4話 飲み水を汲みに行きました

「綺麗な水のあるところ、ですかぁ?」

「そう、何処か近くにないかな?」

アマタ達はイビィーの所へ訪れ、水源の場所を聞きに来ていた。水が必要不可欠な植物ならば、水のある場所も詳しいのではないか、というユキオの提案があったからだった。
水はサバイバルにおいて最も重要な物だ。
極端な話だが、水さえあれば数日は生きながらえる。

「それなら、ここからしばらく歩くと泉がありますぅ」

「本当か!ありがとうイビィー!」

「いえいえ〜。あ、それとぉこれも持って行ってください〜」

イビィーが触手を使って、たくさんの果物を持ってきた。

「うわぁ、すっごいおいしそう……」

男一同が涎を垂らして見つめるが、クッキーは低く唸ってイビィーを睨む。

「ひい!だ、大丈夫です!媚薬効果のある果物は除きましたからぁ!探すの大変だったんですよぉ」

「媚薬効果って……」

アマタとユキオはため息を付く。自生している食物はむやみに食べない方が良さそうだと悟った。

「これも食べれるのか?」

ハルヒコが果物の一つを手に取る。ひょうたんと椰子の実を足して二で割ったような見た目だ。

「それは食べられません〜。水筒の変わりに使ってください〜」

よく見ると先端部分には線のような物がついている。引き抜くと中身が空洞な事が分かった。

「何から何まで、本当にありがとう」

アマタ達は深く感謝した。イビィーが友好的な魔物であったのは彼らにとって幸運だった。

「だからいいんですってばぁ〜。そ・れ・よ・り〜」

イビィーがハルヒコに近づき、そっと耳打ちした。

「また、私の中に精液を注いでくださいね
hearts;」

ハルヒコは快諾した。





嬉しい荷物が増えたため、アマタとクッキーは拠点に持って帰り、水汲みはハルヒコとユキオが行くことになった。
イビィーに見送られ、二人は歩いていった。
泉までの道のりは獣道のようになっていて、とても楽に歩くことが出来た。


二人は泉までたどり着いた。こんこんと湧き出る水が、静かに輝いていた。ハルヒコが泉に近づいて、一すくい口に運ぶ。

「うまい!」

飲用できる水で良かったと二人は安心し、水筒に水を組み始めた。

その時。

シャキン、シャキンと大きなハサミを鳴らしたような音が響く。
二人は視線を上げて、周囲を探る。

「お兄ちゃん、あれ!」

ユキオが指さした方向、二人のいる場所から泉をはさんだ向こう側に、一人と一匹。凛とした少女が、巨大な沢蟹に跨がっていた。
しかし、二人はすぐに気付いた。彼女は一対にして一人、下半身のカニを持った魔物娘『キャンサー』だということを。
彼女は蟹の鋏を動かし、シャキンと音を立てる。先程聞いた音の正体は威嚇行動だったのだ。

二人が視線を注ぐなが、キャンサーがより一層強く鋏を鳴らす。その無表情からは読みとれないが
、おそらく初めて見た人間のオスに対して、かなり緊張しているはずだ。

このままでは、二人はただではすまないだろう。

「ユキオ、お前はこのまま水汲みをして、すぐにテントに帰るんだ」

キャンサーを驚かせないよう、ハルヒコがそっとユキオに話す。

「あのカニ美少女は俺が食い止める……!」

「そんな、危ないよ!」

思わず声を上げたユキオ。キャンサーも警戒を解かず、じっと二人を見つめる。

「大丈夫だ。俺は皆のリーダーだぜ?そう簡単にやられはしないさ。必ず皆の元に戻ってくる」

ハルヒコは雲行きが怪しくなるような台詞をはきつつ、ユキオをキャンサーから遠ざけるようにした。

「じゃあ、よろしく頼むぜ」

ハルヒコは、カニ娘にゆっくりと近づいた。


キャンサーは依然警戒を解かず、ハルヒコに向かって鋏を構える。

「そう怒らないでくれよ、俺は敵じゃないぜ」

自分は無力であると証明するため、ハルヒコは上着を脱いでみせた。さらに靴とズボンを脱ぎ、ジャポジャポと泉の中へ歩き出す。水位はハルヒコの膝下ほどしかなかった。

気が付けば、パンツ一丁のハルヒコがキャンサーの目の前に仁王立ちしていた。

「俺、ハルヒコってんだ。君の名前はなんて言うの?」

「……シオネ」

ボソリとキャンサー、シオネは言った。

「シオネか、いい名前だな。話は変わるけど、俺たちここの水が欲しいだけなんだ。終わったらすぐ行くから、ちょっと待っててくれないかな?」

と、ハルヒコは紳士的に交渉するが、そんな彼に目もくれず、シオネはハルヒコの股間を凝視していた。

「どうかした?俺のパンツが気になる?」

「……からだ、洗ってない?」

そういわれて、ハルヒコは自分の匂いをかぐ。
たしかに、この島に来てからハルヒコ達は風呂に入ったりしていない。全身汗っぽくて少し気持ち悪いと薄々思っていた所だ。

「洗って……あげよう
[3]次へ
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33