《 海の鎮魂と再生 : 海に暮らす魔物達の活躍 》
防波堤や灯台など、各種港湾施設の破損、沈下といった物的被害。
港の機能が停止した事によって生じた、経済的被害。
それぞれの船や港の各所で作業中だった人々の人的被害。
……今回の地震は、都市部のみならず沿岸部一体にも、そうした多大な爪痕を残していった。
湾内、港内に溢れた様々な残骸は船の往来を阻み、傷病人の搬出や、援助物資の搬入などを不可能にした。
また同様に、不幸にも海へ投げ出され、犠牲となった人々の遺体回収も困難を極める事となった。
陸では助けを待つ多くの人々がいる。
本当に無念ではあるが、海の復興は後回しにせざるを得ない……。
そんな厳しい状況に追い詰められ、諦めかけた我々に救いの手を差し伸べてくれたのは、海に暮らす心優しい魔物達であった。
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☆とあるスキュラの証言
ふ〜ん、あの時の話が聞きたいのね。
はいはい、良いわよ。いくらでも話してあげるわ。
けどまぁ、いきなりぶっちゃけた話、一番頑張ったのはカリュブディスのおチビちゃん達なんだけどね。
ほら、あの子達には渦潮を作り出す力と、何でもかんでもを吸い込んじゃうものすごい吸引力とがあるでしょ?
あの時は、その二つの力が大活躍だったのよ。
猛り狂うような地震のエネルギーは、私達が暮らす海の中も駆け抜けて行ったわ。
本当、心臓を鷲掴みにされるような、桁外れの衝撃だった。
だからこれは、タダでは済まないんだろうな、大変な事になるんだろうなって……そう思ったの。
そして、悪い予感ってのは当たるものよね。
地震の衝撃波からしばらく経つと、海面を色々な残骸が覆い始めたの。
船やら、桟橋やら、木箱やら、漁具やら……命を落としてしまった人間の亡骸やら、色々よ。
だから私は、一つの考えを持って、いつも仲良くしてるカリュブディスのおチビちゃんの所へ急いだの。
すると……既にそこには、同じ様に顔なじみのメロウやネレイスなんかが集まっててね。
いつも陽気にニコニコしてたり、妖艶な笑みを浮かべてたりする面々が、初めて見るような沈痛な面持ちになっていたわ。
「……みんな、考えてることは同じ、かしら」
「……だね。お願い出来るかな?」
前フリ無しで言った私の言葉に、メロウが頷きながら続いたの。
「……わかった。じゃあ、私が瓦礫を吸い込んでからゆっくりと吐き出すから、みんなそれをちゃんと受け止めて、まとめ上げてね。人間さんも、雑に扱っちゃダメだよ?」
「えぇ、もちろんよ。きちんと敬意を持って接するわ」
決意を込めた様子で口を開いたカリュブディスを優しく包み込むように、ネレイスが微笑んだわ。
そう……私達の考えていた事は、カリュブディスの能力を活かした瓦礫と遺体の回収作戦だったのよ。
まず、海面に浮かんでいる漁具やロープの類を私達が回収する。
次に、カリュブディスが少し大きめの渦潮を作り出して、海面の瓦礫を一旦吸い込む。
そして最後に、ゆっくりと吐き出されたそれらを私達がキャッチして、集めたロープなどでまとめ、縛り上げる。もちろん、犠牲者の遺体は丁重に抱えて置いた後、港へ運ぶ……。
先に結論を言っちゃうと、この手順と作戦は上手く機能したわ。
あと、後に聞いた話なんだけど、同じ様な事が海のあちらこちらでも行われてたんだって。
私達が海面を綺麗に整えた結果、色々な船が航行出来るようになったそうだし……まぁ、お役に立てたのなら何よりって感じかな。
私達は、私達に出来る方法で何だかんだと動いただけ。
だから、別に褒めてもらおうとか、ご褒美を貰おうとか、そんな事は思ってないわ。
ただ、海に暮らす私達が、この国の人達に少なからぬ恩義や情を抱いていた事は確かでしょうね。
そしてその気持は、今も、たぶんこれからも、ずっと変わらないってこと。
その辺の思いは、きちんと伝えておきたい……かな?
……あ。
それとゴメン、もう一つ。
一番頑張ったカリュブディスのおチビちゃんに、誰かいい人を紹介してくれると嬉しいかも。
いやぁ〜、いっつもあの子が捕まえた良い感じの男を、私が横合いからかっさらっちゃうもんだから、あの、その……ねぇ?
まぁとにかく、船で適当に乗りつけてくれれば、あとはおチビちゃんが全自動でやってくれるから。「我こそはっ!」と思う人は、よろしくお願いします。
うん。何卒。ホントに、よろしく。
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☆とあるシー・ビショップの証言
はい。
私は、海で命を落とされた方々の葬儀を執り行わせていただきました。
あの日、
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