてくれるよね?」
彼女は、最初からプレイのつもりだったが、これから一緒に過ごす相手に、本気で取られてしまうと、断りづらくもあった。
ただ、後悔していた折衷的快楽を相手側から求められることは、それが強要で無いという証拠である。逆に断ってしまったら、それこそ自分の主義に反すると考えた。そのため、レンにとってもまんざらでも無い。
彼女はハンモックから起き上がると、左腕でニコを抱き寄せ右腕でポンと胸を叩く。
「ああ!任せろ!俺がお前のママになってやる!楽しい時は一緒に遊んでやる!悲しい時は寄り添ってやる!危ない時は守ってやる!」
ニコはそれを聞いて、明るい顔になった。ただ、まあ大層な事を言った彼女だったが、
心中では
(本人の合意があるなら無理矢理じゃ無いよな。うん。嫌がってないもんな。俺は他の奴とは違うんだ。うん。)
と、自分の根本的な主義への言い訳をしていた。
「...ママ?」
「...ああ、ごめん!ちょっと考え事してて...いやなんでもない。とにかく、朝飯にしようぜ。」
両頬を叩いて頭を切り替え、食糧貯蔵庫へ向かう。ただ、昨日はニコの分の食糧も消費した為か、残り少なくなっていた。そろそろ補充をしなければいけない。
なので狩りをしなくてはいけないわけだが、それをする為には当然エネルギーがいる。残った食糧は干し肉三枚、果物一個だ。
最低でも三枚食べないと力が出ないレンは、ニコの朝食をどうしようかと迷った。
勿論食後すぐに狩りに行って、さっさと戻ってくることも不可能ではない。しかし、お腹を空かせた子供を放置することは彼女の主義に明らかに反している。
もっとも現実的な問題として、彼の童貞をまだ奪っておらず、ツバをつけているとはいえ、つがいがいない仲間に横取りされるかもしれない。
そうあれこれ考えていると、自分の乳が未だに張っていることに気が付く。薬の効果はそれなりの永続性があるようだ。
「ニコ。とりあえす、ほらよっ。食い終わったらママのところに来い。あと、外へ出るからそこの服を着ろ。」
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