今年は涼しいよ! おいでよドラゴニア
という広告が新聞に載っていた。
魔物達が住む国との国交が成立して、早数年、この国からも魔物達の世界へ観光旅行に行くのも珍しくなくなってきた。
普段ならそんな広告は特に気にしないのだけど、バッフォンのアプリで今日の県内の予想最高気温を調べる。
41度
は?
うそだろ。
俺はチラシに載っていた番号に電話を掛けてみることにした。
しかしながら、なにかと暑い気がする『竜皇国ドラゴニア』(ドラゴンの炎のイメージ)、今年は涼しいというが、どういうことなのだろう。
それにしても41度は無い。
「はい、お電話ありがとうございますっ♪ こちらはドラゴニア観光案内所の、わたくし、リティアと申します」
活発そうな子が電話に出た。いったい仕組みはどうなっているのかわからないけど、ちゃんとこの国から直接ドラゴニアへと繋がったらしい。
「お客様?」
「ああ、ごめんごめん。えーと、今朝の新聞の広告を見たのですが」
「はい、ありがとうございます。そうなんです!! 今年は色んな国から涼しさを求めてこのドラゴニアにたくさんの観光客が訪れているんです!」
なるほど、電話ごしだけど、確かに受付だろうか? 後ろからホテルの予約とか、そんな声が聞こえてくる。にぎやかそうな職場だ。
「あの、でも、俺、男ひとりなんです。はじめて行くしどうしたらいいかわからなくて」
「なるほど、男性の方、一名ですね。大丈夫ですよ。その為の電話ですから、国名はこちらで表示されてますので、あとは郵便番号を教えてください……それと」
あとは流れ作業だった。
住所、氏名、あと身分証明書(これは後でもいいとのこと)、料金プランをリティアさんに伝える。
滞在期間も自由でいいらしい。
会社もあまりの暑さで、みんな数日おきに交代勤務体制になった。
そもそも有休がたっぷり溜まっていて、強制的に消化するようにと言われてたので丁度いい。
はじめての観光、しかも、ドラゴンが居る。
そして、涼しい国!!
なんだかわくわくしてきた。
「はい、確かに確認しました。後程“迎え”が行きますので、ご利用ありがとうございます!」
ん、迎え??
旅行のチケットとか案内パンフレットのことだろうか??
会社に念の為確認したら。むしろ有給を使ういい機会だ。と言われた。まあ、帰ってきたら激務だろうが、それよりも初旅行だ。
着替えとか、色々用意しなくては。
それでだいたい準備が済んだ時だった。
ピンポーン!
はて? 何か荷物なんて頼んでいただろうか?
液晶画面を見るが誰も映っていない? 暑さのあまりでこしょ
ピンポーン!
とりあえず。玄関に行ってみることにした。
「あ、あのー、 様のお宅はこちらですかー?」
ん? なんか子ども子の声が聞こえるぞ?
がちゃ
「え?」
そこには少女。
と、いってもドラゴンの翼、手足も鋭い爪、そして尻尾。
銀髪の長い髪をサイドテールにしている。ピョコっとみえる角も小さい、……胸はまあ年相応なのかな?? 瞳は薄いブルー、というか全身のドラゴンの皮膚部分が、すべて瞳と同じ色だった。(ドラゴンの足や手、羽以外は肌色だ)
見るからに涼しそうな色。
服は濃いブルーのワンピース、子どもがよくピアノの発表会等で着るような服であちこちに白いリボンが付いていて、とてもよく似合っている。
それと、新聞広告に載っていた『ドラゴニア観光案内』のマークが胸の所に刺繍してある。
案内所の制服なのだろうか?
「あ、あの、ドラゴニア観光案内所から来ました。ボーラと申します。種族はドラゴンです!」
ちょっとおどおどしているけれど、かわいい子だ。
というかこんな子どもが直接家までくるとは……、確かに電話で迎えといっていたけど、まさかのまさかだ。
「ああ、ごめんごめん。ちょっとびっくりしちゃって、えっと、健康保険証でいいのかな?」
「あ、はい、それで身分の証明は大丈夫です」
良かった。車の免許を持ってないから時々、変な顔をされるのだけど、問題なかった。
そしてボーラと名乗った子は、電話(?)で何かをやりとりしているようだ。スマホみたいだけど、違う。やっぱり違う世界なんだなー……。
「はい、では、ドラゴニアに案内しますので、お荷物とか忘れ物はありませんか??」
「はい、大丈夫です」
俺の周りが光に包まれる。
え?
「転移魔法です。ドラゴニアとは別世界になりますので、といってもあちらから座標を指定して、……えへ、実はわたしもよくこの仕組みはわからないんですよ」
ボーラはにこにこ笑いながら言う。
まあ、魔物とか町で見かけるし、こ
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