CASE 2 月下の変態

とある村は壊滅の危機にひんしていた!
以前美ショタを誘拐した吸血鬼が、半年の間を空けて再び村の美ショタ達を誘拐したのだ!

と、まぁ例のごとく村長はまたまた大慌て。
村人達はあぁ、またかとど動揺した風も無し。
変態と言う名の淑女だし悪いようにはしないだろうと確信していた。

そんな村に、一人のヴァンパイアハンターが立ち寄ってしまったことからこの物語は始まる。


※ ※ ※


「いやー、前はひどい目にあった。あの変態はさすがに勝てないわ」
「なんかずっと『ソイヤッソイヤッ』って小気味いいテンポの掛け声と共に鞭でぶってきましたもんね……うぅ、今思い出しても痛い」
「確かに。でも……痛いのが、その、ね? ……いい、かな? って」
「前から分かってたけど、へ、へんたいだー!!」
「失礼な! 私は変態と言う名の淑女よ!」
「結局変態!?」

若干何かに目覚めてしまった主に引いてしまったナイトメア。
SとMは表裏一体。
サドっ気が強い奴ほどマゾに堕ちるのは早いと言ったエロい人は果たして誰だったろうか。

「何度も言うが失礼だな。元からMっぽいお前に変態言われたくないぞ」
「失礼なのは主様です! 私はMでもSでもなく、Nですから!」
「N……だと……」

腹心の発言に何かしらの衝撃を受けたヴァンパイアがふらふらとベッドに後ずさり、そしてベッドにくずおれた。

「あぁ、今は亡きお母様、私の腹心がN……ヌード、すなわち露出好きでした。どうすればいよいでしょうか……?」
「誰が露出狂かぁ!! ノーマルのNですから!」

普通ノーマルをNと略す人はいないと言うことにこのナイトメアは気づいてはいなかったりする。
そんな漫才を二人でしている中、ふと部屋の扉がノックされた。

「ご当主様〜、なんか侵入者が来ました〜」
「なに? 侵入者だと?」

部屋の扉をあけて、彼女の配下のワーバトが一匹入ってくる。
表情をキリッと引き締まった物に変えたヴァンパイアは配下のワーバットが持つ水晶球を受け取り、それを覗……こうとして泣きそうな顔でナイトメアに向き直った。

「……またあの変態だったらどうしよ〜」
「諦めてください。主様だけでなくこの城の全員があの変態にはトラウマを植えつけられたんですから」

主に尋常ではない手段で近寄られて、挙句に頭を踏まれるというトラウマである。
なお、この城で一番トラウマの被害を受けた種族はワーバットだ。

ナイトメアの言葉を受けて、泣きそうな顔からガチで涙を流しながら、ヴァンパイアは観念して水晶球を覗き込んだ。


※ ※ ※


「あ、私の息子もとい娘だ」
「へ? 主様お子様がおられたんですか?」
「まぁみんなを雇う前に家出したからみんなは知らないか」
「……反抗期?」
「そ、かれこれ……何百年家出してたっけ」
「魔王の代替わり前からの反抗期ですか? 長すぎ……それに息子もとい娘って、どういう……?」
「いや、それは分かるでしょ? 息子として生まれてたけど、あの子ダンピールだから、魔王の魔力でね? ちなみに私も元男」
「MA☆ZI☆DE!?」

使えて早数年。
数年目にして始めて知った事実だった。

ナイトメアが始めて知った事実に驚いている中、ついにダンピールがついに動き出した。


カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ(以下エンドレス)


「!?」
「!?」

はじめ、ヴァンパイア達は何が起こったのかわからなかった。
ありえない話だが、部屋に究極生命体G、もといデビルバグが現れたとでも言うのか?
しかし、部屋を見回してもその気配は無く、他にそのような音を立てそうな存在も無い。

まさか、いやありえない。
いくら長い反抗期をしているとはいえ娘。
その娘を信じたかった。
しかし、現実は非情である。
周囲を見回したヴァンパイア達が再び水晶球に視線を戻した。
そこに映っていたものは……!

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!? 娘が! 娘が変態にぃぃぃぃ!?」
「へ、へんたいだぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

それは、以前の変態のようにマグロのように飛び跳ねては居なかった。
飛び跳ねては居ない、と言うよりそもそも体が動いていなかった。
だと言うのに、それはすさまじい速度で移動している……後ろ向きで
まるで棒立ちしているかの体勢で足を一切動かさずに、ダンピールは後ろ向きに高速移動していた。
そして先ほどから聞こえるカサカサという音。
それは水晶球の中で変態の妙技を見せているダンピールの移動音だったのだ。
その移動速度と移動音はまさにデビルバグそのもの。
ゴキカード! と言う声がどこからか聞こえた気がした。

「夢よ! これはひどい夢なのよ! 私の娘がこんな変態なはずがないわ!!」
「いやぁぁぁ! 親子そろって変態なのぉぉぉぉ
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