「…………」
パチリと眼が覚めた。
相変わらずいやな目覚めだなと自嘲しながら、僕はベッドから抜け出した。
村を失った僕が何故ベッドで寝ているか?
簡単な話だ、僕はご好意で、ある一家と一緒に暮らしているのだ。
あの日、僕が全てを失った後、僕はひたすら歩いた。
だって、村はもうないし、その村の生き残りも僕一人。
僕は子どもだ、一人じゃ何もできやしない、もちろん、生きることさえも。
だから歩いた。野を歩き、山を歩き、谷を越え、ひたすらに歩いた。
どこに向かうかなんて考える余裕はこれっぽっちもなかった。
ただただ、「生きたい、死にたくない」とだけ考え、一心に歩き続けた。
でも、当然限界は来る。むしろ、よくあれだけもったほうだなと今でも感心することがある。
僕が倒れたのはどこかの森だった。
村を出て3日ほどの場所だった。
まともな食料なんて当然なかった、だからそこらへんの雑草とかを食べてたし、水だって川があればそこの水を、それが泣ければそこらへんの水溜りの水を飲んでここまで歩いてきた。
それも限界だった。もう一歩も歩けないどころか、指一つ動かす事だってできなかった。
「死んじゃう……かな?」
もはや、それを悪い話と考える気力もない。
むしろ、楽に慣れるならそれがいいのではないだろうかとさえ思いはじめてきた。
いきなり村を魔物に襲われ、全てを失った僕はそこまで弱りきっていた。
「あれ……?何か倒れてる……って人!?え、あ、ど、どうしよう……!」
だんだん狭くなっていく視界の中、女の人の声が聞こえた気がした。
「ひどい怪我……それにすごいガリガリ……あの、大丈夫ですか?」
うるさいなぁ……もう疲れてるんだよ。
もう寝かせてよ……
「う……」
眩しい……ここは……天国?
だったら父さんたちもいるかなぁ……
あ〜、でも体があちこち痛いや。死んだんだったらもう痛くなくてもいいと思うんだけど、痛いなぁ……
「お!気がついたのかい?」
起き掛けの耳に男の人の声が飛び込んできた。
声がしたほうを見ると、白衣を着た初老の男性が布がかかった桶を抱えて経っていた。
「体の具合はどうだい?どこか痛いところはあるかい?ああ、体は動かさなくてもいいよ、黙ってても痛いところがあれば言ってくれ。とりあえず目に付いたところの怪我は治療しておいたけど、もしかしたらやり残しがあるかもしれないしね。それを放っておいたら傷口から細菌が入ってきて大変なことになるから。それにどこか骨が折れてるかもしれないし、さすがにそれは君が言ってくれないと分からないことだからね。そうだ、お腹は空いていないかい?いや、この質問は無粋だったね、空いているに決まっているだろう、なにせそんなにやせ細っているんだからね。ろくな食事をしてこなかったんだろう?ならちょっと待っていたまえ、何か消化によくて、なおかつ栄養があるものをとってこよう」
「え?あ、ちょ……」
初老の男性は僕に話す余裕を与えないほどいろいろとまくし立てると、急いで部屋を出て行ってしまった。
まだ起きたばかりの冴えない頭で先ほどまくし立てられた言葉を何とか拾ってつないでいく。
といってもまともな文章になったのは、
「……食べ物、くれるのか」
これだけだった。
「いやー、すまないすまない。つい癖でね」
「はぁ……」
あれから初老の男性が持ってきた食べ物を食べながら、ようやく頭が働いてきたようだ。
「私の名前はターナー・グレッグという。ま、見てのとおり医者の真似事をしている」
「あむ……僕はキト・ラファエーラといいます」
「ふむ、キト君……と、それで、どうして君は森で倒れていたんだい?」
「森?」
僕が小首を傾げると、ターナーさんは「覚えていないのか……まぁ無理もあるまい」とつぶやき、簡単な事情の説明をしてくれた。
「君はこの村の近くの森で倒れていたんだ。見つけたのは私の助手……のような奴でね、君をつれてきたときはほんとに驚いた。死体と見間違ってしまうくらいの有様だったからね。」
「そうですか……ありがとうございます」
森か……下手したら獣に食い殺されていたのかも知れないな。
あの時は死んでもいいやと思ってたけど、こうやって人心地つくと、死ぬなんてとんでもない。
「さて、ここからが本題だ。君はどこから来たんだ?君のような子はこの村では見たことがない。一応僕は医者の真似事をしているから、この村にどんな人が住んでいるかは把握している」
「えっと……リゼル村って分かりますか?」
「リゼル村……」
僕が住んでいた村の名前を聞いて、ターナーさんは顎に手を当ててしばらく記憶を探っている様子だった。
「ああ……そうかそうか、ならばそれ以上は言わなくてもいい。君にはつらいことだしね」
「……は
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