今年も猛暑の中、コミック販売会(略してコミ会)が開かれた。台風が直撃かと思われたが、不思議な力でソレは阻止された。
「今年こそはダーリンをゲットするわよ!!」
「あたしだって!!」
「臭う。童貞達の臭いがするわ!!!」
薄い本よりも未婚の男性を狙う魔物娘達が紛れ込んでいるとは思わないだろう。
コスプレ広場、毎年レベルが上がり角やら尻尾が生えてても『よく出来てるレベルで問題にはならない』
魔物娘がこの国に現れて数年、未婚の男性は減少傾向にある。
それでも男性のとりわけ『二次元嫁』を自称する者たちを婿にするというのは魔物娘の中でも、かなり難易度が高かった。
なにしろほとんど家から彼らは出ない。出たとしても女性に声をかけられたら、ものすごい勢いで逃げてしまう。ユニコーン等の一部の魔物娘は成功して性交していたものの、まだまだ童貞狩りは厳しいのが現状だった。
そこで彼女達が目を着けたのが「コミ会」である。彼女達は必死だった。コスプレ関係の本を読み、ゲームや漫画を読んでちゃんと原作を理解。アラクネに衣装を発注。
「完璧だわ……」
そこにはキメポーズをして鏡に向かってにやける多くの魔物娘が居た。
しかし、現実は甘くなかった。
「ちぃーっす。うはっw 彼女すごいねぇ。ちょー似合ってる。どう3でホテルでハメ撮りしない??」
「ねえねえ。あんなキモいオタクよりも俺の方が気持ちよくさせてやるぜ」
実際に声をかけてきたのは、チャラい連中だった。名刺にはAVの会社、18禁同人サークル等など、あまりにもレベルの高いコス、しかもみんな美人。企業や大手サークルが目をつけるのはある意味当然だった。また、勘違い野郎(オフパコ狙い)も群がる。
彼女達が期待をしていた童貞君達は、写真すら彼らに邪魔されて撮影できない。
「キモいオタクどもは消えろ!」
スタッフに聞こえない声で牽制していた。さらに彼らは彼女達をキモいオタクから守るヒーローを気取っていたからたちが悪い。
(どうしましょう。このままじゃ、私たちの目的が……)
騒ぎを起こすことも出来ず、必死に撮影やら出演の以来の名刺を渡されて、身動きができない。
やがて、彼女たちから目的の男たちが遠ざかる。
(くっ、なんてこと、こんな人間ばかり寄ってくるなんて完全に予定外だわ)
(童貞いない童貞いない……くすん)
それでも彼女達は諦めずに必死に練習したポーズを決めて写真撮影に応じていた。
真面目か!
「「第◯◯回コミック会を終了しまーす」」
888888888888
虚しく響く拍手
(((終わった)))
「オフパコいこーぜ!」
「この後パーティするんだけど」
「いくら払えばいい? HAHAHAHA! 10でも出すよ。大丈夫目線入れるし、売り上げは半分こだぜー」
終わっても彼女達の回りには期待と股間を膨らませた連中が取り囲む。
「……るさい」
「あ?」
「うるさい!! なんだお前達は、私たちは色んな人たちにこの格好を見て欲しかった!!!」
「そーだ! そーだ!!」
「童貞をよこせ!!」
彼女達がキレたのは当然だろう。
確かに将来の婿を探しに来た。でも、たくさん努力してがんばって漫画やアニメを見て『彼女達も作品の面白さに気がついた』そして、同士達を見つけて楽しもう! という目的にそれは変わっていた。
しかし、現実はどうだ? ろくに作品も見てない連中が集まり二言目には「ヤる」ことしか頭に無い。
実際◯◯のこのポーズどうかしら? と言っても彼らは知らない。ただかわいいね。いいね、もっと股広げてよ。胸寄せてと、全く作品とは関係のないポーズをとらされて写真に撮られる。
いくら人間が好きな魔物娘といえど、悲しかった。
彼女達は無言で更衣室へと行く……。人間に擬態するためだ。さすがに彼らも更衣室までは来ないだろう。
出待ちされてもわからないように完全に別人に変わる。
そして、彼女達は会場を後にした。
「はぁ……今年のコスプレの子たちかわいかったなぁー」
「うん、撮影許可の声を掛けられなかったから、写真とれなかったし」
「せっかく勇気だして、家から出てきたのに」
「やっぱり二次元は裏切らない」
「「「そうだな」」」
「童貞の臭いがする!!」
「「「ま!?」」」
そして、彼らと彼女達はばったりと(実際には魔物娘達が待ち伏せしていた)出会った。
「ねえねえ、私たちと◯◯について語りませんか? その紙袋◯◯ですよね?」
「あーー、そのTシャツの子わたしも好き」
あっという間に取り囲む彼女達。
というか目が怖い。そりゃようやく見つけたターゲット達、しかも、持ち物や着ていたものが正に彼女達が合わせで着ていたコスプレ。
(完全勝利
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