「おい、いつまで寝てやがんだ!」
思い切り身体を揺さぶられ、強引に目覚めさせられる。
「んっ……」
どれくらい寝てたんだろう。
瞼を擦、ろうとおもったら手を縛られ、椅子にくくりつけられていた。
頭をふり、意識をはっきりさせて周囲を確認する。
倉庫の様なだだっ広い場所。時間はまだ夜、中にいるのは僕を起こした男も含めて10人前後。
全員揃いもそろって柄が悪い風貌だ。
借金取りの風貌によく似ている。
僕の長年の勘が正しければ借金取りで間違いない。
「あの、今月分の借金の返済は済みましたよね……?出来れば帰して欲しいのですけれど……」
なるべく刺激しないようにへりくだって頼み込むと、男達はげらげらと笑い出す。
「残念でしたぁ!俺たちはその借金取り達とは違うんだよ!」
「はぁ……?でも僕、お金なんて借りたこと……」
困惑する僕の目の前に、一枚の用紙が掲げられた。
「なっ……」
それは借用書だった。
内容は
僕の両親が金を貸し付けたこと、払えなかった時の代理人として僕を立てたこと。借金が僕が返した額の何倍もあること。
貸し付けた日付が、つい数日前なこと。
「お前の両親、俺達に金を貸した途端雲隠れしちまって消息がつかめねえんだよ。だからお前に返してもらうことにした。助かったぜ、有名アイドルであるお前を探すのは楽だったからよぉ!」
言葉が出なかった。
たしかに消息は不明だったけれど、父と母が生きていたなんて、考えもしなかった。
だってそうだろ。生きていたら、少しくらい子供の顔がみたくなるのが親ってものじゃないのか。
それなのに、顔も見せず、手紙すら送らず、ただ増やした借金だけを押し付けてくるなんて。
そんなの、あんまりだ。
「借金は普通なら返せる額じゃあねえが、安心しろ。あるつての地下施設が人手を募集しててな。そこでほんの30年ほど働けば余裕で返済出来る」
30年……。途方もない年数を聞かされて、僕の頭の中に色々な感情がよぎっていく。
なんで僕がこんな目に遭わなくちゃいけないのだろう。
一時は、どんな状況でも人は幸せになれる、なんて甘い事を考えていた。
だけど、それは違った。
人は生まれ持ったしがらみからはどうやったって逃げることは出来ないんだ。
「さ、それじゃあ取引先がくるまでここで大人しくして……」
「やなこった」
思わず、口からこぼれた言葉。
僕の心からの素直な気持ち。
男たちはポカンと僕の事を見ている。
「そんな振り回される人生、こっちから願い下げだ。それじゃあ、さようなら」
僕がなにをしようとしているのか気が付いた男たちが、慌てて僕を押さえ込む。だが一歩遅い。
止められる前に、舌をかみ切って死んでやる。借金は両親捜して頑張って返してもらえ。ざまぁみろ。
ああ、舌噛むのって結構痛いんだな。ニュースで【アイドル、突然の自殺】とか取り上げられちゃうのかな。
こんな状況になって初めて、人生の思い残すことが山ほどあることに気づいちゃう。
だけど、もうダメだ。来世に期待しよう。
出来ることなら、またアイドルやって、デルシアさんみたいな人と……。
「ほんっと、人間は愚かしいわ。寿命も大して長くないのに、どうして自分から死のうとするのかしら」
凛としつつも優しい声がした。
目を開けると、僕の前にはデルシアさんがいて、僕の口に手を当てて何かを呟いていた。
「ほら、傷はふさいだわ。もうこんな事しちゃダメよ」
本当だ。口の中が血の味でいっぱいだが、傷は綺麗になくなっていた。
「デルシアさん、どうしてここに……」
「あなたの来るのが遅いから探してたに決まったるでしょ?あなたに刻んだ紋章がある限り、どこにいても位置は把握出来るわ」
「そうだったんですか」
しかし落ち着いてはいられない。いつの間にか、男たちは僕らを囲むように陣をくんでいた。逃がしてくれる様子は無い。
「大事な商売道具を救ってくれて助かったぜ。そら、魔物娘さんは早いとこ帰ってくんな」
「商売道具?彼は私の契約者よ。何かの間違いじゃないかしら。一度、調べなおして見ることをおすすめするわ」
バァン!
乾いた音がなり、辺りを静まり帰らせる。
男達が持っているのは拳銃だ。
「二度も同じ事は言わないぜ。失せろ魔物」
「やっぱり人間は愚かな生き物ね。そんな玩具で私をどうにか出来ると思っているなんて……いいわ、試しに何発でも撃ってみなさい。魔物娘に牙をむいたこと、後悔させてあげる」
コウモリの様な巨大な翼を広げ、周囲に闇色のオーラをまとうデルシアさん。
決して脅しで言っているのではない。彼女はこの集団を蹴散らすだけの力を本当に持っ
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