ゲイザー 危険度☆☆☆☆★

しとしとと濡れる洞窟を進み続けると、あなたは光り輝く泉を発見しました。
 周りのものとは明らかに異質な存在感を放つ泉に、あなたは興味を持った。手で一杯すくってみると、水は冷たく清らかで、ミルクのように白かった。
 勇気を出して口に含めば疲れが吹き飛び、体の内側からかつてないほどの活力が生まれてくるではありませんか。
 
 実はこの水には地下の特殊な地質の成分がとけ込んでおり、飲んだものに魔物に対抗できる力を短時間授けます。
 人々から「魔除けの水」とよばれ、魔物嫌いの人間は大変重宝される一品です。
 なお、基本的には洞窟内でわき出る水を飲むのは危険な行為ですので、自己責任でお願いします。

 


 ペットボトルに水をくんで再び歩き出すと、何か魔物のオーラを感じます。
 洞窟の影からゆらゆらと現れたのは、無数の触手のようなものを蠢かせる一つ目の黒い少女。

 その名をゲイザー。「見つめる者」の名を冠するとおり、その大きな瞳で見定めた相手に幻覚をかけてしまいます。
 腕っ節は並の人間以下ですが、この幻覚を破るのはとても難しい。

 不意打ちを仕掛けられたら間違いなく勝てない魔物娘ですが、何故か今回は正面から現れてきました。

「あれ、君は僕のことが見えてるの?不可視の幻覚が効いてない?」

 黒く艶めいた肌や、くりくりとした可愛らしい瞳がバッチリ見えているあなたは、彼女にコクリと頷きます。
  
 よほどの対魔力が備わっていないとゲイザーの幻覚は破れないのですが、原因は先程飲んだ水でしょう。
 魔除けの水があなたの魔法耐性をぐぐんと引き上げ、ゲイザーの姿を視認できているのですね。

 魔界にはこの水のように、魔法を無力化したりするアイテムが何種類か存在します。
 多少値段は張りますが、一人で旅に赴く際は是非入手しましょう。

 偽物も多数で回っております。タヌキ印の商品は十分気をつけましょう。


「ま、いいもんね。僕が本気をだせばどんな人間もイチコロさ。君にはそうだなぁ……僕の事を幼なじみだと思いこむ幻覚と、僕の唾液でしか水分補給できなくなる幻覚をかけてやろう!ムフフフフフ」

 瞬間、ゲイザーの瞳は異様な魔力を放ち、あなたの視線を引きつけようとします。
 彼女の大きな瞳と目を合わせてしまえば、どんなに耐性をつけようとも意味がありません。
 しかし、対抗する手段はまだあります。
 もしあなたがゲイザーに遭遇しても冷静さを忘れず、この項目の事を思い出して下さい。





STEP1 とにかく時間を稼ぐ!

 目をつむる、首をそっぽむくなどして、少しでもゲイザーの瞳をみないようにしましょう。
 目を見ただけで催眠をかけられるという事は、転じて目さえ見開ければ催眠にはかかりにくくなるということ。
 なかなか暗示にかからず苛立ちを覚えるゲイザーは、にじりにじりとあなたに近寄ってきます。
 相手との距離が近いほど、幻覚は強くなるからですね。
 こちらとしてもゲイザーが近づいてくれるほど対処しやすいので、ぎりぎりまで引き寄せましょう。






STEP2 鏡のようなものを探そう!

 これが最大のポイント、時間を稼いでる間に、所持品の鏡を取り出しましょう。
 光を反射するものであればよいので、スマホの鏡面などを利用するとか、すべすべした板状の何かを磨いた物でも大丈夫です。
 

「なにをためらっているのかなぁ?そのかわいい顔を僕に見せてよぉ?」

 耳元でささやくようなゲイザーの声が聞こえたら、射程圏内です。
 素早く振り向くと同時に、彼女の瞳に鏡を向けましょう。






STEP3 幻覚返し!

 鏡を向けて数秒経ったら、薄目で様子を確認してみましょう。

 ゲイザーが鏡を凝視し、ぐるぐると目を回し始めたら成功です。
 今回あなたが行ったのは幻覚の反転現象です。
 目で見たものに幻覚をかけてしまうゲイザー。あなたにかけようとした暗示を、鏡によって自分自身にかけてしまったのです。
 




 こうすることでしばらくの間は彼女は無力化されます。
 ただし、彼女にも幻覚に対する耐性が備わっていますので、催眠状態が続くのは10分かそこらといったところでしょうか。

 もう少し幻覚のかかる時間をのばしたい場合は、彼女の幻覚につきあってあげましょう。 
 夢の中で夢を自覚すると目が覚めてしまうように、幻覚を幻覚だと気づかせないようにすれば、長時間催眠状態に陥れる事も可能です。

「あ〜、どこいってたんだよぅ。僕もう喉がカラッカラなんだから、はやくチューさせろよなぁ」

 今回、彼女がかけた暗示は「あなたと幼なじみ」と「接吻による水分補給」なので、お互いの隅から隅まで知り尽くした腐れ縁カップルの如く、舌をからめるようなキスで唾液を交換し
[3]次へ
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33