とある街の郊外の家電量販店。この店には裏の顔がある。
店の奥にある部屋には、合言葉を知る一部の者だけが入れる特別な部屋がある。この部屋は魔術商品を取り扱っている。
この店の裏の顔は、魔術ショップだった。
(さてと・・・今日も無駄に長い学校での一日が終わった。これからどうしよう?)
俺。高梨一樹は、魔術が趣味だというちょっと変わったことを除けば、ごく平凡な高校1年生だ。
俺はあまり人付き合いが得意ではないため、学校には友達がおらず、休み時間は一人で机に突っ伏して寝ているか、スマホを弄っている。当然、彼女が出来たこともない。所謂非リア充というやつだ。
この高校では特にいじめのようなことが起こることはない。皆、それぞれ部活や恋愛やバイトと、自分の人生に精を出しているからだ。
魔物娘入学不可の公立中学のときは学校に馴染めず、いじめを受けてフリースクールに通った。しかし、今となっては過去の思い出である。魔物娘と共学のこの高校ではそういうことはなくなった。
魔物娘の先生達は人間よりも遥かに生徒を見渡す力が強い。特にゲイザーの先生は学校のことは全てお見通しなのだとか・・・。仮にそういったことがあってもすぐに先生達は対処するし、いじめをした生徒へは厳しい処分が待っている・・・らしい。起きたことがないみたいなので何とも言えないが。
「魔術ショップにでも行ってみるか。」
俺はそう決めて、学校を後にした。
郊外の大型家電量販店。家電、ゲーム、DVD、書籍、ホビー。多くのジャンルを網羅しており、品揃えも非常に良い。勿論、これらが目当てでここに立ち寄ることもあるが、本当の目的は別にある。
俺はいつものように、5つあるうちの一番右の5番カウンターのサキュバスの店員に話しかける。
「いらっしゃいませ! 何か、お探しですか?」
「"魔界にも繋がるラジオはありませんか?"」
「・・・チューニングは?」
「"96SS"」
「こちらへどうぞ。」
これがこの店の奥に入るための合言葉だ。
「あの、これ、毎回やらないといけないのですか? そろそろ顔パスでも・・・」
「店の決まりですから。フフフッ ようこそ! 魔術ショップへ。ごゆっくりとどうぞ。」
俺はサキュバスの店員に案内され、魔術ショップに入った。
「こんにちわ。店長。」
「おや、一樹君。いらっしゃい。ゆっくりしていってね。」
この人はこの家電量販店の店長の刑部狸だ。表向きはこの店の店長だが、裏ではこの魔術ショップを取り仕切っている。何でも、ビジネスの傍ら、ライフワークである魔術を研究していくにつれて多くの人脈を築き、この国にも、ひっそりと魔術師や魔法使いが集まれるような店を作ろうと思ったらしい。
ちなみに、合言葉は店長から教わった。元々店長とは親しかったが、何故俺が魔術に興味を持っていることを知ったのかは謎だ。
この店に集まる魔物娘や魔法使い、魔術師達とは顔見知りで、自分が親しく会話できる数少ない人達だ。
「そうだ。君に是非とも勧めたい商品があるんだ。」
店長はカウンターの奥から白い箱を持って来た。商品名も値段も、何も書かれていない。
「なんですか? これ?」
「開けてごらん。」
「ええ・・・」
俺は白い箱を開けてみる。
中には、"ワラ人形"、"謎の液体"、"魔法の杖"、"黒色の赤い六芒星が書かれた大きな布"、"高そうな鏡"、"水晶玉"が入っていた。何かの魔術に使うことは分かるんだけど・・・。
「これ、なんですか?」
「ドッペルゲンガーの材料だよ。そして・・・」
さらに、店長は人一人分入れるぐらいの大きな棺桶を取り出した。
「か、棺桶!?」
「これで全部だ。名付けて、ドッペルゲンガー召喚セット!」
「ドッペルゲンガーって、あの・・・?」
「そうだ。この道具一式で、ドッペルゲンガーを作り出すことができる。凄いだろ?」
「え、ええ・・・。」
ドッペルゲンガーの存在は知っている。だけど、ドッペルゲンガーの召喚には、男性の失恋の無念と、魔物娘の大きな魔力が必要で、人間にはそう簡単に召喚できるとは思えないのだが・・・。
「今度から、このセット一式を取り扱おうと思っているんだ。そこで、君には購入者第一号となってもらいたい。」
「は、はぁ・・・(白い箱の方はともかく、この大きな棺桶を持ち帰るのか・・・街中で)」
「値段は、どれも高い魔力で作られたものだから、10万円ぐらいで売ろうと思っている。しかし、君には特別にサービスしてあげよう。」
「え? いいんですか?」
「ああ。そうだな・・・特別会員サービス、そして初の購入者特典として・・・3万円でいい。どうかな?」
「じゅ、10万円を3万円ですか!?」
「そうだ。まぁ、こっちとしても、まだ実績のない商品だから。でも、効果
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