1話

昔々のあるところ、地平線の向こうまでぬかるんだ地面が続く湿地帯がありました。
清らかな水が流れている訳でもなく、緑や果物が生い茂っている訳でもなく、水位の低い沼地のような場所です。
一部の動植物はともかく、人が住むのにこれ以上不便な場所はありません。
そして、その湿地帯のどこかは恐ろしい魔物娘の住処になっている、という曰く付き。
そんな、誰もが近寄ろうとしない辺鄙な場所に、一人の少年が、鼻歌まじりに歩いてきました。

「♪〜〜♪♪〜〜」

そのアップテンポなメロディから、少年はとてもご機嫌だとわかります。
たとえるならお使いを任された幼子でしょうか。
しかし、彼はただの少年ではありません。
彼はとある王家の血筋、由緒正しき国王の息子なのです。
名はシクナと言います。

次男坊ですので、ろくなことがない限り王様にはなれないでしょうが、それでも将来は輝かしい未来が約束されています。
そんな誰もが羨むようなシクナ王子が、なぜこんなところにやってきたのか。
時間は少しだけさかのぼります。

シクナが日課の昼寝に勤しんでいたところ、偶然にも彼の父上と兄上、つまり国王と第一王子の会話を耳にしたのです。

それは、シクナの国よりもずっと大きな国のお姫様が、半月ほど前に盗賊にさらわれたと言うものでした。
国を挙げて探しているものの、未だに姫の行方はしれず、近隣諸国にも助けを求めているのだそうです。国王はとても悩んでいました。
宛のない人探しなど、まさしく無理難題ですが、相手は大国。体裁は整えなければなりません。

「ううむ、どうしたものか。頼みを断るわけにはいかぬが、誰に探しに行かせたものか・・・・・・」

王様は大層悩んだ様子で、大きなため息をつきました。

「父上、やはり私が行きましょう」

そういう第一王子もまた、嫌々といった風です。

「しかしだな・・・・・・」

二人がうんうん悩んでいる最中、シクナは彼らの元に飛び込んでこう言いました。

「僕がいきましょう!」

シクナは自ら王女の探索を志願しました。彼は特別正義感が強いわけではありません。
ただ、シクナは彼らに認めてほしかった。自分が一人前の男であることをどうにか証明したかったのです。

話はとんとん拍子にすすみ、次の日には、シクナは身支度を整え、護衛も連れずに王女を捜しに行きました。
単身で旅立った理由は、その方が後の武勇伝に箔がつくから、という彼の思いつきでした。彼は生まれついて頭が少し不自由だったのです。平たく言えば、バカだったのです。

時間は現在に戻り、彼は湿地帯をのんきに歩いています。
後ろから一つの不穏な陰が忍び寄っているとも知らずに。

だんだんと日が傾きはじめ、シクナの顔にも疲れが見え始めた頃。
突然、シクナは自分の脚が上がらなくなったように感じました。
泥濘の水草にでも引っかかったと思い地面に視線をやると、沼の底から人の腕のようなものが飛び出しシクナの両脚をがっしりと掴んでいたのです。

「うわああああああああっ!!」

シクナは絶叫しました。次の瞬間、彼は謎の腕に引っ張られ、沼の中へ沈んでしまいました。
必死にもがいて逃げようとしましたが、そのうちに酸素を使い果たし、シクナは意識を失いました。



ピチャン、ピチョン。
滴る水音でシクナは目を覚ましました。
彼は仰向けの状態で、なぜか全裸になっていました。
瞼を開けても周囲は光源がなくてよく見えません。空気はあるし、手で地面の存在を感じ取ったので、ここが沼の中ではないと彼は思いました。

チュポン、チュパン。
シクナは自分の下半身にむず痒さを感じました。
脚のあたりは痺れるような感覚があり、水音が鳴る度に彼の股間には今まで感じたことのない快感が走ってきます。
起きあがりたいのですが、疲れているせいか指一本動かせません。
シクナは首を持ち上げ、闇に向かって目を凝らしました。
だんだんと目が慣れてくると、シクナは自分の下半身に乗っかる何かに気づきました。

ヌメヌメの粘液に覆われた緑色の肌。しなやかで筋肉質な両脚。獣の瞳。長い舌。
彼の上にいたのはミューカストード。沼に現れる恐ろしい魔物でした。

「うわああああああああっ!!」

ここが魔物娘の巣だと気づいたシクナは、またまた叫びました。
必死に体を動かしましたが、吸盤のついた両手でしっかりと固定されており全く身動きがとれない状態です。

「ありゃ、起きちゃった?ごめんね〜、じっとしてれば痛くはしないから〜」

ミューカストードは口から垂らす蛇のような舌をシクナのペニスに這わせると、それをゆっくりと飲み込んでしまいました。

「はううっ」

あまりの気持ちよさにシクナは喘ぎました。彼女が頭を動かす度、ペニスに這いずり回るような快感が与えられ、シクナの頭を痺れさ
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