あれから僕の生活は変わった。
もちろんこの行動はサラさんに止められたが、僕は聞かなかった。
次の日から早起きをして、今まで降ったこともない斧を手に持ち、四六時中降り続け始めたのだ。
今までならベルララと食べるサンドイッチやお弁当を作っていたのかもしれない。
でも、この時の僕は無我夢中でベルララの事は頭の角に行ってしまっていた。
今の目標は……竜を倒して義父の仇を取ること。
そう、これが今の僕を支える原動力。
それに、竜と対峙してから、重く、少し動いただけでも息を切らす、この呪われた体が、嘘のように軽くなったのだ。
だから僕は、体を蝕む病気のことも、残り数ヶ月の命という事も忘れ何日も何日も斧を降った。
振り続け、振り続け、残りの命を竜を倒すためだけに注ぐ勢いで振り続けた。
おそらく、斧を振るだけでも、僕にとって、辛い修行のようなものだったのだろう。
「痛っ……!?」
今まで扱った事などない斧を降ったことで、手の皮は破れ、豆にもなった。
「はぁ…はぁ」
体力も無いため、直ぐにばてたりもした。
「か、身体が動か…な…!?」
もちろん、病弱で弱った体は重たい斧を振り続ける動作に、耐えきれる筈もなく、細い手足に体の筋肉が悲鳴もあげた。
当たり前なことだ。
僕は戦い方なんか知らないし、ましてや、弱りきった体なのだから……
でも、それでも振り続ける……
そう言えば、何年か前に図書館で武具の使い方を記した本を読んだ事があったけど、幼く病弱な僕には無縁だと思い軽く目を通したぐらいで、興味がわかなかった。
でも、こんな事なら真面目に読んでおけば良かったと、ちょっと後悔している。
今から町の図書館に行っても良いのだが、町に行くその時間すら惜しく思えた。
……思えた。
……そう思えたのだが、1週間たった頃、僕は町へ強制的に行くことなった。
理由は簡単。
「いいから来なさいウィル!!」
「大丈夫だってサラさん! それより僕は強くなりたいんだ!!」
僕の体からしたら、ここ最近の生活はとても心配だと、サラさんが糸で無理やり引っ張って町のお医者さんの所につれていったのだ。
「フム、フム、フム……」
顔は白髪と白髭に覆われ、小さなレンズをチョンと大きな鼻に乗せた、僕の掛かり付けのおじいちゃん先生が、聴診器を胸に当てながら頷いた。
僕は、帰りに図書館に寄らせてもらう約束をサラさんとして、なくなく診察を受ける事になった。
「どうでしょう先生?」
おじいちゃん先生に対して僕の後ろで、ちっちゃく身を縮めたサラさんが声を出す。
大きな下半身を持つサラさんにしたら、この小さな診療室は窮屈なのだと、部屋を見渡した。
おじいちゃん先生は聴診器を耳から外し、僕はそれに合わせて捲ったシャツを戻した。
「フム……軽い筋肉疲労が診れるが、フム、これと言った病気の進行が見られん…フム」
「「え!?」」
僕とサラさんは同時に驚きの声をあげてしまう。
まあ、実を言うと僕自身も最近無理しすぎたと思ってたから、思わず声がでてしまったのだが。
「フム、それどころか以前に比べて、脈も呼吸も安定して、健康そのものじゃな…フム」
おじいちゃん先生は、フムフム言いながらカルテに記入していった。
それに対して、サラさんはふぅーとため息を吐き、胸を撫で下ろしていた。
「フム……ウィリアムス君にアルケニーのお嬢ちゃん……ガリバー君の事は誠に残念だった」
カルテを書き終わったおじいちゃん先生が、身支度をする僕とサラさんに言ってきた。
僕はおじいちゃん先生の言葉を聞き、あの日の事が頭をかけ巡った。
「だがな、君らが元気でいてくれたら、彼も喜ぶはずだ……無理はせず頑張りなさい」
「はい…先生その節はありがとうございました」
僕は、顔を下に向けながら義父と、竜との事を思いだし、再び決意する。
サラさん……僕はやっぱり竜を倒したいよ、と。
病院の帰り、僕は約束通り図書館に寄らせてもらった。
もちろん、竜を倒すための知識を得るため。
前に見た本は無かったけど、代わりに戦い方や武器の扱い方の本、また過去の戦士達の武勇伝が載っている本を選んで借りてきた。
なんだかんだで借りた本が持てないぐらいになってしまい、持ってきた鞄に本が入りきらず重ねた本を両手で抱えてる状態になってしまった。
今は買い物をするサラさんが、篭に入れて持ってくれている。
図書館を出たのち、病院を出てから元気が無かったサラさんが、“気分転換に少し買い物しましょう”とニコリと笑って言ってきて、今は買い物しているのだ。
けど、僕は知っている。
僕に向けた笑顔は作り笑顔で“買い物しましょう”と言う前に“私がこんなんじゃダメね”と、下唇を噛んで、言っ
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