パパって呼んでいい?

 ふぅ、今日の仕事終了。毎日暑くて暑くて、大変だ。アスファルトの照り返しが半端なかった。
 現場仕事で真っ黒になったタオルと作業服をまとめて洗濯機にブチこむと、冷蔵庫から冷えたビールを取り出して飲む。

「くぅぅぅーーー、この一杯の為に生きてるぜ!」
 さて、ビールを飲んで、早速風呂だ。水風呂で十分、シャワーでかさかさになった髪の毛のホコリと汗を洗い流す。
 そんで、体を洗って冷たい水風呂につかる。冷たいがシャキッとするので、気に入ってる。仕事仲間から教えてもらった入り方だが、すっかりはまってしまった。
 
 んで、また冷蔵庫からビールを出して冷えた体に流し込んだ。
 部屋はまだ昼の熱気が抜けきらないので丁度いい、冷えた体に冷えたビール。

 これ最強。

 エアコンなんて高級品は買えないので、扇風機を強にして窓を開ける。
 さすがの虫もこの暑さにまいったのか、飛んでこない。


 ビールを片手にベランダに立つ。町の灯りがいい感じだ。これで彼女でも隣にいれば最高なんだけどな。
 年収200も無い俺には無理な話だな。 別に借金があるわけじゃない、単に収入が少ない。朝から夜まで汗水流して働いてもたいした金にはならないが、それで十分。
 車も無いし、ボロいけど親の家だし、その親はとっくの前にあっちの世界にいっちまったし……。
 ちょっと飲みすぎたかもな、普段はこんなこと考えねえのに、今日はしんみりした気分。

 ビールを飲み終わり部屋の戻ろうとした時だ。

「どいて、どいてーーー!!」

 ん?
 なんか白い物が視界にうつりこんだと思った瞬間。俺は強制的に部屋へと戻された。

「いてて、なんだなんだ!!」
 軽い白い物が俺の上に居る。初めは風でなんか飛んできたと思ったがそうでもないらしい。

「きゅぅぅぅ」
「おい、大丈夫か!」
 俺の上に乗っている奴に声を掛けたが、完全に目を回しているようだ。そっと下ろしてとりあえず。近くにあった座布団をくっつけてそこに寝かせる。

 は? なんじゃこりゃ?
 びっくりした。動物かと思ったらちっこい子ども、しかも服装をみるからに女の子らしい。
 らしいというのは変な白い羽と白い尻尾、真っ白い肌。
 
 とりあえず、救急車だな。

 俺はバッフォン(スマホ)を取り出して119を押そうとしたが、何かに手をつかまれて、それを邪魔された。
「っと、嬢ちゃん、起きたのか」
「うん、ごめんね。お兄ちゃん」
 いつの間にか起き上がった女の子が俺の手をつかんでた。



「んで、嬢ちゃんはおっこちたんだな」
「うん、突然だったから避けきれなくて……」
 信じられねーけど、この白い子どもは空を飛んでいたという。んで携帯電話の電波搭にぶつかりそうになって、避けた結果俺の家に墜落したらしい。
 実際この子が飛んで見せてくれたので、嘘じゃなさそうだ。

「はぁ、魔物娘のサラちゃんねぇ。俺TVとかあんまり見ねぇから、そんなん初めて知った」
 小さな子どもにしてはしっかりしてた。羽とか尻尾とか色々付いている以外はふつーの子だ。

「ま、お互いケガもねえようだし、じゃあな」
 俺はサラとかいう子どもを玄関まで連れてこうとしたが、またもや手を引っ張られる。
「いや! 帰りたくない」
 は?
「どうした? 訳アリか? とりあえず話だけでも聞くが」
 んで、このサラって子の話が始まった。
「お姉ちゃんとケンカして家から出てきたの、しばらくここに置いて」
 は?
「ん、それだけか?」
 てっきりもっと長い話になるのかって身構えてたんだが、拍子抜け。
「うん、お願いお兄ちゃん」
「そっか、って! ダメに決まってるだろ。俺は男、てめーは子どもだし、それに女の子だろ?」
 首をかしげてサラとかいう子は、なんでという表情をする。
「問題あるの?」
「大有りだって! いいか、よーく考えろ、俺は男だぞ。それに知らない男の家にいっちゃ行けないとか学校で習うだろ」
 ふるふるふる
「知らない」

「あーもう、だめなもんはだめだ!」
 俺は強引にサラの手を掴むと玄関から外へと出した。

 もちろん速攻で鍵を掛けて。チェーンもする。
 ったく親は何考えてるんだ。ま、これであのガキも諦めて帰るだろ。空飛べるんだし後は知らねぇ。


「もう、お兄ちゃんのドケチ!」
「なっ」
 やれやれと思って部屋に戻ると、あのガキが居た。

「てめぇ、どこから入りやがった!」
 サラが指を指す。
 くそ、そっちかよ。
「ベランダ、あと、わたしお風呂入りたいわ」
 ぱぱっと服を脱いで風呂場へ消えるくそガキ。
 この間、わずか数秒。

「おい、こらまて!!」

 バタン!
 閉まるドア、なんだ、最初に落っこちてきたときはしっかりした子だなぁ、なんて思ったけど、ありえねー。
 ま
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