体力を取り戻したあなたは再び山を登り、とうとうその頂にまでたどり着くことが出来た。
山の中心は大地のへそのように巨大な噴火口が開いており、地の底で赤く輝くマグマが顔をのぞかせている。
熱せられた蒸気が立ち上り、遙か上空へと昇りつづける。
あなたはサバイバルをしているはずなのに、何故こんな場所に来てしまったのでしょうか。
こんな僻地に人がいるはずありません。それどころか、魔物がいるかすら怪しい。
もしあなたが同じ状況に陥ったら、火山に行ってはいけません。もし火山に不時着したら、速やかに下山しましょう。
「くくく……こんなところまで一人で来るとは、酔狂な人間もいたものよな」
雷鳴の如く絶叫が響き、稲妻を内側で光らせる噴煙から翼を持った魔物が飛び出した。
それは、ドラゴン。
なにものも弾き返す鋼の鱗、一撫でで全て切り裂く鋭い爪、天上の王であると誇示するかのように広げられた翼。
魔界において、個体としてのトップクラスの能力を持つ最高位の魔物。
「貴様が欲しいのは巨万の富か?それとも我の肉体か?なんにせよ、得るにはそれ相応の覚悟を示してもらわねばな」
彼女の肉体といったのはある伝説のことです。ドラゴンの潮を浴びたものは、永遠の不老不死になるというもの。
しかしこれは大きな間違い。
実際のところは、潮を浴びるほどドラゴンと性行為をした男性は気づかぬうちにインキュパスになり、不老不死に見えるということなのです。
さて、サバイバルの最中にドラゴンに出会えたあなたは最高にラッキーかつアンラッキー。
個体数の少ない単独行動のドラゴンに遭遇する機会など殆どない上、装備の整っていない人間が助かる道理はありません。
なぜ、勇者は世界各地を遍歴してから巨竜の住まう城へ向かうのか。
ドラゴンと対等になるには、それほどの経験と準備を要するということだからです。
あなたは為す術なく敗北し、ドラゴンに無様な醜態を晒す運命なのです。
しかし、時代は進歩しました。
伝説の秘境に眠る名剣さえ、インターネット環境が整っていればタップ一つで火山地帯まで届けてくれます。
もちろんお値段は張りますが、ドラゴンにされるがまま、がイヤなかたは、ぜひこれからご紹介する対ドラゴンの『二つの神器』のご購入を検討下さい。
1の神器『大剣 ドラゴンべイン(量産品)』
ドラゴンを倒すというからには、まず必要なのは武器でしょうね。
とはいえ、強固な鱗の鎧を持つ彼女達のまえでは、生半可な武器では傷一つ付けることが出来ません。
伝説の鉱石で出来た剣ですた刃こぼれする鱗の鎧。それを打ち砕ける武器は、この世界においてもたった一種類しかありません。
その名はドラゴンべイン。竜殺しの名を冠するそれは、前魔王時代に多くの竜を葬った剣であったと言われています。
男性の背丈ほどの刀身を持つ巨大な剣で、一振りするだけで嵐のような斬撃を起こし、天上の飛竜すら切り裂いた。
余りに切れすぎるため、剣を振った者も傷を負い、血しぶきをあげてしまう、という扱いづらい逸品だったそうな。
これは単に剣の切れ味が優れているというわけではなく、これを打った鍛冶屋の怨念が込められているからだそう。
なんでも、家族全員を竜に食い殺された鍛冶屋はその生涯を竜を殺す武器を作ることに費やし、晩年に完成させた大きな剣に自分の魂を込めた、という逸話があります。
ドラゴンの気配に反応してガタガタと動き、刀身を赤く光らせると特徴を持っていますが未だ原理は不明で、これこそが鍛冶屋の魂だという使い手もいらっしゃいます。
こんな恐ろしい武器が何で売られているんだ、と疑問に思う方もいらっしゃいますが、上記の性能だったのは前魔王の時代だけ。
ドラゴンが美女の姿をとると同時に、ドラゴンべインもその力を変容してしまったのです。
ドラゴンに対して高い力を発揮するのは変わりませんが、何故かその鋭い刃はドラゴンの肉体を傷つけることが出来なくなりました。
つまり、この剣が斬るのはドラゴンのまとっている衣服だけ。
ドラゴンべインを一振りさえすれば、どれほど強固な鎧も一瞬にしてズタズタにして切り裂き、ドラゴン達は生まれたままの姿をさらけ出すことになるでしょう。ついでに鋭い爪もいい感じに丸く削られてしまい、完全とはいえませんが彼女達を無力化する事が出来ます。
この性能に目を付けた一部のリリムが「堅物なドラゴンにはこういうのも必要」としてサイクロプスに作成を依頼。
結果、ネットで購入できる程に大量生産されることとなりました。
ドラゴンを無力化する能力についてはとても優秀な武器なのですが、運用するにあたってちょっとした難点も
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