太陽が俺に熱戦を浴びせ続けている。愛用のテンガロンハットが無ければ今頃はたってもいられなかっただろう。
俺と向かい合う一人の女。
こんな灼熱の砂原のど真ん中、彼女は露出の高い、この場所とはあまりに不釣り合いな格好をしていた。そして、帽子もかぶらない頭の上でヒクヒクと動く耳。彼女は、スフィンクス。冒険者たちを試す者。
「ニャフフ。お前はテトスが誰なのか知ってるかにゃ〜?」
「ああ、よくご存じだ。これから何をするのかもな」
スフィンクス。ファラオの墓に向かう冒険者の前に立ちふさがり、“問い掛け”の呪いを浴びせる魔物娘。テトス、というのはおそらくこいつの固有名だろう。
「ニャハ!察しがよくて助かるにゃあ!じゃあ早速問題にゃ!」
「待った!」
スフィンクスの目の前に手をピシッとかざし、待ったのポーズ。
「なんにゃ?なにか質問かにゃ?」
「お前、いつもクイズを出す仕事に飽き飽きしてないか?」
「……どういうことにゃ?」
「俺が問題を出す!それにお前が答えられたら俺を好きにするといい。答えられなきゃ通さしてもらうがな」
「ふっふ〜ん。にゃるほど、テトスをクイズで負かそうってんだにゃ?面白い、やってみるにゃ!」
よし、思った通り、誘いに乗ってきた。彼女らは高い知能を持つという。そいつらに敢えて問題を問い掛ける俺は、余程の身の程知らずか何かだとテトスは思っているに違いない。だが、この問題はかなり自信がある。早々解けはしないだろう。
しかし、それだけではなく、これにはある画策があった。
「問題だ」
帽子を深くかぶりなおす。
「俺は見ての通り冒険家をやっている。ここに来る前、俺はある大陸を縦断していたんだが、そこで大きな河にぶち当たった。川幅1000メートル、水深5メートルはあろうとんでもない大河だ。周りには船を作る為の材木は無かった。しかし、俺達のキャラバンは無事に向こう岸までわたる事が出来た。さて、どうやったと思う?」
「にゃ〜?人魚にでも手伝ってもらったんじゃないかにゃ?」
「いや、キャラバンは人間の男だけで、魔物はいなかった。魔物娘の力は使ってない」
「じゃあ、自力で泳いだにゃ」
「説明に合った通り、とても長く、とても深くい河だった。ある程度の犠牲を覚悟すれば出来なくもないが、全員無事となると無理だろうな」
「じゃ、じゃあボートにゃ!あらかじめ折り畳みボートか何かを持っていたにゃ!」
「残念。俺達はそんなもの持っていなかった。それを使わなくても渡りきったのさ」
「にゃにゃにゃにゃにゃにゃ〜」
だんだん顔色が悪くなってきたテトスは頭を抱え始めた。しかし、それがだんだんと悪い笑みに変わっていく。
「ニャフフフフフ。降参にゃ。男よ、よくも私が答えられない問題を出せたにゃ。褒めてやるにゃ」
「心痛み入るぜ」
「そうやっていられるのも今のうちにゃ!問題を答えられなかったテトスがどうにゃるか、お前は知ってるんじゃないかにゃ?」
「いんや、分からないな。どうなるんだ?」
「見せてやるにゃ。問題を答えられないと……」
舌なめずりをして、ショーツに手をかけるテトス。
「ニャッフフフフフフ〜………………あれ?」
「どうした?」
「……エッチな気分にならないにゃ」
切り取って聞くと倦怠期に入ったカップルが言いそうなセリフだが、言いたいことは分かる。
スフィンクスの問い掛けに答えられなかったものには呪いがかかり、問い掛けた相手に対し魅了される。つまりこの場合、俺の問い掛けに答えられなかったスフィンクスに呪いがかかるはずなのに、全くその兆候が表れないことを不思議に思っているのだろう。
頭の上で?のマークをプカプカ浮かせている間抜けなスフィンクスがちょっと不憫に思えてきたので、種明かしをすることにした。
「お前の“問い掛け”の呪いは」
一呼吸おいて。
「お前が問題を出さなきゃ発動しないんだろう?」
「あ……」
ようやく自分の失敗に気付いたテトス。
「にゃーーーーーー!!!」
「さあ、案内してもらうぞ」
靴ひもを結び直す。リュックもしっかりしょい直し、遺跡へ一歩踏み出す。いざ、目指すは財宝眠るファラオの墓場。
俺達は迷宮の中を進んでいた。テトスと自称するスフィンクスは松明をもって先導してくれている。
「え〜っと、お兄さん名前なんて言ったかにゃ?」
「ヨコーネル。若き冒険者ヨコーネルとは俺の事だ」
「初耳だにゃ」
「そりゃ、年中砂漠にいたら知らないだろうなぁ」
本当の所は、自分がまだ駆け出しという所も大きいのだろうけれど、それを自分で言っては格好がつかないので伏せておく。
「ヨコーネルは一人で来たのかにゃん?」
「いや、30人くらいで来たんだよ」
「にゃらどうして一人ボッチにゃ?」
「話すと長いんだけどさ……」
港街で、砂漠に眠る王妃と秘宝の噂を嗅ぎつけた俺は、財宝
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4 5]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録