食べちゃうぞ!

 どうも、元サラリーマンで現代にいましたが、流行は去ったようでまだ去らない、『異世界』へと行ってしまったようです。


 さて、問題なのは大抵の異世界行きの場合、なにかしら特殊な能力が備わっていたり、容姿が変わってかっこよくなっていたりとボーナス的な物がついてきて。
 俺、つえー、→無双とか。
 次々と女騎士や亡国の王女とか、魔女とか、が都合よく表れて、ハーレムでウハウハな物が多いです。
 まあ、たまたま読んだラノベ等がそうだっただけかもしれませんが。



 降り立った地は、まず山。

 格好はサラリーマンのまま、しかもまだ電池が生きていたバッフォンの鏡アプリで自分の容姿を確認したけど、そこには冴えない顔の僕。何か魔法が使えないか、メ〇とかパルプ〇テ、ケア〇、ファイヤー、バハムート召喚!!! カメハ〇ハ、ゴム〇ムののびーる手、堕天使ヨ〇ネ召喚!! 明日もかんばるゾイ! とかやったけど、一向に何も起こらない。

 とりあえず、外回りの営業中に飛ばされたので鞄に入っていたコンビニのあんパンをもぐもぐ。
 というか、これが何気に最後の食料。







 詰んだ!


 スタートが町じゃない時点で終わりだよ。町で、今身に付けている物でも売れば多少のお金にはなったはずだし、あと、かわいい、後のヒロインとのドラマチックな出会いのイベントがあったかもしれない。

 なんで山?

 某リ○ロでさえ、スタートは町だったのに。
 
 あの〇キちゃんでもいいから、居て欲しい。むしろかもーん!!
 ぼくはーーーひとりだーーー、なかまをもとめてるーーー♪
 むなしく響く声、てか、僕オンチだわ。ト〇ちゃんごめんなさい。






 数時間後

 散々アホやったけど
 見渡す限り何もない。なんでここが異世界かわかったかというと、さっきドラゴンらしき生物が飛んでいった。それに見慣れない植物。もちろんGPSも使えない。夢とか色々疑ったけど、現実を受け入れた。

 それにしてもさっきのドラゴン的な物は見間違いじゃなければ、女性だったような気がする。
 も、もしかして、モンスター娘さんとかいるのか!? そっかそういうことか!!
 と浮かれていたのが悪いんだ。




 僕は足を踏み外して崖から転落し


 思えば短い生涯だった。
 女性との出会いなどなく、会社では係長になったものの、部下と上司との板挟み。実家に帰れば結婚しろ、結婚しろの嵐。友人達からは私たち結婚しましたという地雷年賀状が来るくらい。あーもう爆発しろよ!!
 
 というか一向に地面に落ちない。
 せっかく走馬灯のごとくどーでもいい思い出が再生されたのに。



「しょくりょーみーつけた
#9829;」
 なにやら、少女の声とフワッと空中で暖かいものに抱き締められた感覚。

 僕はわけもわからず。下を見た瞬間にあまりの高さ故、気を失った。












「おきたー。ふふふ、怪我はないか人間
#9829;」
 目覚めると草の上、ふわふわしてるし、草の良い香り、そして、僕を覗き込む、え、獣耳? ピンク色の髪の毛をツインテールにしてるけど、癖っ毛なのかツンツンしてる。あと、首回りには白いもふもふしてそうな毛、手や足はまさに獣そのもの。ドラゴンみたいな翼。あとやたら大きな長い尻尾、先端が膨らんでいて変わっている。

 そして、顔は一言でいうと美少女。
 アイドルとか詳しくないのでわからないけど、まさに人間離れした可愛さをもっている人外の少女。

「か、かわいい」
「へ、何いってるの人間、んと、おにーさん?」
 首を傾げてしっぽがうねうね動いてる。その度に草の香りと共にこの子の香りだろうか、なんか花みたいな甘い香りがする。



「おにーさんは大事な食料だから、早く元気になるんだぞ
#9829;!」
 え? 食料ってやっぱりそういう展開なのか、かわいいけど、この子は人間をばりばり食べちゃう系の正に肉食系少女!

「た、食べないで。僕美味しくないよ!」
「えー、美味しそうだよぉ
#9829;……はい、お水」
 食べる気まんまんなのか、よだれでてる。と思ったら、木のコップの水を飲ませてくれた。あれ?

「おいしい?」
「うん、美味しいありがとう。名前は?」
 僕がそう聞くと少女は改めて立ち上がってなにかしらのかっこいい的なポーズをする。

「ふふふ、よくぞ、聞いてくれた。われこそはマンティコアのティアナだ! おにーさんは記念すべき最初の食事だよ
#9829;!!」
「え、まさかの初お食事、ごめん、僕用事を思い出したので」

 ぎゅーーーー
#9829;

 と思ったらティアナが抱きついてくる。

「だ、だめだよ。逃げたら食べられない」
「な、やっぱり力がある。うぬぬ!!」
 しばらくじたばたと抵抗
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