かみなりの夜に

「(あ、ニンゲンだ!!)」
 アタシは見つけた。

 みんな他の部屋で“遊んでいる”


 アタシも早く遊びたーい。




「? 留守かそれにしては不用心だ」
 男は突然の雷雨を逃れてとっさに近くにあった屋敷へと逃げ込んだ。
 ドアノッカーを必死に叩いたが返事が無い。

 ドアノブを回すと鍵が掛かっていなかったので失礼を承知で入った。




「(わーい、やっとアタシも楽しめるんだぁ……。早くコッチに来ないかなー)」

 どうしよう。おそってもいいんだけど、ちょっと遊びたいなっ。
 みんなもそうやって遊び相手を捕まえていたみたいだしね。
 うんうん。

 うーん、あ、ちがう部屋にいっちゃう!



「誰かいませんかーー!!」
 男が叫ぶが外の雷や雨音のせいで他のモノ達には幸い気が付いていない。
 もっとも“アソビ”に夢中なので気が付かないだけかもしれないが……。


「(よかったー。そうそう、こっちこっち……、んしょんしょ、カギを閉めてー、おいでー♪)」



「? 開かない。困った、何か気配はするんだけど、返事もないし、天井の灯も消えてるし」
 男は手持ちのランタンを頼りに屋敷内を歩くことにした。
 雨で濡れたマント等は、丁度近くにあった棒にうまく掛けることができた。

 しかし、気配はするのにおかしい、照らすと床は綺麗だし、確かに生活感がある。


「こっちも開かないか……」
 暗闇で更に見えなかったが、どうやらこの屋敷は大きいらしい。
 雨や雷が止むまでせめて、この屋敷の人に挨拶をしたい。雨をしのげるなら玄関でもいい。

 でも、真面目な男は何かに誘われるようにどんどん奥へと向かってしまった。


「(よしよし〜、ぜんぶ先回りしていいかんじだよ。いいよー。ほらほらーおいでーー♪ こっちだよーー)」

 アタシは楽しかった。
 すぐに飛びついて遊ぼうと思ったけど、こうやってどんどん人間が思い通りに動くのが思いのほか楽しい。

 それにしてもさっき、床を這いつくばって何してたんだろ?


 落とし物??


 ま、どーでもいいか〜♪



「ここは食堂? ……でも、食事をした形跡がない」
 男は首を傾げる。
 正確な時間はわからないが、夕食が終わって、まだ寝るのには早い時間のはずだ。


「(やっぱりお腹が空いてるのかな〜、えいっ!)」
(ノ゚ο゚)ノ

「ん? 机にパンが……いつの間に、いただくか、お金はあるし。ちゃんと訳を説明すれば大丈夫だろう」
 男はランタンを置いて、ひとまず食事をすることにした。
 硬いパンだったが、腹は膨れる。

「まさかあんな天気になるなんてなぁ……ごほっごほっ!!」


「(あ、大丈夫かな、えっとお水お水!! はい、どうぞ)」
(ノ゚ο゚)ノ

「あれ? 木のコップなんてあったっけ?? しかも水が入ってる」

 ものすごく不自然なことが続いているが男はその水を飲んだ。
「危ない所でした。あわてて食べたから喉につまるかと」


「(ふう、びっくりした。というかあのニンゲン面白い、一人ごと多いし)」


「ごちそうさまでした」
 男は何もない空間に向かってお辞儀をする。お礼は改めてこの屋敷の人に出会ってからにするようだ。


「(どういたしまして♪)」

 うーん、わわわ、そっちはダメーー!


「ん? 物音がしたと思ったけど気のせいか」

「(ふう、あぶないあぶない)」

 そうそう階段を上がってねー。どうもあぶなっかしいなー。さっきも変な所で転びそうになってたし。

 なんか動きがおかしい。
 確かにほとんど真っ暗だけど。



「物音がするけど、もうこんな所まで入ってしまったし、主神よ。愚かな私を許してください」


「(え? あの男の人って神父か何かなのかな??)」

 祈りをささげる男を見て、わくわくしているモノがいるとは知らずに男は尚も言葉を紡ぐ。


「(うーん、長いなー、まだかなー、おっと、よだれが)」

「この部屋でしょうか? 灯が下から漏れている気が」

「(うわわ! きたよきたよ。どうしよう!!)」


「ん? あの置物は??」

「(ずこーーーー!!!)」

 アタシが、まだかー、まだかーと待ち構えて、もう色んな意味でじゅんびばっちりだったのにーーーーー!!! もうなきそうだよ……。

 うーーーー、主神の神父だろうがなんだろうが、アタシには関係ないよね。


「ほう、これは珍しい」
 男はランタンをかざして廊下に飾ってある像に夢中だ。どうやら主神の関係の物らしい。とうとう、ルーペらしき物を取り出してじっくりと見始める。


「(うーーーー、もう、後ろからがばーーーって、でもでも、ベッドはふかふかだしーーー、せっかく着飾ったしーーーー、早くーーーー!!!)」


「おっと
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