何度目かの再戦の後やがてエバの魔力が失効する。
「夕暮れ時の教室」の風景が歪んで捻れ、そこから霧となって立ち消える。そして周囲の光景が「いつもの部屋」のそれへと変わり、二人が着ていた制服も泡のように消える。
夢が覚め、現実に戻る。
「はい。これはここで終わり」
ベッドの上で対面座位で繋がったまま、全裸のエバが爽やかな声で宣言する。プレイの終わりを告げるその言葉を受け、彼女と向き合っていた男が素直に首を縦に振る。
男も全裸だった。しかし二人は恥じらうことなく、裸のまま平然と話を進めた。
「攻めに回るって言うのも、中々刺激的で面白いね」
両手を相手の首筋に回し、エバが笑顔で男に言う。男もまた頷き、攻められる側も悪くないと返した。
そこにエバが反応する。穏やかな表情で、アルプが言葉を付け加える。
「でも、僕以外の女の人を攻めても楽しくない。でしょ?」
もちろんだ。エバの問いに男が即答する。潔い返事を貰ったエバは小さく笑い、そのまま「僕もだよ」と言って言葉を続けた。
「僕も相手が君だから、意地悪してて楽しいって思えたんだ。他の男の人をいじめたって、楽しくもなんともないよ」
エバの本心からの言葉。男もそれは同じだった。
相手が彼だったから。相手が彼女だったから。二人は心行くまでプレイに没頭出来たのだ。
「君も僕と同じこと考えてるよね?」
弾む声でエバが問う。当然だ。男はきっぱりそう答えた。
「やっぱり! そうだと思ったんだ!」
それを聞いたエバは顔を喜悦で輝かせた。そして朝日の如き満面の笑みを見せ、そのまま男に抱きついた。
「えへへ、僕と君で、気持ちが通じあってるんだねっ」
愛する人と同じ気持ちを共有出来ている。それを確認できて、エバは今至上の喜びを感じていた。
男もまた同様だった。そして彼は自分の嬉しさをもっと伝えようと、エバの背中に回した両腕に力を込め、彼女の細い体を一層強く抱きしめた。
二人の体が密着する。たわわに実ったエバの乳房が男の胸板に触れ、そのままむにゅっと押し潰される。桜色の乳首が押し込まれ、「キャッ」とエバが可愛らしい悲鳴を上げる。
「あ――」
直後、エバが声を飲み込み黙り込む。潰れた胸越しに、男の心音が聞こえてきたからだ。
鼓動を通して、彼が今自分の傍にいると実感する。そんな当たり前なことを今更のように思い出し、それでもエバは安らぎを感じた。
「……良かった」
男に身を預けながらエバが呟く。何が? 男が問いかける。
目を閉じ、穏やかな表情でエバが応える。
「君と一緒にいるんだなって実感できて」
そうか。男が短く相槌を打つ。エバも静かに笑って「幸せだよ」と続ける。
男も同じく幸せだった。エバが自分と一緒にいることで安らぎを感じている。それが嬉しかった。
エバがそうであるように、エバの幸せが男の幸せであった。
「ねえ、次も僕が注文していいかな?」
だから男は、エバのその問いも素直に承諾した。今はただ、エバの幸せを優先したいと思っていた。
男がエバのお願いを聞き入れてから数分後、二人は浴室にいた。
そこは彼らが普段から使っている浴室だった。魔術による外装の変質は行われず、いつもの見慣れた風景の中に、二人して身を置いていた。当然ながら件の二人も生まれたままの姿であり、魔術を使った変装は成されていなかった。
今回のエバのリクエストは、服装や背景の変化を伴わずに行われうるものであった。
「えへへ……それじゃあ兄さん、今から背中流しますね」
いつもの浴室に座り込んだ男の背後に腰を下ろし、エバが彼に声をかける。慣れない呼び方をしたためか、エバの顔は緊張と恥じらいで真っ赤に染まっていた。
血の繋がった兄妹という設定でイチャイチャしたい。それがエバのリクエストだった。妹になって兄を甘やかしたい。彼女はそう言ってきたのだ。なおそれを浴室で行っているのは、この辺りで汗を流してさっぱりしようという魂胆から来ていた。これもエバの提案だった。
無論男は、そんなエバの注文を全肯定した。しかしその一方で、血の繋がり云々は必要なのかと疑問に思ったりもした。それに対しエバは「繋がりは絶対必要だ」と、これ以上ないくらい強い語調で反論した。
「いるの! 兄妹でいけないことをする上で、血の繋がりの有無はとっても大事なの!」
その辺りの違いを、男は上手く咀嚼出来なかった。しかし男は、だからと言ってそれを拒絶することはしなかった。可愛いエバの頼みだ、無碍にするなんて以ての外である。
閑話休題。そうしてすっかり実妹になりきったエバが、続けて男に言い放つ。
「動かないでく
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