あっちい
毎日、毎日、なんなんだこの暑さは、温度計はもう見ないぞ。
さて、草刈りも終わったし家に入るか、不思議と作業を終えると汗が噴き出す。
俺は風呂に入る前に、彼女の部屋を一応ノックした。
「はいってまーす」
なんとも間延びした、のんびりとした声。
いや、居るのは知ってるし。
がらっ
涼しいというか、冷風が俺の体全体に当たる。てか、寒っ!
おいおい、どんだけ冷やしてるんだよ。
「なんだよー。せっかくのんびり、涼んでベッドの上でころころしてたのにーー、早く閉めろよー!」
ゲイザーちゃんがエアコンをパワーMAX+扇風機、ベッドでごろごろ、しかもTシャツ一枚という。
まさに堕落した姿で俺を睨みつけてくる。睨みつけるといっても触手の目だが……。
「おい、虫が出るから“お願い”って言って、せっかく俺が汗水垂らして、この炎天下の中、庭の草刈りをしてたのに……、せめてパンツくらい履けよ」
「ごくろーさん、というか早く閉めろよー。部屋の温度があっつくなるじゃん」
パンツのことは無視かよ。と思いつつも、だんだん腹が立ってくる。
「ゲイザーちゃん」
「んだよー」
だめだ。この部屋にいたらただでさえ堕落してるゲイザーちゃんがもっとダメになる。
「正座」
「は?」
俺はベッドの前に近づいて、ゲイザーちゃんを見る。触手の目もなんだか眠そうにしてるし、これは流石に注意しないと。
「やだ。まだ涼しい部屋で寝る! もう、うっさいから」
「な!」
「くふふ、わたしに逆らおうなんて、100年早いし」
油断した! てっきり触手の目ものんびりセーフモードだから『暗示』を掛けられるなんて思ってなかった。
「お前も堕落して、のんびりしようぜ〜。ほらほら」
ゲイザーちゃんの『暗示』で俺はフラフラと彼女が眠っているベッドへと引きずり込まれそうになる。触手までが体にまとわりついてきて、つまりのところピンチだ。
「げ、ゲイザーちゃん」
「くふふ、ほらほら〜、こっちは涼しいぞー」
そしてニヤニヤと赤い目で俺を楽しそうに見つめて両手を広げる。
おのれ、このまま堕落してたまるか、というかシャツがずれてゲイザーちゃんのちょっと膨らんだ胸とか見えそうになってるし。
「うぉぉぉぉ!!!」
「な、なんだぁ」
いままでも、よくこのパターンでやられていたので、ちょっとは学習した。しかも、今は本気モードのゲイザーちゃんじゃない。
『暗示』も100%じゃなければ、なんとか。
「うう、身体を冷やし過ぎた〜。ちからがでない〜」
「ふふふ、残念だったな。だらだら生活をしてるからそうなるんだ」
ゲイザーちゃんはショックらしい、『暗示』もそうだが、自分の思い通りにならないと、とにかく機嫌が悪くなる。
「むむむぅぅぅ!!!」
「正座!」
「わかった。ようきゅーはなんだ!」
ベッドの上であぐらをかきながら、それでも偉そうに聞いてくる。
「あのさー、この際だから言うけど、ゲイザーちゃん、暑いのはわかるけど、最近、家事とかぜんぜんやってくれないよね」
「うぐっ」
よし、効いてるぞ。いい機会だ。この際ちゃんと言うべきことは言わないと。
「まあ、外の仕事はいいとして、せめて、この部屋! それにその恰好!! 俺でも流石にこの部屋はないと思う。服とかそれに下着まで片づけないで置いてあるのはよくない」
「うぐぐぐ」
そうなのだ。涼しい部屋ならともかく、ゲイザーちゃんの部屋は、足の踏み場もないくらい服とか物とかが散乱してる。
せっかく、その、かわいいのに、いろいろ台無し。
「あ、後で片づけるからー」
「それ昨日も言ったよね」
ぴちゃりと言う。
俺は今日、鬼になる。イライラしてるのは暑いせいもあるけど。
二人で住んでいるんだから、やっぱり言いたいことは言わないと。
「むぐぐ、わかった。わかったからさー!!」
ようやくベッドから立ち上がったゲイザーちゃんが俺を追い出すように背中を押す。
「ぴっかぴっかにしてやるから覚えてろよ!!」
舌をべーっと出しながらとうとう俺を部屋から追い出した。
よしよし、作戦はうまくいったぞ。なんだかんだ言ってもやる時はやるはずだ。
多分。
「あいつめー、このわたしが本気になったら、こんな部屋なんてあっという間に綺麗にしてやるっ!!」
どかどかと足を広げて歩きとりあえず。
部屋を見渡す。
まずは服を片付けよう。あとはいるものといらない物を分けて。
うんうん、よしよし。
ん?
「お、服の下からまだ読んでない漫画発見!! ちょっとくらい休憩してからでもいいよな」
そう言ってゲイザーちゃんはちょこっと服をタンスに押し込んでから、ベッドにまたころころと横になって漫画を読みだした。
「う、ちょ
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