「にいちゃ〜ん」
「や、やめろ近づくんじゃない」
「え、なんでぇ」
ニヤリとした表情、悪魔だ。妹が悪魔になってしまった。
「いきなりこんな」
青い肌に悪魔の羽、最低限、胸と下半身を隠す程度の服、手には黒いグローブのようなものを付けて、足には黒いソックス。
にゅるっと悪魔の尻尾が俺の腕に巻き付き拘束される。
「にげちゃだめ〜」
「くっ、は、はなせ」
ゆっくりと近づく沙名、妹なのに実の血の繋がった兄妹だったのに……。
更に顔が近づく、あの無邪気で可愛かった妹が……。
「口あけて〜」
「は、はなせ、やめるんだ!!」
ついに押し倒されて俺に跨ってくる沙名、青い肌にはうっすらと汗がにじんでいる。この為だけに準備をしたのだろう。
「にいちゃん」
息がかかるまで顔を近づけて沙名が無邪気に俺を呼ぶ。軽い体重。はねよけようとしたがそれではこの小さな悪魔のおもうつぼだ。
「ふー、ふー」
「っく」
息がかかる。せめてもの情けだろうか。
ニヤリとほほ笑む沙名の手が近づく。
ま、まさか。
「んー」
口が強引に開けられる。俺は最後の抵抗で目を閉じた。
は、入ってきた。どろりとした感触と口の中を流れ込む生あたたかい液体。
「あああああ」
「ふふふふふふ、あははははは!!」
勝ち誇ったように沙名が笑う。
なんてことだ。
俺は。
沙名の
手料理を食べさせられてしまった!!!
「むぐぅぅぅぅ」
「あれ?」
沙名が俺からどいて慌てだす。
「にいちゃん!」
「ま、まずい〜!」
「そんな〜」
「げほっ、ほらやっぱり、デビルになったからって料理がいきなり上手になるわけないだろ……」
「だって」
実の兄妹なのに、兄の俺は料理が上手。いつも手料理をふるまって妹を楽しませてやっている。
それに比べ妹は人間の時から料理が下手だった。そうまさに悪魔の味だったのだ。
レンジは爆発するし。
フライパンであらゆるものを炭を変えるし。
炊飯じゃーは飛んで空の彼方へ旅立つし。
冷蔵庫(仮)のバナナは何故かゲル状に変化する始末。バナナは常温保存だって言ったのに!
まな板のキャベツはキャベツじゃなくなった。作画ミスとかそんな甘っちょろいもんじゃなかった。キャベツが月になったんだぜ? どうなってんだよ!! 半端ないって!!!
さて、話題は逸れたが妹がデビルになってから早数か月、色んな事があったが、妹が
『デビルになったんだから料理が得意になったに違いない。えっへん』
とか適当な事を言い出したので、俺は完成するのを一応待っていた。奇跡を信じたのだ。
ああ、堕落神様どうか、不器用な妹がまともな料理を作ってくれますように……。
しかし、台所から聞こえてきた音ですでに察知した。
これは悪魔の所業であると、逃げ出した俺はあっさり捕らえられ、沙名の悪魔的力でねじ伏せられて無理やり料理を口に突っ込まれたのだ。
本当に恐ろしかった。熱いスープならなんとか飲めたかもしれない。しかしこいつときたら、ふーふーして冷ましてから流し込みやがった。俺の猫舌を把握されていたのがまずかった。くそっ。
せっかくの食材がすべてパーだ。さすが、デビル。俺の堕落神への願いは叶わなかった。
「この悪魔め!」
「ひどーい」
「沙名が食材使いきったから、明日からどーすんだよ飯!」
「♪」
あ、やばい。
「えー、あーそうだー。じゃあにいちゃんから精をいただけばいいじゃん!」
「ま、まさかお前」
「えへへ、にいちゃ〜ん」
っく、尻尾が絡みついてきやがった。
がばぁっ!!!!
「ああああーーーーーー!!」
「にいちゃんの料理は美味しいけど、にいちゃんはもっとおいしいもん」
こうして俺は性的な意味でも妹に食べられそうです。
「いだたきまーす」
堕落神「やったぜ♪」
リリム様「計画通りね〜」
兄の願いは届いていた。『妹の料理が上手になりますように』沙名は文字通り、兄を性的な意味で料理して美味しくいただくのがうまくなっていったという。
堕落神への願いは場合によってこうなることを忘れてはいけない。
性的な意味で……。
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