「うっしゃあ! 掃除終わったぜっ!!」
「はい、お疲れさん。さぁ、グ〜っとどうぞ」
なみなみと葡萄酒を注いだ彼女専用の特大ジョッキを、カウンターにドンと置く。
「おぅよ、言われなくてもな!」
すると彼女はニッと笑い、それを力強く鷲掴みにしてグイグイと煽る。
んぐんぐんぐ……と軽快に彼女の喉が鳴り、そしていつものこの台詞。
「ん、かぁ〜〜〜っ!! この一杯のために生きてんなぁ、この野郎っ!!」
「うん、いつも通りいい呑みっぷりだ。もう一杯いく?」
「おぅよ、いくに決まってんだろうさ!」
子供の様な邪気の無い笑顔と共に突き出されたジョッキを受け取り、もう一度溢れんばかりに葡萄酒を注いでいく……。
これが、僕と彼女のお決まりのやりとり。閉店後のお約束。
二人で切り盛りしている【お食事処:暴れ牛】の日常。
「ぷはぁ〜……二杯目も美味い! で、今日の晩飯は何だい?」
「豚肉のしょうが焼き。東方料理屋のケンイチローさんに、昨日教えてもらったんだよ」
「へぇ。それ、美味いのか?」
「うん、かなり美味い。ご飯がすすむ味わいだね。下ごしらえは前もって済ませといたから、すぐに出来るよ」
「そりゃ結構」と頷いて、彼女……ミノタウロスのリズが、嬉しそうな顔をする。
食うこと、呑むこと、眠ること、あと大きな声では言えないけれど『ヤること』に関して、彼女の欲求と要求はとても素直でわかりやすい。
「うおぉぉ、めちゃめちゃ良い匂いしてやがんなぁ、オイ」
そんな事を考えながら肉を焼いていると、いつの間にかカウンターの内側に入り込んで来たリズが、僕の背後にピッタリと張り付くように立っていた。そして、僕よりも一回り以上大きな体格を活かし、こちらの肩越しにひょいとフライパンの中を覗き込んで来る。
予想以上の素敵な香りに気持ちが高まって来たのか、荒い鼻息と共にグイグイとその体を押し当てて来るので……あの、ちょっと。
「リズ、危ないから。火を使ってる時にくっつかないで。いつも言ってるでしょ」
「あン? 美味そうな匂いがしてんだから、しょうがねぇだろうさ」
「理由になってないよ、それ。あと、ちょっと酒臭いから。気が散るから」
「へいへい、まったく注文の多いこって」
不満げに肩をすくめながら、リズの重みが僕の背中から離れていく。
やれやれ、これで料理に集中できるぞ……と、思わず「ふぅ」と一つ息をつく。
彼女といちゃいちゃする事は嫌いじゃないけれど、さすがに料理中は話が別だ。お互いに火傷を負う危険性が生まれるし、何かの拍子にせっかくの料理を台無しにしてしまうかも知れない。
あと……腕や背中に彼女の豊満な胸の存在を感じながら鍋釜を振るのは、正直無理だ。
(本当、あんな見事な腹筋や背筋をしてるのに、胸だけは何であんなに……うおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?)
「ちょ、ちょっとリズ! 何やってんだよ!」
「あン? 何って、ナニだよ。待ってる間退屈だから、お前さんのコレで遊ぼうかと思ってな」
「いや、だから料理中だって言ってるでしょ!?」
「んだよぉ、うっさいなぁ……そもそも、脱がす前からちょっと大きくしてたのは、何処のどいつだい」
「う、ぬ、いや、だってそれはリズが胸を押し当ててくるから……」
そろそろ肉が焼きあがるというタイミングで、リズが背後から僕のズボンとパンツを一気にずり下ろして来た。りょ、料理中の隙を突くとは卑怯な!
……いや、今はそんな事を言っている場合ではなく。
「おぉおぉ、お前さんは本当にアタシの胸が好きだねぇ。よしよし、心配しなさんな。お望みどおり、胸でしてやっからな」
ニタ〜リと不敵な笑みを浮かべつつ、露出した僕の分身にリズが予告通りの攻撃を仕掛けて来る。
その途端、僕の脳内には『マシュマロ』とか、『ふかふか蒸しパン』とか、『外フワフワ、中モッチリ』とか、そんな言葉が駆け巡る訳で。
「いや、ちょっと、あの、リズ、待って。本当に待って。駄目、あ、ちょっと、あ、さ、先に晩御飯を、う……」
「んフフ〜。断る。お前さんのを見てたら、アタシもその気になっちまった。だから、先にヤっちまうぞ」
「あ、わ、う、おぉぉぉぉ……」
リズが攻撃手段を変える。
その途端、今度は僕の脳内に『なまこの酢の物』とか、『イソギンチャクって食えるのかな』とか、『牛タン』とか、そんな言葉が駆け巡る訳で。
「いや、そんな事、考えてる場合じゃ、な、なくて……」
「ふぇ? ひゃに言ってんら? もっとひて欲ひいのにゃ?」
「り、リズ、本当に駄目、もう、あの……」
「んぷぁ! んフフ〜、とりあえず五発だな。それが終わったら、晩飯だ」
「五発って……さ、三発くらいにまけて欲しいんだけど」
「らメ」
そして、攻撃再開。
あぁ、こんな
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