※注意
フランツィスカ様が出てきますが、独自解釈等で皆さんの想像するキャラと違う可能性があります。
それを踏まえた上でお読みください。
何かありましたら、感想等でお知らせください。
今回はあえて、ハートマークは使いませんでした。
ここはレスカティエ城、フランツィスカ第4王女の部屋。
と言っても訪れる者はごく限られている。
姉達のように聖なる力も、魔力も、力もない彼女は、元々体が弱かったこともあり、ほとんど自室から出ることはなかった。
しばらく、二人の少年と少女が頻繁に訪れていたものの、それも今は昔。
しかし、そんな孤独の中の王女にも、ほんのひと時、支えていた男の話はあまり知られていない。
こんこん
「王女様、よろしいですか?」
「ゴホッ、ど、どうぞ」
騎士が入室する。年は王女よりずっとずっと上、そろそろ現役を引退しても良い年ごろだ。
老いても騎士は騎士である。ピンと伸びた腰、瞳には忠誠を誓った当時の輝き。手入れの行き届いた装備など、全く年を感じさせないものがあった。
「すみません。ご調子が悪いようでしたら、出直します」
男はベッドで咳き込む王女を心配そうに見つめ、入室してしまったことにすでに後悔を感じているようだ。
「大丈夫ですわ。歓迎いたします。隊長さま」
「そんな……俺は、いえ、わたしは隊長などでは無く、この年になってもただの騎士ですよ」
男は戦闘技術があまり得意ではなかった。それでも全く才能がないという訳では無く。多くの優秀で要領のいい同期に囲まれた為、埋もれてしまったものの一人。
つまりの所、不器用な男だった。
「今日はどうされたのですか?」
「フランツィスカ様のご様子を伺いに参りました」
「嬉しいですわ。ねえ、二人しか居ないのだから、そんなに硬くならないでくださいまし」
「そんな、恐れ多いです」
「わたくしがいいと言ってるのです。お願いいたします」
ベッドに寝ながらでも男に向かって優しく微笑む王女。
「では、フラン様」
「呼び捨てでもかまいませんのに……」
「それはご容赦ください……フランツィスカ女王様」
「なるほど、では、わたくしは、騎士団大隊長様とお呼びしますわよ?」
どちらともなく笑い出す二人。
こんなささいな冗談を言い合う。それでもちょっとした楽しいひととき。
この二人が出会ったのは偶然だった。
王女のお付きのメイドがほんの少しだけ離れた刹那、部屋から苦しむ声が聞こえた。
たまたま部屋の前を通りかかった男が無礼を承知で王女の部屋に入室し、助けを呼んだのだ。
「くっ、なぜ誰もいない!! ご無礼を承知の上、失礼いたします。王女様」
一向に誰も来ないことに痺れを切らした男は、赤い血を吐き、苦しそうな王女を背負いながら、それでも細心の注意を払って彼女を専属の医者の元へ送った。
幸い彼女は一命を取り留めた。ほんの少しでも遅れていたら治癒魔法も間に合わなかった。
男は王女の命を救ったものの、それは喜ばれるどころかかえって彼の立場を悪化させる結果になる。
(余計なことを……)
(ああ、やっとあのお世話係から、解放されると思ったのに)
(どうせもうもたない、価値なき命を救ってバカな男だ)
貴族だけでなく、彼女の世話係のメイド達すらも彼を邪険にあつかった。
「わたしだけならまだしも、あの王女様になんたる無礼な……」
しかし、男はそんなことは気にしない性格だった。そもそも、もう年だ。今更、自分の立場がどう変わろうが知ったことではない。逆に騎士団からの辞令は、城の警備。
わかりやすく言えば、左遷だった。
老年の騎士は前線からの任を解かれて、こうして王女の部屋にたびたび訪れることができるようになった。
メイド達や他の者も見てみない振りをする。
やれやれ嫌われたものだ。だが、また倒れられた時、わたしが居ればお救いできる。
もちろん、それは許されることではないのだが、城の者はとにかく王女とは関わらないようにしている節がある。実際、王女が倒れた時、傍に誰も居なかったのが証拠だ。
「報告します。あの王女様を救った騎士がまた部屋に出入りしてます」
「それがどうした?」
「いえ、王女様の部屋に騎士が出入りするなんて……」
「くだらんな。貴様はそんなくだらない報告の為に、忙しい俺の元にきたのか?」
「す、すみませんでした」
メイドや騎士が上に報告をしてもこのありさま。
「寝たきりで何にも使えない王女と、退役間近の老いぼれ騎士。全く実にくだらない。ほおっておいてもくたばる奴らがどうしたっていうんだ」
ほとんどの者が出した結論だった。
「今日はどんなお話を聞かせていただけるのかしら」
「では、俺
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