今日はクリスマスらしい。
だがキリスト教徒でもないし恋人もいない俺には関係ない。
なのでいつも通りネットで可愛い動物の動画を観ている。
「むふう。なんて愛らしいんだ、ぱにゃちゃんは」
男のくせに気持ち悪い?
知ったことか!
ぱにゃちゃんの可愛さの前では性別など無意味!
「ああ……癒されるぜ……」
そんな風に俺は至福のときを過ごしていた。
その時だった。
突然窓がガラリと開き、何者が部屋に入ってきたのだ。
「うわっ、何だお前!」
部屋に入ってきたのは見知らぬ少女だった。
年は小学生くらいだろうか、サンタの格好をして、それなりに大きい白い袋を持っている。
その少女は何だか眠そうというか、やる気がなさそうというか、そんな感じの目つきをしている。
「……見ての通りサンタクロースでござい……今年もさんざん苦労してます」
と言われてもサンタは実在の人物・団体とは一切関係ないフィクション世界の住人。よって、こいつの言ったことは真っ赤な嘘ということ。なのだが。
「馬鹿な、ここは4階だぞ!?」
「……でもサンタだから全然平気」
たしかにサンタならそりで飛んでこれるから問題ないだろうけど。
「お前マジでサンタなのか?」
「……イエスわたしサンタ……子どもたちに夢届けてます」
うぉい……マジか……マジなのか……で本物のサンタさんなのか……
信じられないが、普通の人間がどうやって4階の窓から入ってこれる?
少なくとも常識で測れない存在であることは間違いないと思う。
と、そこまで考えてふと気になった。
サンタならお馴染みのモノが見当たらないことが。
「トナカイとかそりは?」
「……経費削減」
「夢が無え!」
サンタがそういうこと言っちゃダメだろ。
「……そんなことはどうでもいい……サンタで重要なのはプレゼント……それだけが存在価値と言っても過言ではない」
「いや過言だろ」
「……とにかくサンタ=プレゼントは世界の常識……というわけで子どもたちにプレゼント届けに来た次第……」
と、サンタ少女が言うが。
うちには子どもなんていない。俺独身だし。
「うちには子どもなんかいないぞ?」
「……いえここにいます」
サンタ少女はじーっと俺を見る。じーっと。
「え、俺!? とっくに成人してるけど!?」
「……何を仰る……まだ大人の階段上ってないチェリーボーイのくせに」
「は?」
言われた時は意味がわからなかった。でもちょっと考えたらわかった。わかったらむかついた。
「誰がチェリーボーイだ!」
「……ムキになるのがその証拠」
「ムキになってねえ!」
「……そんなチェリーでよい子な君に素敵なプレゼント……」
「聞けよ!」
俺の抗議を無視して、サンタ少女は持っていた袋に手を入れてゴソゴソした後何かを取り出した。
「……てれれってれー……提ー灯ー……」
取り出したのは時代劇なんかではお馴染みの提灯だった。
「……ほらサンタさんからのプレゼントだぞー……何、礼はいらん」
その提灯を俺に差し出してくる。
「いらん」
だが俺はきっぱりと受け取りを拒否する。
「……なぜ?」
「だって今時提灯なんていらないだろ」
チェリーと言われた腹いせもちょっと入ってるわけだが。
とはいえ俺の答えは現代人の総意であると思う。提灯なぞ今の世には不要。
だがサンタ少女は、この答えに対し、やれやれ何を言ってるんだと言わんばかりに首を横に振る。
「……これだからゆとりは……円周率は3ではありません……πです」
「いやこれゆとり関係なくね?」
「……何かあったらゆとりか政府のせいにしておくのは基本……基本の基本が大事……今日何度も言っておきます……」
「何の基本だよ?」
「……たしかに現在提灯は廃れてしまっている……だが我々の極秘の調査によってこの先10年以内に世界的な提灯ブームが起きることが判明」
「うそぉ」
「……マジです……だって占い師が言ってたし」
「占いかよ!」
占いは調査じゃないだろ。
「……占いを舐めてはいけない……今年のクラブワルードカップのバルサ優勝もピタリと当てて見せました……やばいよね……やばいやばい」
「それド本命じゃねーか!」
ちっとも凄くないぞそれ。
「……ともかくそんな凄い占い師様が仰っているのです……提灯ブームは来る……きっと来る……絶対とは言えなくても50パーくらいの可能性はあるはず」
そんなに可能性ないと思うけど。
っていうか提灯のブームなんてどんなのだ。全く想像出来ないぞ。
「……将来子どもたちは提灯と共に学校へ行き、恋人たちは提灯と共に愛を語り合い、老人たちは提灯と共に昔を懐かしむ……そんな素敵な未来が訪れるでしょう……これが明
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