「ここが砂漠か...」
砂漠を進む20人程の騎士達、その先頭にいる勇者は顔をしかめながら呟いた、砂塵が舞い太陽が照り付ける地獄の地と呼ぶにふさわしい、とても生物がいることが信じられない所だ。
「馬がなかったら今頃死んでいましたね」
騎士の1人が話しかける。
「こんなに暑いのは初めての経験だ、次は砂漠に住んでいる人達でお願いしたい」
「仕方ありません、勇者がいないとのことでしたので」
勇者達を運んでいるのは馬だ、しかし馬に乗っているだけでも暑くてつらい。
「遺跡には小さなオアシスがあると聞いています、水を求めて魔物が集まったのでしょう」
遺跡にたむろする魔物に地元集落の領主の息子がさらわれたらしい、彼を取り戻し魔物も討伐する、それが勇者に課せられた任務だ。
「あともう少しで着くはずです、頑張りましょう」
「分かった」
暫く進むと蜃気楼の向こうにぼんやりと建物が見えてきた。
「あそこか!」
希望が見え馬を急がせて建物に近づくと、何かがいるのが分かる。
「マミーだ!」
騎士の1人が叫んだ、遺跡のそばにマミーが2体ほどうろついているのが見える。
「剣を抜け、戦闘準備」
勇者は騎士達に指示を出し馬を疾走させる、しかしマミーは遺跡の扉を開けると中に入り、扉を閉めてしまった。
「くそっ、逃げられた」
勇者は扉を叩いた後開けようとしたがなにをやっても開かない、どうやら鍵をかけたようだ。
「勇者様、追うのは一旦止めましょう、皆クタクタです」
勇者は少し落ち着いて周りを見渡す、少し離れたところにオアシスが見えた。
「水を補給しよう、あと周辺に魔物が潜んでいないか調査も、魔法騎士はこっちに来てくれ、扉に鍵を掛けられた爆破準備をしてくれ」
勇者は騎士たちに指示を出すと水筒の飲み干す、暑さで頭が回らない。
「休んでください勇者様、あそこなら建物の日陰に入りますよ、まだ13になったばかりでしょう、雑用は体力がある俺らに任せてください」
騎士の一人が日陰に勇者を連れて行く、優しくされて悔しかったが休まなければならないのは事実だった。
「水汲んできましたよ、飲んでください」
水汲みに出た騎士たちが戻ってきた。
「ありがとう」
勇者は礼を言い水を飲む。
「勇者様、オアシスと遺跡の周辺に魔物はいません、遺跡の中で待ち伏せているものと思われます」
調査に出した騎士も帰ってきた。
「罠がある可能性が極めて高いな、それでも行くしかない」
勇者は気を入れ直し覚悟を持とうとした。
調査と休息を終えたのち馬の面倒を見る数人を残し全員扉の前に集まった、扉を魔法で爆破し中を覗き込む、中は真っ暗で何も見えなかった。
「魔法で照らしながら進もう」
魔法で照らされた坂道を騎士たちは進んでいく、道は狭く2人並ぶのがやっとぐらいだ。
「だいぶ下まで続いているな」
「もともと邪教の神殿だったようで、集会を開く広い区間があるはずです、魔物はそこにいるでしょう」
「なら、マミー2体ではないだろうな」
勇者は一層緊張した。
少し進むと再度扉が見える扉を押すとゴゴゴゴゴゴゴゴと重い音と共に今度はあっさり開いた、中はかなり広い空間になっていて中央に祭壇らしきものが見えた。
「何もいないな」
マミー1体いない静まった不気味な空間が広がっている。
「勇者様、壁に何か所か穴が見えます」
魔法騎士が壁を光で照らすと這いつくばれば入れるぐらいの穴がいくつも開いている。
「3部隊に分かれよう魔法騎士は6人いるから、2人ずつに分かれてその隊に5人ついて行って壁を調べながら進んでくれ穴は特に念入りに、後は僕と一緒に中央を進んで祭壇を調査しよう、2人は入り口に残って後ろを見張ってくれ」
明かりを照らしながら慎重に進んでいく、壁際の隊の様子を見ると穴を照らして様子を見ている、しかし何も見えない様だった、広場の半分まで進みあともう少しで祭壇に近づく、何も起こらないのがあまりにも不気味だった緊張が高まるばかりだ。
「おい1人いないぞ」
突然右側から声が聞こえてきた、その部隊を見ると7人いるはずが6人になっている。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
同時に扉が閉まる音がした。
「なっ扉が、なぜだ」
見張りをしている2人は慌てている、彼らが閉めているわけではない、瞬時に嵌められたと理解した。
「くそっ罠か、全員扉まで走れ!」
「うわあああああ、ラミアだ」
走り出した瞬間穴という穴から一斉にラミアが出てきて、壁際を進んでいた部隊をあっという間に包囲した。
「勇者様上からラミアが!!」
上を見上げると天井にも穴が開いていた完全に盲点だった、勇者たち自身も包囲されてしまう。
「突破しろ!」
勇者は騎士に発破をかけ自分も剣を抜く
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