淫導の香

 僕の前は佐久間祐介。高校卒業後、上京して図書館でアルバイトの仕事をしている。僕の家は4人家族で、父親と母親、弟、そして僕だ。
 家は貧乏で、大学進学を諦めて弟に道を譲ることにした。給料から弟に仕送りもしている。

 仕事は倉庫内の整理や、本の品出しや、カウンターの接客業務だ。僕は元々本が好きだし、綺麗好きなので、部屋は常に整理整頓を心掛けている。人との会話は少し苦手で、出勤時間が早いのが難点だが、最近は慣れて来てやりがいも持てている。

 館内は静まり、本棚には本を探す人、机には本を読んでいる人が居る。
(そういえば、そろそろ来る時間帯かな・・・来たっ!)
 金髪で、黒いドレスを着た、綺麗なパピヨンが入館した。

「こんにちわ。」
「ご返本です。」
「はい。確かに・・・。ありがとうございます。」
 パピヨンは借りていた本を返本し、僕は処理してカウンターに戻った。

 パピヨンはカウンターから見える位置に置いてある椅子に座り、本を読んでいる。
(あぁ・・・綺麗な魔物娘だなぁ・・・。それに、あの人、いい香りがするんだよなぁ・・・。今回は、ラブロマンスを読んでいるみたいだね・・・)
 このパピヨンは読書が本当に好きなようだ。今まで借りた本から予測すると、恋愛小説や、サスペンス。ホラーなどが好きらしい。
 僕はこのパピヨンを遠目から眺めるのが趣味だ。

 ・・・まずい! 目が合っちゃった! パピヨンは微笑んだけど、僕は恥ずかしくて、しばらく下を向いて誤魔化した・・・。

 この日の仕事が終わった。僕はスクーターに乗って家に戻った。
 僕の家は木造アパートのワンルーム。一人で住むにしても、決して広いとは言えない。あまり贅沢できないので、出勤に支障がない程度に安めの家を借りることにしたのだ。
 僕は簡単な食事を作り、早めに寝ることにした。

 それから数日後。ガスを止められてしまった。幸い、電気と水道はまだ支払うことができているが、ガス料金を3ヶ月滞納しており、とうとう止められた。
 いくら郊外の古いアパートとは言え、地価の高い首都なため、家賃は決してそう安くはない(他の新しい家に比べれば安いけど)。
 それと、弟が資格試験間近なため、そのための仕送りも増やしていたため、家賃とスクーターのガソリンを払うのが精一杯だったのだ。

「ガスがないと・・・まともなものは作れないな。カップ麺ならガスを使わなくても作れるな。」
 僕はケトルを使ってお湯を作り、カップ麺を作った。

 ガスが使えないため、シャワーは水しか出ないため、非常に寒かった。

 次の日。僕は倉庫内の整理を終え、本の配列を終えてカウンターに立った。
 今日もあのパピヨンが入館する。

「あの、よかったら、これどうぞ。ガスがないとちゃんとした夕食作り辛いですよね・・・。」
「え? いや・・・あの・・・」
「遠慮しないでください。栄養のある物を作ったので。ではっ」
「あ、あの!」
 パピヨンは僕に弁当箱を渡して去って行った。

(確かに、ガスが使えないと作れる料理が限られるし・・・栄養が偏っちゃうよね。食費もギリギリまで切り詰めてるし・・・ここはお言葉に甘えて・・・あれ? でも、なんで僕がガスを止められたことを知っていたんだろう?)

 このお弁当箱、いい匂いがする。中身は何なんだろう?

 その日の夜。僕はパピヨンからもらった弁当箱を開けてみた。
「うわ! 凄い!」
 中身はコロッケにサラダ、シャケ、タコさんウィナーにご飯が入っていた。とても美味しそうで、栄養のバランスもしっかりと考えられていた。
「お弁当箱は洗って返さないとな。頂きます。・・・美味しい!」
 パピヨンの作ったお弁当は、温めていなくても美味しかった。

「あれ・・・なんだか眠い・・・」
 お弁当を食べ終わったあと、急な睡魔に襲われ、眠ってしまった・・・。

 目が覚めると、見たことのない部屋で目を覚ました。
「あれ? ここはどこ!?」
 自分の家ではないことは確かだ。
 白い壁に、綺麗に整理された生活感のある部屋だ。広さもそこそこある。白とピンクが程よく混ざったコントラストな部屋だ・・・女性の部屋だろうか?

「どうして女性の部屋に僕が・・・あれ!? 何これ!?」
 僕はベッドの上に大の字に寝かされ、手足を手錠で拘束されていることに気が付いた。そして、僕は全裸だった・・・。
「誰かー! 誰か居ませんかー!?」
「あら? 起きていたのね。」
「えっ!? あなたは・・・」
「おはよう。佐久間さん。」
 目の前には、図書館の常連のパピヨンが立っていた。頭の中が混乱する。どうして僕は見知らぬ部屋に、ベッドで拘束されているんだろう? そして何でパピヨンがここに?
「あの、ここはどこですか!?」
「ここは私の部屋よ。昨日のお
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